キャッシュフローを分析するもう一つの方法として、資金運用表と呼ばれるものがある。 これは実在勘定フローから計算しようというものであり、原理的には公開されている今期と前期の貸借対照表の差分から計算が可能である。 米国では財政状態変動表(statement of change of financial position)とも呼ばれ、一時は財務諸表の一部として位置付けられたこともある。 これの自然な延長上に、間接法によるキャッシュフロー計算書があるので、まずこの作成法から説明していこう。
| フロー試算表 (税引以後)→間接法によるキャッシュフロー計算書 (資金運用表) |
これらは、資金の循環を、利益の再投資といった立場から理解しようという過程ででき上がったものであるが、結果的に、営業に関わるの膨大な仕訳を遡ることなく、その収支を調べることができるというメリットを持っている。 しかし、直感的にはわかりやすいとは言えず、注意して読んで欲しい。
資金運用表(statement of application of fund)とは、利益からキャッシュフローを計算する手法である。 表5.12に示したフロー試算表の実在勘定分は平衡している。 したがって非キャッシュ実在勘定の平衡残高はキャッシュと一致するはずである。 つまりフロー試算表の非キャッシュ実在勘定の非平衡分をC/Fと置けば、これはキャッシュと同じ値となり、C/Fを仕訳帳から得るのとは別の方法で求めたことになる。
この表は見方によると、最終利益からC/Fを計算する手法を示したことになる。 最終利益は法人税や配当金が引かれた後の利益であり、経営者の努力の結果が直に表われていない。 このため、最終利益の代わりに税引前利益を使う習慣がある。 この二つの利益の関係は、表5.12に示したフロー試算表の第二ブロックに示してある税引以後の名目勘定フロー試算表を加えることで実現できる。
ここで、フロー試算表の名目勘定から「!*小計」算定には関連しないすべての科目を拾い出し、関連する実在勘定とグループを作る。 各グループの実在勘定と名目勘定の不平衡分がキャッシュ性の名目勘定 !c...となるはずである。 しかし、これを総額表示したいので、仕訳帳に戻って !c...の具体的内容を調査する。 この作業は、準直接法によるキャッシュフロー計算書の作成法とまったく同じである。 ただ、小計前に存在する !売上や !仕入 (または売上原価) の部分を除いて作業するだけである。 その結果を次表に示す。
この表の左右を入れ替え、表5.16に加算すると、多くの「!...」が消え、「!c...」に差し交わる。 これを適宜分類すると、資金運用表も間接法によるキャッシュフロー計算書も得られることになる。 まず資金運用表を示そう。
減価償却などの科目に(-)とあるのは、税引前利益の調整のために相殺項として通常の配置と反対の位置に入れたことを示すもので、会計上は(-)を無視してよい。 しばしば、「...補正」などと表示されている。
この表は次のような意味を持っている。
営業利益から運転資本を引くと、先に求めたキャッシュフロー計算書のCFOと一致することが確認できる (利息・配当金関係はずれる)。 また、資金調達から資本支出を引くと、先に求めたCFIとCFFの和と一致する (利息・配当金関係はずれる)。
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営業利益 |
| 資金調達 |
なお、実際の資金運用表では、運転資本のブロックは資本支出のブロックの後の最後に置くことになっているが、本書では、間接法によるキャッシュフロー計算書との対応をとる目的で、あえて営業利益のブロックの後に置いた。
間接法によるキャッシュフロー計算書(indirect method cashflow statement)は、資金運用表と項目の分類が異なるだけである。
資金運用表の営業利益
運転資本はCFOとしてまとめる。
また、資金調達と資本支出はCFIとCFFとしてまとめなおす。
CFOの小計以後は直接法によるものと同じであるが、小計以前は明らかに異なる形を持つキャッシュフロー計算書 (間接法) が得られる。
その部分の大まかな分類は表5.19のようになる。
ここで「非キャッシュ収益補正」とか「非キャッシュ費用補正」とか書かれた項は、本書では (-) を付けて表現している。
分類の仕方によっては間接法によるキャッシュフロー計算書となるが、まず資金運用表の分類に従った。
なお、間接法でも一部の名目勘定については仕訳帳に遡って分離する必要があるが、こはCFIとCFFに絡むものだけであり、準直接法と同様に負担が軽減されている。 このことと、かって経営のチェックを行う際利用してきた資金運用表が間接法の原点となっていることから、今もって多くの企業が間接法を用いる最大の理由であろう。
なお、完備性の補完という意味で直接法や準直接法で示した非キャッシュフロー計算書に対し、間接法では次の諸表が補完することになる。