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零点と極点

伝達関数の分母の零点を計算すると、過渡応答を計算することができる。 回路理論では零点と極点という単語がたびたび現われるが、過渡応答に限れば、 伝達関数の極点、つまり、その分母の多項式の零点が議論の対象となる。 また、分母を払った形では、出力側にかかった多項式の零点が対象となる。 色々覚えるのは大変であるので、伝達関数の分母の零点とのみ覚えておこう。

前節で述べた $ CR$ の例では、分母の零点は $ s=-1/CR$ に発生する。 したがって、過渡解は次の形となる。

$\displaystyle y(t)=y_1\exp\left(-\frac t{CR}\right)$ (3.1)

これは、キャパシタンス充放電の際、定常電圧に寄っていくときに現われる 波形である。

また $ C$ の例では、分母の零点は $ s=0$ に発生する。 $ y_1\exp(0\,t)$、つまり一定値が過渡解となる。 つまり、出力である電圧には、いつも一定電圧が加算されてよいことを 示している。

$ LCR$ の直列回路で、電圧を入力 $ x(t)$、電流を出力 $ y(t)$ と考えると、次の伝達関数が定義される。

$\displaystyle y=\frac1{Ls+R+1/Cs}\,x=\frac{Cs}{LCs^2+CRs+1}\,x$ (3.2)

この伝達関数の分母の零点は、二次方程式の根であるから、$ LCR$ の組み合わせにより、二実根だったり、二重根(実数)だったり、 二共役複素根だったりする。 両端を短絡、あるいは定電圧源に接続すると、それに応じ、電流波形に 減衰関数(dumping function)臨界減衰関数(critical dumping function)減衰振動関数(dumped oscillation function)といった 過渡解が現われる。

一般に、$ LCR$ を沢山使って、回路をいくら複雑にしていっても、 二端子回路のインピーダンスやアドミタンスを表現する伝達関数の分母や 分子には、正定数の多項式しか現われない。 また、こうした回路の一部から出力を取り出しても、分母は必ず正定数の 多項式となる。 したがって、その零点の実部は、必ず 0 または負となり、増大型の解は 観測できない。

しかし、能動素子が含まれていると、零点の実部が正になる可能性が 生じてきて、増大解が発生する可能性がでてくる。このような回路は 不安定であると言われる。


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日