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企業型への変換

以上の考察から分るように、国有財産は言うまでもなく、非国有財産と言っている国からの移管資産も、さらには運営費交付金で購入した資産もすべて減価償却を実質認めていない。 つまり、これらはすべて、国の所有物であって、法人は国から使用権を認められているだけであるという立場が見え隠れする。

減価償却の概念は、資産を実質価値で評価しようという考えに加え、資産の廃棄などに伴なう一過的な費用を分散させ、当期利益の平準化を実現する効果もある。 この結果、企業のような長期的な経営計画が立てられるのである。

財務省の立場も分らぬ訳ではないが、会計法を若干変えてでも、長期計画の立て易い、かつ企業会計と比較の容易な分かり易い財務諸表とすべきではなかったかという苦言を述べたい。 しかし、今まで、どんな圧力にもめげなかった同省の姿勢を見る限り、それは無理であろう。

せめて、法人型の財務諸表に、企業型の解釈に基づいた財務諸表を併記すべきであろう。 また、それも叶わぬ場合には、減価償却に対応する科目設定はしてあるので、これを利用して、本章の各所で述べた読み換えをすべきである。 読み換えは、次のようにまとめられる。

なお、こうした読み換えの結果、実在勘定と名目勘定の変換が入るので、貸借対照表も損益計算書も書き変わってしまう。 変換が起ると、ある科目がなくなり、別の表に現われる以外に、当期利益および !当期利益が変化する。 そこで、上記の科目移動以外に起る当期利益の変動についても示す。

図 12.13: 法人財務諸表を企業型に読み換える
\begin{figure}\centering
\begin{tabular}{llll\vert lll}
\hline
&法人型 &→ &企...
...交付金戻入&→ &!運営費交付金収益 &なし \\
\hline
\end{tabular}
\end{figure}

ただし、除去時の !資産見返物品受贈額戻入と !資産見返運営費交付金戻入を共に !資産除去見返戻入と記載する場合もある。 この場合には、!資産除去見返戻入を !物品受贈益とすべきか !運営費交付金収益とすべきかが決定できない。 この場合には、当該年度の運営費交付金の総額を参照して決めざるを得ない。

この表のうち、運営費交付金債務については、年度内にほぼ使い切るものであるから、当期利益への影響は少ない。 しかし、資産見返物品受領額などは収益を遅らせる要因になっているので、これを当初からの収益とすると、大きな当期利益になる。 また、建物などの国有償却資産は減価償却を相殺していたので、これを顕在化すると当期利益を抑えることになる。 しかし、建物などは償却年数が多く、一般には影響は少ない。 ということで、企業型にすると、少なくとも設立当初は当期利益は増大する。

また、公務員から移動した定員については、その退職金は運営費交付金に含まれていると理解されているので、退職給与引当金という概念もない。

独立行政法人は利潤を追及することではなく、サービスの効率を追及するから、その会計基準は企業型である必要はなく、それ故、独自の法人型としたとされているが、このように当期利益が異なる意味を持つことは、やはり大きな問題点であろう。


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OKABE Yoichi 平成22年5月17日