論理回路で重要なものに,論理否定NOTに加えて,論理積ANDと論理和ORがある。 詳細はいずれ説明するが,これら3種類の基本論理回路があると, どんな入出力関係を持つ論理回路も設計可能になるからである。
まずANDであるが,論理積(logical multiplication)とも言われ,
すべての入力が真のときのみ,真となる論理である。
つまり「`
and
' is 1 only when
and
.」である。
例えば2入力のときの真理値表は図 3.5のようになる。
式で表すときにはしばしば積の形で表現され,
「
」で結合するか,代数のようにそのまま変数を結合する。
実際,普通の積でも,一つでも0があると,積は0となり,
すべてが1のときのみ,積は1となる。
ORとは論理和(logical addition)とも言われ,複数入力のうち一つでも1があると,
出力が1となる回路である。
つまり「`
or
' is 1 only when
or
.」3.1である。
入力2個のORの真理値表は図 3.6のようになる。
式で表すときにはしばしば和の形で表現され,「
」で結合する。
実際,普通の和でも,すべてが0のときのみ,和は0となり,
一つでも1があると,和は0とはならない。
普通の和と異なるのは,一つでも1があれば,
いくつ1があっても結果を1にしてしまうことである。
NOTとANDとORは重要な基本論理回路であるが,残念なことに, FETのような電子素子を使うと,ANDとORは簡単には実現できない。 その理由を述べよう。
先に述べたn-MOS-NOT,p-MOS-NOT,c-MOS-NOTの三つのNOT回路の上下の素子,
つまり抵抗とFET,あるいは二つのFETを入れ替えると,
どのような動作をするのであろうか。
図 3.7に示したものは,
c-MOS-NOTの上下を入れ替えたものである。
であると,下のp-MOSがON,上のn-MOSがOFFとなるから
,
また
であると,下のp-MOSがOFF,上のn-MOSがONとなるから,
になると思われがちであるが,そう簡単ではない。
というのは,スイッチを制御する電位差は,
FET両端の電位の低い方を基準にするからである。
であると,n-MOSはOFF,p-MOSはONなので,
は下がる。
しかし,
は完全には0とはならないのである。
p-MOSがONとなるには,制御電極の電位が,p-MOSの上下端子の高い方の電位,
つまり
の電位より
だけ低くなくてはならない。
したがって,
の場合,
は0.2
程度までしか下がらないのである。
同様に
のときにも,
が0.8
ぐらいになると,
低い
電位を基準にしたn-MOSの制御電位が0.2
程度になり,
それ以上,ONにはできなくなる。
このため入力電位を0から
まで変えても,
の電位は0.2
から0.8
までしか変化しない。
入力の変動幅よりも出力の変動幅の方が小さい,
つまり利得1以下の増幅器にしかならないので,論理回路としては使われない。
しかし,これらの回路は,負荷に何を繋いでも,あまり影響を受けないため,
緩衝増幅器(buffer amplifier)と呼ばれる。
このように,n-MOSを上に,p-MOSを下にした回路は,電圧的には増幅作用がないため, 論理回路には使いづらい。 NOTのようにn-MOSを下に,p-MOSを上にした回路はおおよそ入力信号は反転する。 したがってFETを用いると,NOT的な回路は作りやすいが, ANDとかORのように入力が増えると出力も増えるような回路は, 作りづらいことがわかるであろう。 それではどのようにするかと言うと, 以下に述べるNAND回路やNOR回路などを組み合わせて実現する。 これらはNOT(AND)およびNOT(OR)であり, ちょっとした工夫で簡単にANDやORにできるからである。