究極の不連続量は,たった二つしか値を取りえないようなケースである。 よくディジタルというと0または1という言葉を聞くと思うが, ほぼすべてのディジタル回路がこのたった二つの値を組み合わせて構成されている。 これを2進(binary)系と言う。 0,1に対応する電気信号としては普通, 低い電圧レベル(通常0V)と高い電圧レベル(通常は正の電源電圧)を用いる。
たった二つでは二つの区別しか伝えられないと思うかもしれないが, 図 1.1のように,伝達に複数の信号線を使えば, 多くの状態を伝えることができる。 例えば,2本の信号線を使えば,2本の線に00,01,10, 11の四つの電圧を載せることにより,四つの状態を伝えることができる。
二つの選択肢の一方を選ぶことの情報量を1ビット(bit)と呼ぶ。
したがって,0,1を送るチャネルが
個ある場合,
bitの情報量を伝える能力があることになる。
2進の情報伝達の線数をビット幅(bit width)または単に幅(width)と言うので,
図 1.1の入出力は幅
bitとも言う。
自然数のように取りうる値がいくつかあるものは, 2進表現(binary representation)し,その2進表現の0と1の組合せを回路の入力とすればよい。 数の2進表現とは0,1,2,3,4,...を0,10,11,100,...と, たった2になるだけで1桁繰り上がる数の表現法である。 ちょっとわかりづらいかもしれないが, 10で1桁繰り上がる10進表現(decimal representation)と丁寧に比較していくと理解できる。
1960年代ごろまでは電子回路と言えばアナログ回路を指した。 しかし現在は,それが急速にディジタル化しつつある。 パソコンのような純粋なディジタル機器は言うまでもないが,計測や制御, 製造機械から家庭電化製品にいたるまで, あらゆるものにディジタル技術が応用されている。 それは,ディジタル技術が, 複雑な機能を容易に実現できる能力を持っているからである。
ディジタル回路はアナログ量の処理には適していないように思われるだろうが, 決してそのようなことはない。 アナログ量を,ある小さな刻みを単位にして自然数で表現し, それを2進表現して複数の線によりディジタル回路の入力にすればよいわけである。 またディジタル回路の出力も複数の2進の線により取り出し, それを逆に変換して,極めて多値の出力として出せば, あたかもアナログ回路のように動作させることができる。
この場合,入力のアナログ量は一定の刻みに丸められてしまうし,
出力も完全なアナログ量とは言い難い。
しかしこのようなディジタル化に伴う誤差は現実にはほとんど問題とはならない。
タンクの水位を1mm以下の単位まで測ることは多くの場合意味がないし,
波などがあれば,そもそも測定すらできない。
水流のバルブを1
mの確度で制御してもほとんど意味がない。
このようにどんなアナログ量にも必要な精度や確度があるからである。
十分精度を上げれば,水の量も,水分子数で表現できるし,
光の強さも光子数で表現できるから完全に量子化されてしまう。
一見,荒唐無稽のような話に聞こえるかもしれないが,
こうした限界に達した技術もないわけではない。
なお,ディジタル化は量子化(quantization)とも言われる。
図 1.2のように, 入力側のアナログ量を2進ディジタル量へ変換するアナログ-ディジタル変換回路(analog-digital convertor)またはAD変換回路(AD convertor)と, 出力側の2進ディジタル量をアナログ的な量へ変換する ディジタル-アナログ変換回路(digital-analog convertor)またはDA変換回路(DA convertor)を精度良く作成しておけば, ディジタル回路によるアナログ処理は途中の回路による歪みなどが発生しないため, むしろ品質の良い処理ができる。