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オペアンプと反転増幅器

オペアンプとは、数多くのトランジスタなどを組み合わせ、なるべく理想的な 特性を持つ増幅器を集積回路として実現したものである。減衰器のところでも 述べたように、理想的な増幅器とは、なるべく現回路に影響を与えないよう、 入力を手に入れること、出力はきちんとした定電圧源として後段の回路を 駆動できること、なるべく高い増幅率を持つことなどである。現回路に影響を 与えないためにはなるべく高い入力インピーダンスを持つことが望ましく、 多くのオペアンプでは 10M$ \Omega$ 以上の高い入力インピーダンスを 持っている。また、出力側が定電圧源的であるためには、なるべく低い出力 インピーダンスを持つことが望ましく、多くのオペアンプでは 1$ \Omega$ 以下の出力インピーダンスを持っている。さらに、電圧増幅率 100,000 以上を 持つのが普通である。

Figure 5.3: オペアンプ
\begin{figure}\vspace{1in}
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(113,45)
\put(0,0){...
...(45.5,11.8){\makebox(0,0)[lb]{{\footnotesize\rm$+$}}}
\end{picture} \end{figure}
5.3のように、入力には正負の入力端子があり、正入力と 負入力の差の電圧が増幅されて出力される。オペアンプには、この他、$ \pm$ 15V の電源電圧が供給されるが、以下の説明では、これら電源電圧については 省略することが多い。

オペアンプを利用する場合は、その大きな増幅率を直接利用することはほとんど 無く、

Figure 5.4: 反転増幅器
\begin{figure}%
\unitlength 1pt
\begin{picture}(135,81)
\put(0,0){\special{PSfil...
...(63.5,29.8){\makebox(0,0)[lb]{{\footnotesize\rm$+$}}}
\end{picture} \end{figure}
5.4のように、出力から入力へ フィードバックをかけて利用することが多い。これは、回路の動作が 安定になることや、回路の線形性が増すなどの理由によるが、詳細は後に 述べる。ここで注意すべきは、フィードバックは必ず負入力端子に 対してかける。負入力に端子に信号を入れると通常は増幅作用を抑える 傾向になる。つまり安全サイドに働く。逆にフィードバックを 正入力端子にかけると、信号が何度も増幅される結果、異常発振などの不安定な 動作を起こす。

この図の回路の動作を解析して見よう。入力端子の電位を $ V_-$$ V_+$ とすると、オペアンプの増幅率$ A$のとき、出力電圧$ V_o$

$\displaystyle V_o=A(V_+-V_-)=-AV_-$ (5.1)

で与えられる。一方、もしオペアンプの出力がほとんど定電圧源で、かつ オペアンプの入力端子にはほとんど電流が流れ込まないとすると、$ V_-$ の 電圧は、$ V_o$$ V_-$ の抵抗分割された電位となるはずである。

$\displaystyle V_-=\frac{R_fV_i+R_iV_o}{R_i+R_f}$ (5.2)

両式から $ V_-$ を消去すると、$ V_i$$ V_o$ の関係を 得ることができる。実際には、まず第二式の分母を払う。次に、第一式から $ V_-$ を求めて代入する。$ 1/A$ を崩さないように変形すると、

$\displaystyle V_o=-\frac{R_f/R_i}{1+(1+R_f/R_i)/A}V_i$ (5.3)

が得られる。

さて、$ A$が極めて大きいとすると,

$\displaystyle V_o=-\frac{R_f}{R_i}V_i$ (5.4)

が得られる。当然、全体としての増幅率は $ A$ より小さいが、二つの コンダクタンスの比で自由に増幅率が設定できる点が強みである。このように 入力と逆転した増幅率が得られるので、反転増幅器 (inverter) と呼ばれる。 英語では論理回路のインバータと同じ用語であるが、信号を反転して増幅すると 言う意味では、確かに同じ概念である。

$ A$ が極めて大きいことを前提にすると、もっと簡単に増幅率を 求めることができる。式5.2より、$ A$が極めて大きくても 有限の大きさの出力電圧 $ V_o$ が得られることから、逆に、ほとんど

$\displaystyle V_-=V_+$ (5.5)

が成立していなければいけないことがわかる。二つの入力端子電圧が 結果的にほとんど等しくなることから、この式の条件を仮想短絡 (imaginary short) という。短絡とは言うが、二つの入力端子はいずれも入力 インピーダンスが極めて大きいため、負入力端子と正入力端子間に電流が 流れるわけではない。極めて誤解を生みやすい言葉ではあるが、要するに二つの 入力端子の電位が等しくなると言うことである。この例の場合は $ V_+$ が 接地されていることから、$ V_-$ は 0V でなければならない。

次に式5.2を適用するのだが、次のように考えよう。$ R_i$ には $ V_i/R_i$ の電流が流れるが、この電流はオペアンプには流れ 込めないので、$ R_f$ に流れていき、 $ R_fV_i/R_i$ の電位差を作り出す。 つまり、 $ V_o=-R_fV_i/R_i$ となり、増幅率 $ R_f/R_i$ が得られる。 これを図で理解する方法を考えよう。

Figure 5.5:
\begin{figure}\vspace{1in}
\end{figure}
5.5のように、左に $ V_i$、右に $ V_o$ を縦 バーとして描くと、$ V_-$ の電圧はこれらの電圧を結ぶ直線を、$ R_i:R_f$ の比で内分した点の高さで与えられる。この点の高さが 0 でなければならないことから、同じ増幅率が得られる。普通、横軸を 抵抗値にして、内分比を求める。

今までの考察は、オペアンプがかなり理想的な線形増幅器の特性を持つ 場合のものであった。実際にはオペアンプの出力電圧は電源電圧 $ \pm15$V を越えることができない。実際、フィードバックのある増幅器で入力 $ V_i$ をどんどん大きくしていくと、最初の内は上で計算された増幅率に比例して 出力 $ V_o$ はどんどん負に大きくなっていくが、いずれ $ -15$V で 飽和してしまう。これ以上入力を大きくしても出力は $ -15$V で一定に 保たれる。フィードバックがかかっているので、もしかするとこの議論が 成立しなくなると思われるかも知れないが、$ V_o$$ -15$V で 飽和しているときの $ V_-$ の電位は図による解法から明らかなように、必ず 正になり、この場合のオペアンプの出力は確かに負に飽和するので矛盾は 生じない。入力 $ V_i$ が大きな負になった場合は出力は、$ +15$V で 飽和する。

次に $ A$ が有限である影響を考えよう。$ A$$ 10^5$ 程度以上ある。 ここではやや特性の悪い $ 10^4$ として議論しよう。例えば $ G_i/G_f$ を 100 に選ぶと、式5.3より、増幅率は $ 100/1.01=
99$ と 1% ぐらい低くなるだけである。$ A$ が環境温度などで 多少ばらついても、フィードバック増幅器の増幅率は極めて安定であることが 理解できよう。例えば $ A$ が二倍になっても、増幅率は 1% しか 変化しない。$ 10^4$ の増幅率を持つ増幅回路を、フィードバックなしの 増幅器一段で構成したときに、$ A$ が二倍も狂ったら大変である。しかし、 同じ増幅器をフィードバック増幅器二段で構成すると $ A$ が二倍も 狂っても、各段では増幅率が 1% しか狂わないので、二段でも 2% しか 狂わない。このようにフィードバック増幅器は極めて安定な増幅作用を 持つのである。

この効果はフィードバック増幅器の線形性を高める効果もある。例えば 原点付近で $ A$ $ 2\times10^6$ で、最大出力振幅になる付近で $ A$$ 10^6$ と、二倍もの勾配変化があるような非線形なオペアンプでも、 フィードバックをかけると、増幅率の非線形性は上記の考察のように 1% に 抑えられてしまう。このようにフィードバックを利用すると増幅率は安定でかつ 線形性が強調される。

抵抗値 $ R_i$$ R_f$ はどのように選んだらよいのであろうか? 問題は オペアンプの出力内部インピーダンス(1$ \Omega$ 以下)や入力 インピーダンス(10M$ \Omega$ 以上)である。当然、前者より十分大きく、 後者より十分小さくなければならない。多くの場合 100$ \Omega$ ぐらいから 100k$ \Omega$ ぐらいの値が選択される。


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Yoichi OKABE 2008-02-17