現代はまさに電子回路の時代である。 家電製品のような身の回りにあるものから、世界をまたがる通信 システムにまで、ありとあらゆるところに電子回路が使われている。
電子回路 (electronic circuit) とは、各種の回路部品を組み合わせて、 電気信号を処理するものである。 素子 (device) という言葉は対象とするシステムの構成要素といった意味を 持つ。 したがって、巨大な電力システムに対しては、発電所、変電施設といった 大きなものを指すし、計算機システムに対しては、本体、ハードディスク、 プリンタといったそれ自体かなりの大きさの電子回路を含む装置を指す。 これに対し、電子回路をシステムとして考える場合は図1.1のような トランジスタ、抵抗、キャパシタなどの回路部品のことを素子という。 英語のデバイスという言葉が使われることも多い。
電子回路に使われる素子は、およそ次のように分類することができる。
まず、線形素子は、電圧をかけるとそれに比例する電流の流れる線形特性を持つ 素子であり、いわゆる電気回路理論で扱う素子である。
これに対し、非線形二端子素子は、半導体ダイオードで代表されるような 非線形特性を持っており、交流から直流を作るなど、異なる周波数間の エネルギー移動を行うことができ、ある種のエネルギー変換を 行うことができる。
三端子素子は、主となる二端子と第三の制御電極を持っており、主端子間を 流れる電流を第三の電極にかける電圧により制御することができる。 代表格であるFETやトランジスタなどの三端子素子は、制御電極にほとんど 電流が流れ込まないことから、わずかな電力で主端子間の大きな電力を 制御でき、増幅作用を持っている。 といっても、永久機関のような無から有を作り出すのではなく、交流信号を 増幅するなどの場合でも、実は直流電力を使っているなど、 非線形二端子回路とは異なる意味のエネルギー変換回路と考えられる。 三端子素子は電子回路にとってもっとも重要なものであり、逆に、電子回路とは FET とトランジスタを、線形素子やダイオードの助けを借りて利用する 方法であるともいえる。
上に述べた素子の分類は必ずしも組織的ではない。 例えば、組織的にまず線形、非線形で分類することも可能ではある。 この場合、FETやトランジスタといった現実の三端子素子は非線形なので、 下二つのグループが非線形素子である。 しかし、三端子素子は、その線形的な部分だけを利用する場合も 少なくなくない。 やはり、制御電極を持っていることが、より本質なのである。
二端子、三端子といった端子数にこだわる分類も可能ではあるが、 トランスのように簡単な線形的機能しか持たないが四端子のものもある。 制御電極が二個ついたような四端子素子などもあるが、基本的には 上記三端子素子の延長と考えられるので、あえて、多端子素子の分類項目は 作らなかった。
能動素子と受動素子といった分類もある。 これは、エネルギーを作り出す能力があるかどうかという意味であるが、 本質的に永久機関が無い以上、電気エネルギー以外のエネルギーを電気 エネルギーに変換するか、直流エネルギーを利用して交流エネルギーを 増幅するといった異なる周波数間のエネルギー変換しかありえない。 前者は発電機、太陽電池、マイクロフォンなどであるが、ここで示した各種の 回路部品である素子はいずれも電気信号のみを扱うため、基本的に異周波間の エネルギー変換しかしない。 そういう意味で非線形二端子素子と三端子素子は能動素子であり、線形素子は 受動素子に分類される。 増幅という言葉を持つ三端子素子だけが能動素子に分類され、 非線形二端子素子は信号を歪ませる機能を持つ受動素子であると考えている 人もおり、この分類は必ずしも明白ではない。 しかし、大事なことは分類学に凝ることではなく、各素子ごとの機能を正しく 認識することである。