電子基礎物理 試験問題 2003/12/03 岡部 洋一 [問題] 以下の各問に答えよ。(100点満点) 1. 量子力学の状態は粒子性と波動性を併せ持つと言われているが、これはどう いう意味か、200字以内で定性的に説明せよ。この両者を結び付ける式につい ても言及せよ。(15点) [解答] どんな量子も数えることができ(粒子性)、かつその発見確率のもとには、 干渉性を有する加算的な確率振幅なる概念を有していること。また、粒子と して性質であるエネルギーと運動量が、波動としての性質である振動数と波 数と Einstein, De-Broglie の関係で結びつけられる (式は略す)。 2. 偏光について、以下の問に答えよ。{|x>, |y>} を基底状態として答えよ。 1) 45°偏光と 135°偏光の各成分を示せ。(10点) 2) {|45°>, |135°>} が別の基底状態を構成することを示せ。(10点) 3) 45°偏光板を装置とみなした場合、それに対応するオペレータ (45°)^ の各成分の値を示せ。(10点) 4) 勝手な光を 45°偏光板を通した結果は、どんな偏光になっているだろうか。 45°偏光になる確率と、135°偏光になる確率を計算することにより示せ。 (15点) 5) 45°偏光板オペレータの固有値問題を解き、その結果の物理的意味を説明せ よ。(20点) [解答] 1) a=1/√2 として 45°偏光は (a a)^T、135°偏光は (-a a)^T である。 2) {|x>, |y>} による分解合成を Σ... と書くと、 <45|135>=<45|Σ...|135>=<45|x>+<45|y>=-a^2+a^2=0。 <45|45>=<45|Σ...|45>=<45|x>+<45|y>=a^2+a^2=1。 同様に<135|135>=1。これらより正規直交性が成立する。 また、|45><45|+|135><135|=Σ...|45><45|Σ...+Σ...|135><135|Σ... =|x><45|+|135><135|)|x><45|+|135><135|)|y><45|+|135><135|)|x><45|+|135><135|)|y>(a^2+a^2)(a^2-a^2)(a^2-a^2)(a^2+a^2), |135>} で考えると ((1 0) (0 0)) である。 =<45|(45)^|45><45|x>+<45|(45)^|135><135|x> +<135|(45)^|45><45|x>+<45|(135)^|135><135|x> =a 1 a + 0 + 0 + 0=a^2=1/2 以下同様にして (45)^ の成分は ((1/2 1/2) (1/2 1/2))。 4) 勝手な状態を |ψ> として、45偏光板を抜けた後は、(45)^|ψ>。 これが 45°偏光である確率は <45|(45)^|ψ>=<45|(45)^|45><45|ψ> +<45|(45)^|135><135|ψ>=<45|ψ> の二乗となる。また、135°偏光である 確率は <135|(45)^|ψ>=<135|(45)^|45><45|ψ>+<135|(45)^|135><135|ψ> =0 の二乗となる。したがって、結果は 45°偏光であり、その確率は |<45|ψ>|^2 である。 5) ((1/2 1/2) (1/2 1/2)) の固有値問題を解くには、 |(1/2-λ 1/2) (1/2 1/2-λ)|=0 を解く。この解は λ=1 と 0 である。 λ=1 の固有状態は (a a)^T、つまり |45> である。また λ=0 の固有状態 は (-a a)^T、つまり |135> である。したがって、|45> に対しては全部通 過で、|135> に対しては、全く通さないことを意味している。 3. 一次元連続空間中に δ関数的な極めて深いポテンシャル-Vδ(x) がある。そ こに束縛されている電子の定常状態のエネルギーと波動関数を求めよ。まず、 x<0 で成立すべき波動関数の形を示せ。次に原点付近で、d^2ψ/dx^2 が満す べき式、さらに∫_{-∞}^x δ(x)dx が階段関数になることを利用して、 dψ /dx が満すべき式を求めよ。続いて、これらと矛盾なく接続する x>0 での関 数を求め、最後にこの関数が満すべき条件から、定常状態のエネルギーを求 めよ。(20 点) [解答] 定常状態のエネルギーを E とすると、シュレディンガー方程式は    Eψ=-(h\^2/2m)(d^2ψ/dx^2)-Vδ(x)ψとなる。これより、ψの二階微分には 原点にδ関数が入ってくる。これを積分したψの一階微分には原点に階段関 数的不連続が入ってくる。さらにこれを積分したψは原点で折れ曲るが、全 区間連続となる。E<0 のときには束縛型解となるが、全区間で発散しない解 は、左では増加型指数関数、右では減少型指数関数とならなければならない。 原点での連続性より、α=√(-2mE)/h\ として左で exp(αx) とすれば、右で は exp(-αx) の形でなければならない。                  左の関数より、原点左直近では ψ=1、dψ/dx=αである。原点右直近では、 dψ/dx=∫(d^2ψ/dx^2)dx=∫{-2m[E+Vδ(x)]ψ/h\^2}dx=α-2mV/h\^2 となる。 ただし、積分区間は -∞から原点右直近とし、原点左直近までの積分は    dψ/dx(-0)=α を利用した。この値は原点右直近での微分値 -αと一致して いなければならないから、-α=α- 2mV/h\^2。つまりα=mV/h\^2。αの定義 を代入すると、√(-2mE)/h\=mV/h\^2。これより E=-(m/2)(V/h\)^2 が得られ る。  まとめると、固有関数は x<0 で exp(αx)、x>0 で exp(-αx)、またその 固有値 (エネルギー) は、E=-(m/2)(V/h\)^2 である。