これら外界から取り入れる情報、回路内の電気信号、外界へ送り出す情報は、 大きく分けて、アナログとデジタルに分類される。 アナログとかデジタルという言葉は、取り扱う信号の性質に 対しつけられたものである。
温度という量は、たとえば、10
C と 11
C の間の 1K の
間に 10.1
C とか 10.11
C とかいくらでも無数に
取りうる値を持つ。
このように連続的に値を取りうるものをアナログ (analog) 量と言う。
光の強度
も水位もみなアナログ量である。
アナログ量をアナログ電気信号に変化したものを入力とし、それを処理して
アナログ電気信号を出力として出す回路をアナログ回路と呼ぶ。
これに対しとびとびの値をとる量はデジタル (digital) 量と呼ばれる。 たとえば、パチンコ玉の数、モールス信号を送る電鍵の開と閉の状態などは デジタル量である。 このようなデジタル量を入力とし、それを処理してデジタルの出力を出す回路を デジタル回路と呼ぶ。 パチンコ玉の数のように取りうる値がいくつかあるものは、小さな値から順に 二進数を対応させ、その二進数の 0 と 1 の組合せを回路の入力とすることが 多い。 多くのデジタル回路は、図 1.2のように、二進数の桁数に 対応する数の入力チャネルを持ち、それを処理して、いくつかの出力 チャネルに 0、1 に対応する信号を送り出す作業を行う。 0、1 に対応する電気信号としては普通低い電圧レベルと高い電圧レベルを 用いる。
1960 年代ごろまでは電子回路といえばアナログ回路を指した。 しかし現在は、それが急速にデジタル化しつつある。 パソコンのような純粋なデジタル機器は言うまでもないが、計測や制御、 製造機械から家庭電化製品にいたるまで、あらゆるものにデジタル技術が 応用されている。 それは、デジタル技術が、複雑な機能を容易に実現できる 能力をもっているからである。
デジタル回路はアナログ量の処理には適していないように思われるだろうが、
決してそのようなことはない。
アナログ量を、ある刻みを単位にしてきわめて多値のデジタル量と見なし、
それをデジタル回路の入力とすればよいわけである。
またデジタル回路の出力を逆に変換してきわめて多値の出力として
出せばあたかもアナログ回路のように動作させることができる。
この場合入力のアナログ量は一定の刻みに丸められてしまうし、出力も完全な
アナログ量とは言い難い。
しかしこのようなデジタル化 (量子化) に伴う誤差は現実にはほとんど
問題とはならない。
タンクの水位を 1mm 以下の単位まで測ることは多くの場合意味がないし、
波などがあれば、そもそも測定すらできない。
水流のバルブを 1
m の確度で制御してもほとんど意味がない。
このようにどんなアナログ量にも必要な精度や確度があるからである。
十分精度を上げれば、水の量も、水分子数で表現できるし、光の強さも光子数で
表現できるから完全に量子化されてしまう。
一見、荒唐無稽のような話に聞こえるかもしれないが、こうした限界に達した
技術もないわけではない。
入力側のアナログ量をデジタル量へ変換する A/D 変換回路と出力側のデジタル 量をアナログ的な量へ変換する D/A 変換回路を精度良く作成しておけば、 図1.3のように、デジタル回路によるアナログ処理は途中の 回路による歪などが発生しないため、むしろ品質の良い処理ができる。 従来アナログ処理が主流であったオーディオなどの分野でも、光ディスクに 見られる PCM (パルス符号変調) 録音のようにこういった処理が大幅に取り 入れられるようになっている。
デジタル回路の代表であるコンピュータの出現により、いくらでも複雑な 情報処理ができるようになったことから、かっては機械的部品の組み 合わせなどで処理してきた制御機構なども、ほとんどすべて電気信号に 変換された後に、電子回路で処理されるようになってきている。 たとえば、自動車エンジンの制御などは、かっては完全に 機械的仕掛けだったが、現在はほとんど電子的に 処理されるようになってきている。
一方で、アナログ回路の利用比率はかなり下がってきたとはいえ、素子の持つ 限界速度を十分に生かすことができ、テレビ、携帯電話といった無線通信に 使われる高周波の処理には欠かせない。 さらに、最近は脳機能との類似性から、再評価されつつある。