ここまでで仕訳帳と期首の貸借対照表が整ったので、 最終決算に必要なすべての情報が揃ったこととなる。 期末に行う決算の目的は、当期のフローと期末のストックの把握である。 後者は期首の貸借対照表に当期のフロー試算表を加算すればよい。 名目勘定はフロー試算表にしか含まれていないので、 当期名目フロー試算表および期首貸借対照表+当期実在フロー試算表が 期末の重要な情報となる。 前者の配列を変えたものを 損益計算書(profit loss statement, P/L, income statement)、 後者の配列を変えたものを貸借対照表(balance sheet, B/S) と言う。
| 期首貸借対照表 + フロー試算表 → !損益計算書 + 貸借対照表 |
もう少し詳しく述べると、次のようになる。
| !名目フロー → !損益計算書 |
| 期首貸借対照表 + 実在フロー → 貸借対照表 |
このようにして作成した損益計算書と貸借対照表を表2.11に示す。
勘定科目は適宜、分類を行った。 ( )、[ ]、{ } は順により細い 明細を示す。最も細い明細が勘定科目となっている。
損益計算書では、大きく収益、費用、当期利益があり、 また収益を比較的経常的に発生する経常収益(ordinary income)と 設備の売却益といった突発的に発生する特別利益(special profit)に大分類する。 さらに経常収益を営業に関る営業収益(operating income)と それ以外の営業外収益(non-operating income)に分類することが多い。 同様に、費用も経常費用(ordinary expenses)と 災害時出費など突発的に発生する特別損失(special loss)に分類し、 さらに経常費用を営業費用(operating expenses)と営業外費用(non-operating expenses)に分類する。 なお特別利益と損失については、例外的に収益と費用でなく利益と損失という 言葉を用いるので注意してもらいたい。 なお、損益計算書では大々項目である費用、 収益という名称は明示しないのが普通である。 貸借対照表では、資産、負債、*純資産に分類するだけである。
以上の結果、1月末における損益計算書と貸借対照表が得られたが、 損益計算書からはこの期間に当期利益がどのように発生してきたかが 読み取れる。 また、貸借対照表からは、期末の財産がどのように構成されているかが 読み取れる。
期首貸借対照表とフロー試算表からの転記を人手で行う場合には、 転記のチェックを行うことが必要となる。 損益計算書と貸借対照表の二つで完備(complete)であることを利用し、まず、 損益計算書の平衡をとるように「!*当期利益」を定め、 次にそれと同額の「*当期利益」を貸借対照表に置き、 貸借対照表の左右の合計の一致により正当性を検証する。
以上の結果を、表2.12バーグラフにまとめておこう。
当期に利益が出ず、逆に損失が出たときの対応を述べておこう。 この場合には当期損失(current loss)となるが、次期の貸借対照表において、 純資産に負数として繰り入れられることになっているので、 損益計算書では左借方に「!*当期損失」、 また貸借対照表では右貸方に「*当期損失」として、 共に「負数」で記載される。
ここで得られた期末の貸借対照表とは、 単式簿記の現金出納帳で言えば次期繰越金に対応する。 したがって、次期の会計期間での期首貸借対照表には この今期末貸借対照表を使うことになる。
メモ: 当期損失の記載法
*当期損失 は正数表示の原則からは、 左借方に正数で置かれるべきものであろう。 しかし、平衡残高を表わす純資産の中に記載すべきであるという立場から、 右貸方に負数で置かれることとなったのである。 これに対応して、!*当期損失も左借方に負数で置かれることが多い。
メモ: 倒産
当期損失を出したら倒産するかというと、そんなことはない。 過去の利益剰余金の蓄積を食い潰すだけである。 利益剰余金が負になっても、極端な話、純資産が負になっても、 十分な資産があれば持ちこたえることも可能であり、そう短絡的ではない。 もちろん、これらが負であれば倒産しやすいことは事実であるが、 一方、これらがいずれも大きく正であっても、 簡単に倒産することがある。 一番多いのは、膨大な固定資産を持っていても、 手形の返済期限になって手元に現金がなく、 不渡手形を出してしまい銀行から取引停止になることである。 いくら資産があっても、現金化できる分が少なければ倒産してしまう、 それが、黒字倒産(bankruptcy with black balance)なのである。 財務諸表はあくまでも財産状況を示すものであり、 企業経営の安定性を示してはいないことを理解して欲しい。 安定化の管理にはキャッシュ量を把握している必要があり、 これについてはキャッシュフローの章で再度説明する。