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事業の運転

事業とは儲けることである。 その結果、今期、負債は変らなかったが、資産が大幅に増えたとする。 明らかに、純資産は、利益(profit, gain)と呼ばれる儲け分だけ増加する。 このことから事業とは純資産を増加することと言っても同じことである。 負債が変化した場合には、その分、現金や預金が変化しているはずである。 つまり、資産と負債は連動して変動するので、上記の議論は変らない。 次期には、この増えた純資産を元手にして、さらなる利益を蓄積して純資産のさらなる増加に努力することとなる。

期末時点までの当期の利益は、前述のように、特に当期利益(current profit, current income)と呼ばれる。 当期利益は、賞与や配当となって配られる以外に、次期の事業の元手になる。 その際、当期利益の集積は剰余金(surplus)という形にして、資本金と区別するが、共に純資産であることは、上記の説明で明かであろう。

創業時の自己資本も、企業の立場からみるとタダで手に入れたものであるので、利益の一種とみなしてもよい。 したがって、純資産はすべて利益の集積ということも可能である。

つまり、純資産とは三つの顔を持っていることが理解できよう。

資産と負債の残高
正の財産である資産と負の財産からなる負債の残高で、正味財産 (資本)。
事業の元手
創業の際には、自分で拠出した資金。 その後は、稼いだ利益も含め、次期の元手と理解することができる。
利益の集積
創業時の資金も企業から見るとタダで手に入れた利益とみなすことができるので、すべて毎年の利益を重ねたものと考えることもできる。

メモ: 純資産の色々な定義

純資産を資本と呼んでいたが、資本とは事業の元手であるので、負債も資本とみなす立場もある。 この際は次のような用語を用いる。 他人からの他人資本(outsider funds)、つまり負債と、自己からの自己資本(insider funds)、つまり今まで述べた定義での純資産を合せて、投下資本(investment funds, IF)を用意し、それにより同額の事業資産(bussiness assets, BA)、つまり今迄の定義での資産を得る。 これにより得た利益を自己資本に組入れて、増加していくことが、事業の目的である。 ただし、この立場でも、簿記の記載の仕方は変らない。

株式会社の場合、もっと事業拡大を行う場合には増資(increase of capital)を行って資本金を増加することにより資産を増加させる。 この際、株券が額面よりも高額の場合には、その差額は !収益により処理し、資産をさらに増加することになる。

個人会社などでは、事業主が資本金を回収したい場合がある。 例えば事業主に利益分の現金を戻す。つまり、現金と資本金について、利益分が相殺するような作業を行う。 これにより、資本金が徐々に剰余金に差し交わってくることになる。 株式会社だと減資(reduction of capital)、つまり現金による株の回収を行い、現金と資本金を同額削減することも行う。 つまり個人企業だと事業主に返す現金を、株主に返すのである。 なお、株券が額面よりも高額の場合には、その差額は !費用により処理することになる。

メモ: 株の価格

株は資本金の源泉なのに、何故株価(stock prices)が変動するのであろうか。 まず、資本金の性格を改めて考えてみよう。 資本金は事業を行う自己の純資産である。 したがって、利益が上がれば、資本金は増加する。 株主(stock holder)は、前にも述べたように自分側の人間であり、資本金の出資者であるだけでなく、純資産の正当な持ち主でもあるのである。 したがって、第一義的には、株の価格は資本金に比例するのである。 しかし、これが成立するのは創業時だけである。 いずれ、純資産が増えてくると、株価はそれに比例して増えてよいのであるが、配当金の期待値や純資産の将来の価格予想も入ってくる。 つまり投機性が出てくるのである。 したがって、その会社の業績によって、日々変化することになるのである。 株価の決定メカニズムは、これ以外にも種々の要因があるので、興味のある人は他書を参照されたい。


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OKABE Yoichi 平成22年5月17日