電子デバイス基礎試験問題
1995.3.7
1. 以下の用語を簡単に説明せよ.
 1) pn積一定
 2) 内部電位(built-in voltage)
 3) 順序回路
 4) サイリスタ(SCR)

2. c-MOSインバータ(NOT)について,以下の問に答えよ.
 1) n-MOSとp-MOSトランジスタの特性を示せ.下記の解析で必要になる程度のものでよ
い.
 2) インバータはどんな回路で構成できるか.
 3) c-MOSインバータの入力-出力の伝達特性を図を使って求めよ.
 4) ディジタル回路には,なぜc-MOSがよく使われるか説明せよ.

3. バイポーラトランジスタを使った差動増幅器について以下の問に答えよ.
 1) npnバイポーラトランジスタの特性を示せ.下記の解析で必要になる程度のもので
よい.
 2) 差動増幅器はどんな回路で構成できるか.必要に応じ定電流回路を使ってよい.
 3) 二つの入力に対し,二つの出力はそれぞれどのような形で与えられるか,解析せ
よ.
 4) アナログ回路には,なぜバイポーラトランジスタがよく使われるか説明せよ.

[解答]
1. (各5点)
  1) 質量作用の法則により,電子数と正孔数の積が場所によらず一定になること.
  2) pn接合面で,電子や正孔が濃度の低い相手側の領域に拡散することにより発生する
電圧.外部端子電圧0でも(kT/e)ln(NdNa/ni^2)の内部電圧が発生する.
  3) 出力が入力だけではなく内部状態にも依存する回路.内部状態も過去の入力と内部
状態で決定される.
  4) pnpn構造の両端の電極間を流れる電流を間のnあるいはpに接続されたゲートで制御
するデバイス.pnp構造とnpn構造がトランジスタとして働き,互いに正帰還をかけあう
ため,ゲートにより片方をONにすると,大電流が流れる.OFFにするにはゲート電圧を下
げるとともに両端の電極間電圧を下げなければならない.電力系の制御に使われる.

2. (各10点)
  1) 種々のVgに対し,Id-Vd曲線を示すこと.二次曲線でも折れ線近似でも良い.
  2) 上にp-MOS,下にn-MOSのトーテムポール型回路が描ければよい.
  3) 1)のn-MOSの特性とp-MOSの特性をVddから逆転したものとを同一のグラフ状に重ね
て書き,Vgを変えたときの交点の移動の様子を調べる.その結果をVd-Vgの関係として表
せば,伝達特性が得られる.
  4) 入力が0 or 1に確定している時の消費電力がなく,電力消費が少ない.また,デバ
イスの平面構造が簡単で集積度が高い.

3. (各10点)
  1) Ic=Ico exp(eVb/kT)を示せばよい.むろん,Vbをパラメータとして,Ic-Vc特性を
示しても良い.
  2) 二つのnpnトランジスタのエミッタを共通にし,そこからVeeに定電流源を接続す
る.各コレクタには抵抗又は定電流源を負荷とする.
  3) Ic1=Io exp(e(Vb1-Ve)/kT)とIc2=Io exp(e(Vb2-Ve)/kT)をIc1+Ic2=Ie(=const)に代
入すると,Veが求められる.これを再代入してIc1とIc2が得られる.出力はVcc-R Ic1な
どで与えられるから,結局,
    Vcc-R Io f(e(Vb1-Vb2)/kT) 
となる.ただし,
    f(x)=(exp(x)-1)/(exp(x)+1)
である.つまり,入力の差だけで決定される.
  4) 閾値が0.6-0.7V程度の安定な値であるため,直流増幅に適している.また,コンダ
クタンスが高く,駆動能力が高いため,高速である.

[講評]
 昨年よりは不可の人数が減りました.どちらかというと,3年生の再試の結果が悪
い.再試を受ける人は2度目なので,きちんと勉強してきてから受けるようにしてくだ
さい.

        2年  再試
 優(70点以上) 49名  7名
  良(50点以上) 34名 11名
 可(30点以上) 21名  8名
  不可           7名  4名

答案は学科事務室から戻ると思いますのでよろしく.