95年度冬学期試験問題と解答と講評

[問題]
電子デバイス基礎試験問題
1996.3.5
MOS FETに関し,以下の問に答えよ.必要に応じ,kT/e=25mV,ln10=2.3を利用せよ.
(各10点)

 1) n-MOS FETの断面構造を示し,各部の名称や材料について述べよ.
 2) 基板付近のキャリヤ濃度を調べたところ,p=10^14,n=10^6であった.
ソース領域の不純物濃度が10^16であるとき,そこでのpとnを求めよ.
 3) ソース領域と基板の間に生じる平衡時の内部電位(built-in voltage)を求めよ.
 4) nやpのキャリヤに電界をかけると,どのような運動をするか,
バンド構造との関連から説明せよ.
 5) n-MOS FETのIdはどのような式で与えられるか.理由をつけて示せ.
できれば,素子形状との関係を示せ.
 6) あるn-MOS FETの特性を調べたところ,Vth=0.2V,またVgs=1.2Vの時のId-Vds
特性は,Vdsが0.5Vで最大値1mAに達した.Vgs=0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0Vの
ときの各特性をグラフで示せ.
 7) これと対称的な特性を持つp-MOS FETと組み合わせ,c-MOSインバータ(NOT)を
構成した.回路構成を示し,Vdd=1Vのときの入力-出力の伝達特性を図を使って求めよ.
 8) 2入力NANDの構成を示せ.またこれを使って,XOR(01または10の入力パターンに
対してのみ1を出力する回路)を冗長構成で実現せよ.
 9) n-MOS FET 2個を組み合わせた差動増幅器の回路構成を示せ.FETを常に飽和領域
(Id一定領域)で使うことを前提とし,定電流源を0.5mAとしたときに,二つのFETの
Vgsの間に成立する関係を,特性の図から求めよ.また両FETがバランスするための
Vgsを求めよ.続いて,左のゲートに1V,右に1.01Vを与えたとき,左右のFETに流れる
電流を求めよ.この結果から差動増幅器の原理を説明せよ.
 10) 減衰単振動の運動を記述する回路を,演算増幅器を用いて構成せよ.

[解答]

  1) 図略。ソース、ドレイン、チャネル、基板。上から金属(またはpoly-Si)、
絶縁物(または酸化物、SiO2)、p-Si、両側の電極直下はn-Si。
  2) pn積=10^14 * 10^6=10^20。ソース領域はn型であるから、n=10^16、その結果
p=10^4.
  3) 内部電圧は(kT/e)ln(Nd Na/ni^2)=0.025*ln(10^14*10^16/10^20)
=0.025*10*2.3=0.575V
  4) 伝導体の下部にいる電子は電界を受けると通常の電子として加速されるが、
価電子帯の上部にいる電子は運動量とエネルギーの関係が逆になっており、
逆方向に加速される。したがって、あたかも正の電荷のように振舞う。その
空隙である空孔も正電荷のように運動する。
  5) Id=G (Vgs-Vth-Vds/2)Vds. ただし、G=?
  6) まず、Vgs=1.2Vの線を描くと、原点を通り、(1, 1)を頂点とする放物線の
左半分と、その頂点から右へ水平線を引いた特性が得られる。(1, 1)で最大となる。
これより、G=2である。((0.5, 1)で最大になるとしたのは、私の誤り)
他のVgsに対する特性は、同様に原点を通り、(Vgs-Vth, (Vgs-Vth)^2)を頂点とする
放物線の左半分と同点から右方向への水平線。
  7) 図略。Vin=0.2Vまでは出力1V, それから出力は落ち始め、Vin=0.5Vで急減する。
Vin=0.5VとVout=0.5Vを中心とした点対象の図形が得られる。Vin=0.8V以上で、出力は
完全に0.
  8) 下にn-MOSの直列回路、上にp-MOSの並列回路を描き、中点から出力を出す。
XORはNAND-NAND構成とし、次の1で表される交点を接続する。
0101|0
0110|1
1001|1
1010|0
  9) 10)の回答はあとからのせる。

[講評]
まだ書けない.

丸暗記にたよっている人は直ちに習慣をなおしてください.
社会へ出ても,大学院へ進学しても,本質を理解せず暗記にたよって仕事をすると
大変なことになります.
普段から,ものごとを簡単な原理から演繹する習慣を養ってください.

講義が難しいとか,理解が不足だったとか,面白くなったとか思われた人は,
是非 electron-device の news group で議論してください.
君の為だけでなく,後輩の為にもなりますよ.シケ対よりも効果大かな...

いくつになっても,試験は受ける方はいうまでもなく,する方も厭なものです.
どうせ厭なものなら,存分に利用使用ではありませんか.