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財産の増と減は等しくなる (平衡の原理)

次に考えなければならないのは、会計期間での財産間の移動である。 例えば、預金を払い戻して現金を得た場合に、現金は増えているが、一方で 預金は減っているはずである。 商品価値のある物を買った場合、確かに現金は失なうが、将来、販売価値のある 別の財産を手に入れているはずである。 このように、何かが減って何かが増えるということが多い。 そこで、失なったものと得たものを常に両方共記入しておこうという考えが 生まれる。 複式 (double entry) を表わす英語の意味を見ると二重記入である。 このように財産移動ごとに、左右が平衡するように二つの記入をするのが 複式簿記の第一の大発明である。

例えば、現金 10000 円を使って備品を購入した場合には、 表1.3に示すように、減った現金を右欄に記入し、増えた 備品を正数として左欄に記入する。

図 1.3: 複式簿記の基本形
\begin{figure}\begin{center}
\begin{tabular}{rlr\vert lrr}
\hline
\hline
&借...
...s & &\dots & &平衡 \\
\hline
\hline
\end{tabular} \end{center}
\end{figure}

この表の細線が T 字の形をしていることから T 字型勘定形式(T accounts)と呼ぶ。 T 字型はなるべく正数だけで記載するための工夫である。 T 字の左側が借方(debit)、右側が貸方(credit)である。 実務では日付、摘要などが入るため、表形式をとるが、この表に示した T 字の部分がもっとも大切であるので、本書ではなるべく T 字を明示するようにする。

ここでも、左借方と、右貸方は恒に等しくなり、 平衡の原理(principle of balance)が成立している。 なお、簿記の世界では、平均の原理(principle of balance)と言うが、 合計/件数 の意味の「平均」(average) という言葉と混乱するので、 本書では一貫して平衡という言葉を用いる。

実在勘定の増加と実在勘定の減少で平衡がとれる
財産の増加   財産の減少

以上の説明だけでは、 財産の合計は永久に増えたり減少したりしないように思えるかも知れないが、 次の節で分るように、財産の増減がある場合にもきちんと扱えるようになっている。


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Yoichi OKABE 平成20年5月17日