98年度冬学期試験問題と解答

[問題]
電子デバイス基礎試験問題
  1999/3/8 岡部 洋一
1. pn 接合について次の各問に答えよ。(各10点)
  (a) ドナー濃度 Nd の不純物半導体中の p と n を導出せよ。
      Nd は ni に比べ、十分大きいとしてよい。
  (b) pn 接合の典型的な応用を二つあげよ。
2. c-MOS について次の各問に答えよ。(各10点)
  (a) p-MOS FET の構造を示し、四つの電極に典型的にはどのような電圧を
      かけるのか、特に各部に現われる pn 接合との関連で説明せよ。
  (b) p-MOS FET の静特性を導出せよ。特性は三つの領域に分類されるが、
      各領域の特性の名称と成立条件、簡単な動作原理を書くこと。
  (c) p-MOS FET のドレインソース間に逆バイアスをかけたときの特性を示
      せ。導出は省略してよいが、前項との対応をとって説明せよ。
  (d) c-MOS inverter の入出力伝達特性と流れる電流を簡単に求め、説明と
      図示せよ。
  (e) Transfer switch の構成と動作を示し、特に、何故、このような構成
      が必要かを説明せよ。
3. 差動増幅器について次の各問に答えよ。(各10点)
  (a) 差動増幅器の構成を示せ。
  (b) 共通モード増幅率、差動モード増幅率について述べよ。
  (c) 演算増幅器を使って、利得 10 位の増幅器を構成してみよ。

[解答]
1.

(a) ドナー濃度が高いので、n=N_d が良い近似で成り立つ。pn=n_i^2 なので、
p=n_i^2/N_d。n-p=N_d と pn=n_i^2 から二次式を問いて厳密解を出したもの
も OK。

(b) 直流の整流作用の応用(交流-直流変換器、整流器など)と非線形キャパシ
タンスの応用(可変周波数共振器など)の両方があれば、満点

2.

(a) source、drain、gate、substrate の4電極のある構造。通常、ドレインに
はソースより低い電圧をかける。また、サブストレートにはソースと同じ電圧
か正電圧をかける。ゲートは、高くすれば OFF、低くすれば ON であるが、閾
値によってその適正電圧は動く (ソースとドレイン電圧の間の電圧をかけるこ
とが多い)。

(b) Vds<0 で考える。p チャネルは、第一次近似では、-(Vgs-Vth) に比例し
て発生する。しかし、ゲート電圧が高い場合には、Vgs の代わりに 
(Vgs+Vgd)/2=Vgs-Vds/2 を使うべきである。そこで、抵抗領域 (VgsVgs-Vth) では Id=-G(Vgs-Vth-Vds/2)Vds (-負x負で全体として負) とな
る。Vgs>Vth は遮断領域であり、Id=0 となる。また、Vgs0 である。遮断領域は Vgs-Vth>0 のところで発生し、Vds