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: マクスウェル方程式の量方程式 : 単位系について : 単位に関する一般的手法   目次   索引

電磁気学における力の量方程式と種々の単位系

電磁気学においても、単位系を決定するのはいくつかの基本方程式である。 歴史的には、磁場は、電流間に働く力以前に、磁石間に働く力から定義された。 このころは、磁石内の電流は知られておらず、磁極の場所に磁荷があるとされていた。 このため、電荷間のクーロンの法則(Coulomb law)に加え、磁荷間のクーロン法則が、 基本方程式の一つになっていた。 その後、磁場中で電流が力を受けることが分かり、 磁場と電流の関係式が基本方程式の一つに参入した。 さらに電流同士の力を与えるビオ・サバールの法則(Biot-Savart law)が誘導された。 この際、電流は次式で定義される。

$\displaystyle I+\D Qt=0$ (608)

例えば、ガウス単位系ではこれらは次のようになっている。 ただし、電流の絡む式では、力は電流の方向に依存するが、ここでは簡単のために、 電流は、最大の力を及ぼし合う方向に置かれているとしている。

$\displaystyle F=\frac{Q_1Q_2}{r^2}$ (609)

$\displaystyle F=\frac{I_1\Delta s_1I_2\Delta s_2}{c^2r^2}$ (610)

$\displaystyle F=\frac{m_1I_2\Delta s_2}{cr^2}$ (611)

$\displaystyle F=\frac{m_1m_2}{r^2}$ (612)

これと、いままで学んできたMKSA単位系を比較してみると、 $ \varepsilon_0$$ \mu_0$$ 4\pi$が入っていないこと、 逆に、ところどころ$ c$が入っていることが大きく異なる。 つまり、どちらの方程式群も数値方程式であって、量方程式ではないのである。 そこで、MKSA単位系との双方を満たす量方程式を探す必要がある。 両方を満たすには、少なくとも次のようにせねばならないだろう。

$\displaystyle F=\frac\alpha{4\pi\varepsilon_0}\frac{Q_1Q_2}{r^2}$ (613)

$\displaystyle F=\frac{\alpha\mu_0}{4\pi} \frac{(I'_1\Delta s_1)(I'_2\Delta s_2)}{r^2}$ (614)

$\displaystyle F=\frac\alpha{4\pi}\frac{m_1\,(I'_2\Delta s_2)}{r^2}$ (615)

$\displaystyle F=\frac\alpha{4\pi\mu_0}\frac{m_1m_2}{r^2}$ (616)

ただし$ I'$は次式で定義される対称電流である。 以後、特に断らない限り、電流という場合には、この対称電流を指すものとする。

$\displaystyle I'=I/\gamma$ (617)

対称電流の場合、電流連続の式は次式のようになる。

$\displaystyle I'+\frac1\gamma\D Qt=0$ (618)

MKSA単位系では $ \{\alpha\}=1$ $ \{\gamma\}=1$とし、 一方、ガウス単位系では $ \{\alpha\}=4\pi$ $ \{\varepsilon_0\}=\{\mu_0\}=1$ $ \{\gamma\}=\{c\}$ とするのである。 実はこれらの量方程式は、ガウス単位系とMKSA単位系だけでなく、 いままで提案されたほぼすべての単位系をカバーする全能な量方程式なのである。

ガウス単位系で $ \{\alpha\}=4\pi$として、 分母分子で$ 4\pi$が消えるような若干面倒な手法を用いたのは、 力の方程式で$ 4\pi$があるほうが、 マクスウェル方程式などの微積分形の方程式で$ 4\pi$が消え失せ、 きれいな形になることを反映したものである。 つまり、 $ \{\alpha\}=1$のMKSA単位系のほうがきれいになり、 $ \{\alpha\}=4\pi$のガウス単位系のほうが$ 4\pi$ が各所に現れるのに対応させている。

なお、式B.11$ Q$を一個除いた部分は電場 $ \boldsymbol{E}$、 式B.12 $ I'\Delta s$を一個除いた部分は磁場 $ \boldsymbol {B}$、 式B.14$ m$を一個除いた部分は磁場強度 $ \boldsymbol{H}$と呼ばれる。

単位電流を決定するような実験的な場合にはビオ・サバールの法則でなく、 これの線積分の結果であるアンペール力(Ampere force)の式を用いる。 これは、十分に長い平行に置かれた二線に電流が流れているときに働く、 単位長当たりの引力を示す。

$\displaystyle f=2\frac{\alpha\mu_0}{4\pi}\frac{I'_1I'_2}r$ (619)

この場合にも、$ I'$を一個除いた部分が $ \boldsymbol {B}$である。 いずれを使っても結論は変わらないが、 本書ではアンペールの力を使うこととする。

これら、 $ \{\alpha\}$ $ \{\varepsilon_0\}$$ \{\mu_0\}$ $ \{\gamma\}$の四つの量を決めると電磁気の単位系は完全に決定される。 いままで提案されてきた主な単位系について、 これらの数値がどうなっているかを歴史的経緯に沿って簡単に紹介しよう。

電磁単位系(electromagnetic units)
電磁気の単位を、最初に、長さ、重さ、 時間の力学系単位から絶対的に決めたのはウェーバー(Weber)[*]である。 磁気単位系とでも呼ぶべきであろうが、磁場関連の式には一つも係数を含まない、 つまり、 $ \{\alpha\}=4\pi$ $ \{\mu_0\}=1$ $ \{\gamma\}=1$ として、単位磁荷、単位電流を決定し、 それから電流連続の式から単位電荷を決定した。 これらを基本に、他の単位が決定される。 CGS-emuとも呼ばれ、以後の諸単位系の基本となった。

単位電荷は電流から勝手に決まってしまうので、そのときの力を1dyne とするにはクーロンの法則に1でない電気定数(electric constant) $ \{\varepsilon_0\}=1/\{c\}^2$が入る。 ただし、$ \{c\}$は、以後CGS単位系での光速値で約 $ 3\cdot 10^{10}$ を意味することとする。

静電単位系(electrostatic units)
電磁単位系の対になる単位系として、 マクスウェル(Maxwell)の提案した静電単位系、あるいはCGS-esuがある。 電気単位系と呼ぶべきかも知れないが、 これはまず一つも係数を含まない電荷のクーロンの法則から、つまり、 $ \{\alpha\}=4\pi$ $ \{\varepsilon_0\}=1$として、 単位電荷を決定し、それから電流連続の式から単位電流を決定した。

単位電流は電荷から勝手に決まってしまうので、そのときの力を1dyne とするにはビオ・サバールの法則に1でない磁気定数(magnetic constant) $ \{\mu_0\}=1/\{c\}^2$が入る。 ただし、 $ \{\gamma\}=1$とした。 また、この磁気定数を使って単位磁荷を決定する。

ガウス単位系(Gauss units)
その後、 ヘルムホルツ(Helmholtz)とヘルツ(Hertz)が磁気系量には電磁単位系、 電気系量には静電単位系を用いた単位系を制定した。 この結果、 $ \{\varepsilon_0\}=\{\mu_0\}=1$と簡単になるが、 逆に、電流連続の式から誘導された電流の作る力には $ \{\gamma\}=\{c\}$が入ってくる。

非対称(asymmetrical)な電磁単位系や静電単位系と異なり、 磁気系の単位と電気系の単位が対等となり、 磁荷と電荷、磁場と電場などの単位が等しくなり、対称(symmetrical)である。 このため$ \gamma$対称化定数(symmetrizing constant)と呼んでおこう。 理論的に便利なので、物理の世界で多用された。

ヘビサイドローレンツ単位系(Heaviside-Lorentz units)
これまでの単位系はいずれも 力の法則に$ 4\pi$が入らず、その結果、逆に発散積分、回転積分、 マクスウェル方程式といった微積分の式などには $ 4\pi$が入るようになる。 そこで、ヘビサイド(Heaviside)が、 $ \{\alpha\}=1$として、 力の法則の分母に$ 4\pi$を入れることにより、 微積分の式から$ 4\pi$を追い出した単位系を提唱した。 こうした手法を有理(rational)化という。 そこで$ \alpha$有理化定数(rationalizing constant)と呼んでおこう。 有理でない電磁単位系、静電単位系、 ガウス単位系はいずれも非有理(irrational)と呼ばれる。

$ \{\varepsilon_0\}=\{\mu_0\}=1$としたため、有理化の代償は、単位磁荷、 単位電流、単位電荷に現れ、従来の単位系の量と換算する際に $ \sqrt{4\pi}$ がたくさん入ることになる。 このため、従来の単位量との整合性がとれず、この提案は採用されなかったが、 理論的には便利であり、特に相対性理論などで多用されている。 以後、本書では、ヘビサイド単位系(Heaviside units)と略す。

MKSA単位系(MKSA units)
工業が発展するにつれ、 それまでの基本であったCGS単位系(CGS units)から、 実用的な世界のサイズにあったより大きな量であるm、kg、s を単位を基本とするMKS単位系(MKS units)への移行が起こった。 これに合わせ、電磁気の単位系の標準もMKS単位系へ変更する提案が、 ジオルジ(Giorgi)によってなされた。 提案の骨子は、 $ \{\alpha\}=1$の有理とするが、 従来の単位量との整合性を考慮し、有理の代償を電気定数、 磁気定数に求め、これらに$ 4\pi$を含めようというものである。 どちらかというと磁気定数$ \mu_0$ の値を簡単にした電磁単位系に近いものとしたため、 電磁単位系から培ってきた過去の単位量との整合性がよく、 戦後、多少の変更の上、国際標準単位系(International Standard units, SI units)として採用されるにいたった。

ヘビサイド単位系と同様に有理であるが、 $ \{\gamma\}=1$ で非対称である。 なお、この系の単位量は、CGS電磁単位系の10のべき乗とした BA単位系(British Association unit)と呼ばれるものを引き継いでいる。 これは単位電圧を電池の電圧程度($ 10^8$emu)とすると定めたため、 各単位量の換算の際のべき数は必ずしもすっきりしていない。

上記の観点から、主な単位系を分類すると、 B.1のようになる。

表 B.1: 各単位系の特徴と定数の値(定数の単位については後述する) ($ \{c\}$はCGS単位系での光速値約 $ 3\cdot 10^{10}$ $ \{c\}_$$ \text M$はMKS単位系での光速値約 $ 3\cdot 10^8$
特徴と定数 電磁 静電 Gauss Heaviside MKSA

CGS or MKS

CGS CGS CGS CGS MKS
$ \{\alpha\}$(非有理: $ 4\pi$ $ 4\pi$ $ 4\pi$ $ 4\pi$ 1 1
$ \{\gamma\}$(対称: $ \{c\}$ 1 1 $ \{c\}$ $ \{c\}$ 1
磁気定数$ \{\mu_0\}$ 1 $ 1/\{c\}^2$ 1 1 $ 4\pi10^{-7}$
電気定数 $ \{\varepsilon_0\}$ $ 1/\{c\}^2$ 1 1 1 $ 10^7/4\pi\{c\}_$$ \text M^2$


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日