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バターウォースフィルタ

現在のフィルタの主流は、次節に述べるチェビシェフフィルタである。 しかし、まず、説明の簡単なバターウォース (Butterworth) フィルタについて 述べる。 バターウォースフィルタの基本概念は $ x^n$$ n$ の増大につれ、 どんどん、$ x=1$ で立ち上がる箱型の関数になっていくことを利用する。 これに 1 を加え、逆数をとると、 $ n\rightarrow\infty$ $ \vert\omega\vert<
1$ でほぼ 100% の通過特性を持ち、 $ \vert\omega\vert>1$ でほぼ 0% の阻止特性を持つフィルタとなる。 上の形にするには次式のようにする。 ただし、奇数乗であると、$ x=-1$ 側でうまくいかないので、これを 二乗して、偶数乗にする。

$\displaystyle \left\vert\frac yx\right\vert = \frac1{\sqrt{1+\omega^{2n}}}$ (6.6)

これから $ s$ 式を誘導する必要がある。 前節に示した手順を逆に踏んでいけばよい。 まず、この伝達部分を二乗してみよう。 簡単のために、$ n=2$ としておくが、一般の $ n$ に対しても同じ手法が 使える。

$\displaystyle \left\vert\frac yx\right\vert^2=\frac1{1+\omega^4}$ (6.7)

この分母を $ j\omega$ の一次式で展開する。 具体的には、まず分母の $ j\omega$ を適当な変数に置き換える。 分母を 0 とする $ j\omega$ の根 $ \alpha_i$ を求め、それを 利用して $ (j\omega-\alpha_i)$ の積の形にする。
$\displaystyle \left\vert\frac yx\right\vert^2$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac1{1+\omega^4}
=\frac1{(j\omega+(1+j)/\sqrt2)(j\omega+(1-j)/\sqrt2)
(j\omega-(1+j)/\sqrt2)(j\omega-(1-j)/\sqrt2)}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \left(\frac1{(j\omega+(1+j)/\sqrt2)(j\omega+(1-j)/\sqrt2)}\right)
\left(\mbox{c.c.}\right)$ (6.8)

また右辺の前半の括弧だけを採り、その式の $ j\omega$$ s$ と置き換えると目的とする伝達関数の $ s$ 表示が得られる。

$\displaystyle y=\frac1{(s+(1+j)/\sqrt2)(s+(1-j)/\sqrt2)}\,x=\frac1{s^2+\sqrt2s+1}\,x$ (6.9)

なお、元々 $ (j\omega-\alpha_i)$ の形は分母に4個あったが、 そのうちどれを拾い出し、どれをその複素共役と考えるかについては、明解な 選定則がある。 それは $ \alpha_i$ のうち、実部が負のものだけを採用するのである。 もし、実部が負であると、それにより構成したフィルタは不安定な発散解を 持ってしまうからである。

もとより、L、C、R のみから構成する伝達回路により作られる伝達関数は必ず 分母の根は実部負となる。 しかし、演算増幅器のような能動回路を用いると実部正の回路の実現も 容易なので、注意が必要である。

同じことを機械的に作業するには、式6.7に対応する 式の $ \omega$$ s/j$ に置き換える。続いてその分母を、その $ s$ の根を利用して一次式の積に直す。このうち、半数の実部負の根に対応する 一次式だけを採用すれば、必要な $ s$ 式が得られる。なお、分子は $ s=0$ としたときに全体が 1 となるように決定する。

この作業法は、もっと高次のバターウォースフィルタでも、次節で説明する チェビシェフフィルタでもまったく同じである。 ちなみに、高次のバターウォースフィルタの場合、その根は次のようになる。

$\displaystyle s_k=-\sin\frac{(2k-1)\pi}{2n}+j\cos\frac{(2k-1)\pi}{2n} \hspace{5em}k=1,2,\cdots,2n$ (6.10)

ちなみに、これらの根を複素平面上にプロットすると、元々 $ -1$$ 2n$ 乗根であったことからわかるように、原点を中心とする円周上に等間隔に 並んだものになる。 安定根は言うまでもなく、そのうちの左半平面に来るものだけとなる。

ここで、伝達関数から具体的な回路構成をすることになるが、それについては 次々節で述べる。


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Yoichi OKABE 2008-02-17