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静電場の性質

前節で述べたベクトル場の性質を使って、 電場や磁場ベクトル場の性質について議論しよう。 次式のクーロンの法則(Coulomb law)により形成される電場ベクトル場は、 発散はあるが回転のない場になっている。

$\displaystyle \emph E=\frac Q{4\pi\varepsilon_0}\frac{\emph r}{r^3}$ (3.1)

ここで、 $ \varepsilon_0$電気定数(electric constant)であり、 $ 1/(4\pi\times9\times10^9=8.85\times10^{-12}$[C/m] である。

まず、任意の形状の閉曲面の上で、点電荷が原点に一つだけある場合の、 電荷の作る電場の発散積分を計算してみよう。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\cdot\emph E=\frac Q{4\pi\varepsilon_0} \oint_V\emph{dS}\cdot\frac{\emph r}{r^3}$ (3.2)

前章の式 2.29より、右辺の積分は、 閉曲面が電荷を囲めば$ 4\pi$となるから、 ガウスの法則(Gauss law)と呼ばれる次式が成立する。 前章で示した面積分と体積積分を結ぶ数学の恒等式群のことも似た呼び方をするが、 電磁気学では、クーロンの法則から誘導されたこの式のことをそう呼ぶ。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\cdot\emph E=\frac Q{\varepsilon_0}$ (3.3)

一方、閉曲面が点電荷を囲んでいないときには、 式2.31より0となることが導かれる。

閉曲面内にいくつか電荷があるときには、 電場はそれぞれの電荷の作る電場のベクトル加算の結果となるから、 発散積分の結果も、個々の電荷の発散積分の総和となる。 結果的に、上式の右辺の$ Q$として閉曲面内の総電荷を考えればよいこととなる。 電荷が点電荷の集合ではなく、空間に広がって分布するときには、 電荷密度(charge density)$ \rho$を用いて次式のように表わすことができる。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\cdot\emph E =\frac1{\varepsilon_0}\int_VdV\,\rho$ (3.4)

この左辺は、ベクトル場スカラー積面積分のガウスの定理(Gauss theorem of scalar product surface integral of vector field)により $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$の体積積分になる。 右辺も体積積分であるから、積分記号を外すと、 ガウスの法則の微分形(differentail form of Gauss law)と呼ばれる次式が得られる。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E=\frac1{\varepsilon_0}\rho %3.5
$ (3.5)

積分記号をいきなりはずすのは乱暴かもしれない。 厳密には、 $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$$ \rho$がほぼ一定に見えるまで積分領域を十分小さくして、 左右の体積積分を体積との積にしてしまう。 この両辺を体積で割れば、上式が得られる。

この表現で点電荷がある場合は、次のように考える。 原則に戻って、閉曲面を点電荷を囲む有限の大きさにしておく。 ここで、閉曲面を十分小さくしていけば、一点での $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$が計算できる。 電荷のないところでは明らかに $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$は0となるが、 点電荷を囲むように閉曲面を小さくしていくと、 その積分結果は $ Q/\varepsilon_0$と一定になり、体積に比例しない。 $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$の定義を強制的に適用すると、 $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$は無限大になってしまう。 ある一点で無限大の値をとり、それを含む積分を行うと1になるような関数は、 $ \delta $関数と呼ばれる。 これを用いると、次のように書ける。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E =\frac Q{\varepsilon_0}\,\delta(\emph r-\emph{r'}) %3.6
$ (3.6)

$ \emph{r'}$は点電荷の存在する位置である。 点電荷が沢山ある場合には、 右辺の点電荷の値$ Q$と位置$ \emph{r'}$を変えたものを合計すればよい。 このように、電場の源である電荷の存在しているところだけが特異になる。

次に、一つの電荷が作る電場の回転積分を計算して見よう。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\times\emph E =\frac Q{4\pi\varepsilon_0} \oint_V\emph{dS}\times\frac{\emph r}{r^3} %3.7
$ (3.7)

この右辺の積分は式 2.40より、 閉曲面が電荷を囲むか否かに関わらず、0となる。

電荷が沢山あっても、また電荷が空間に分布して存在していても、次の式が成立する。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\times\emph E=\emph0 %3.8
$ (3.8)

左辺は回転の積分定理により $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph E$の体積積分になる。 したがって、積分記号を外すと、いたるところで、次式が成立することが示される。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph E=\emph0%3.9
$ (3.9)

このように、電場はいたるところ回転の存在しない場である。 発散についても、 $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E$は電荷が無い限り0であり、 極めて素直な場である。 電荷を囲む任意の閉曲面で発散が存在するのは、電荷のあるところだけの発散が、 外部からも観測されるに過ぎない。


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Yoichi OKABE 2008-03-29