next up previous contents index
: 計算機処理の実際 : 独立行政法人・国立大学法人会計 : 財務諸表の実際   目次   索引

当期利益について

この方式で貸借対照表を作っていると、妙なことが発生することがわかってきた。 各種法人の財務諸表を見てみると、当期利益に赤が多いのである。 理由を尋ねてみると、運営費交付金に剰余が生じるとその剰余は、余程の理由がない限り、年度末、 もしくは中期目標終了時に財務省に返還することを要求される。 したがって、各法人は、キャッシュ的利益は 0 となるように運営している。

一方、利益には発生主義に基づく非キャッシュ的利益も加算されるが、そのもっとも大きなものは減価償却費 (損失) である。 運営費交付金で購入した備品の減価償却費は、ここでも述べたように、損益外減価償却累計額で実質として損失にならないように取り扱うが、外部資金で購入した備品の減価償却費は、通常の企業のように損失となる。 したがってその分、赤が発生するのである。

ちなみに、現在、財務省は、運営費交付金の剰余について、次の条件が満されない限り年度を越えることを認めていない。

法人化開始時には、各法人は大変な努力をして収益を上げ、運営費交付金に剰余を生じるように努力してきた。 しかし、その大部分は財務省へ返還を要求されたため、現在、ほとんどの法人は運営費交付金を使い切るように努力をし始めている。 そもそも、法人化は企業経営を見本とし、 法人が努力して国費の利用を下げるようにする期待から始まった。 しかし、収益を上げ、損失を下げても、その結果が国に返還 (没収) されるようでは、法人の努力はむなしい。

財務省は「そもそも法人には、なすべき業務があり、その業務を遂行した結果、余りがあったということは、それだけ、運営費交付金が多過ぎたのである」という立場をとっている。 法人の経営者の効率化に対するインセンティブをまったく無視した考えとしか思えない。 結果として、大きな国費の無駄使いを助長しているのである。

もし、インセンティブを鼓舞しつつ、国費の削減を努力するのならば、一つは法人税で対応するのがよいだろう。 利益が上がったのならば、それに一定率を掛けただけの金額を法人税として吸い上げればよいのである。 現に企業はそれでも、利益の追求に努力しているので、企業と同じ税率ならばうまく行くはずである。

さらに国費の削減をしたいのならば、全法人の運営費交付金を一定率で下げ、努力して上げた法人の剰余金は可能な限り、法人の次年度の運営に使えるようにすべきである。 法人を管理している総務省、およびその後で法人の財務を制御している財務省の官僚は、ぜひ、法人の経営者のインセンティブをどのようにして鼓舞できるかを勉強して欲しい。


next up previous contents index
: 計算機処理の実際 : 独立行政法人・国立大学法人会計 : 財務諸表の実際   目次   索引
OKABE Yoichi 平成22年5月17日