各単位系の基本単位(base unit)の名称について述べよう。
MKSA単位系を構成する基本単位の単位名は、電流の単位(厳密には対称電流の単位)
のA
(Ampere)、磁束の単位Wb(Weber)、電荷の単位C(Coulomb)、
電圧の単位V(Volt)の四つである。
その他の単位系で単位の名称が比較的整備されているのは ガウス単位系ぐらいであり、電流Bi(Biot)、磁束Mx(Maxwell)、 電荷Fr(Franklin)、電圧statVなどの名称を用いている。 これに対し、電磁単位系では、すべての単位にCGS-emu と単位系の英文名称と同一でかつ物理量に依存しない単一名称を使う。 同様に静電単位系もCGS-esuしか使わない。 ヘビサイドローレンツ単位系では、単位の名称すらない。
このため、きわめて間違いが発生しやすいので、
本書では、すべての単位系の単位名称に対し、
MKSA単位系の単位名の後に単位系を示すサフィックスを付けて区別することにする。
MKSA単位系には何も付けないが、電磁単位系にはab(absolute)、静電単位系には
st(static)、ガウス単位系にはgs、ヘビサイドローレンツ単位系にはhl
なるサフィックスを付ける。
例えばMKSA単位系のCに対し、C
ab、C
st、
C
gs、C
hlなどと表す。
さらに、任意の単位系の単位を表すには、これらの代わりに「_」を用い、
C_ などとする。
なお、ガウス単位系での特別な単位名については、まとめの表で注記することとする。
繰り返しになるが、四つの定数
、
、
、
は、本章最初の節で示した重力加速度
のようなもので、
単位系に依存しない同じ量であることに着目してほしい。
同じ量であっても、単位系が異なると異なる数値を持っているだけである。
したがって、各単位系のすべての単位の大きさを定め、また、
単位系間の単位換算を決定する重要なものである。
これら定数の数値はすでに表B.1に示したが、
単位については以下の解説の中で説明を行う。
まず
であるが、この単位は本来無次元である。
しかし、無次元だからといって、何らかの単位を付けていないと、
単位系の換算を単位の次元だけを見て行おうという場合に、
著しく混乱を生じるので、unityを意味するU_
という単位を付けておく。
もちろんMKSA単位系以外の場合には、他の単位と同様、
各単位系のサフィックスを付ける。
ガウス単位系では
=4
U
gsであるが、
MKSA単位系では
=1
Uと記載する。
これにより、
=
U
gs=1Uと置いて、
二つの単位系の単位の関係を得ることが可能となる。
次に
の単位であるが、これは電気磁気単位系の比を与えるため
ratioを意味するR_ という単位にしておく。
実はR_ は非対称系では無次元の1であり、対称系では光速であるので、
例えばガウス単位系では
cm/s、MKSA系では無次元の1であるが、
単位系により異なる単位とすると、例えばA=C/m(誤り)
のような変な結論が導出されたりするので、あくまでもR_
のままで議論し、単位の換算率が確定してから最後に、R_
を無次元と見なしたり、速さの単位と見なしたりするほうが混乱が少ない。
これにより例えば
R
gs=1Rなどとなる。
本書では、前述のように、[
]、[Q]、[
]、[
]
の四つの単位を基本に、これらの関係を論じ、それに有理化定数
と対称化定数
の二つの単位U_ とR_
を加えた六つの単位を基本単位とする。
したがって、
と
の単位も、
これら基本単位から誘導されたものとなる。
基本単位の数が、いやに多いと思うだろうが、実際、MKSA単位系では
全単位系が前四つの量の単位の組み合わせで構成されていることから、
この考えを受け入れてほしい。
もちろん、これらすべてが独立ではなく、
他の単位から誘導できるものが少なくない。
この誘導については、その都度、説明を行う。
それでは、電磁単位系を例にして、単位系の構成の仕方について学ぼう。
最初なので、やや丁寧に説明する。
まず電磁単位系は非有理であるので
である。
また、[
]=U
abとしよう。
以下同様に、この単位系の単位には、すべてabのサフィックスを付ける。
| (633) |
磁気系の単位はビオ・サバールの法則や平行二線間の力の式B.17から、
決定していく。
これらの式は、量方程式なので、数値の関係を示すのみでなく、
単位の関係も示している。
これを巧みに利用しながら、決定していくのである。
まず電流と磁場の単位を次のように命名する。
| (634) | |||
| Wb |
(635) |
式B.17の右辺から
を一つ除いた部分が磁場であるので、
単位に関する次式が得られ、この式から
の単位が得られる。
| Wb |
(636) |
| (637) |
| (638) |
もう一つ重要な単位の関係式を誘導しよう。 電流と磁場の積が力/距離になることから、次式が得られる。
| dyne/cm=A |
(639) |
| (640) |
続いて、磁荷の単位[
]について議論しよう。
電流同士に働く力の式B.12と
磁荷と電流間に働く力の式B.13を比較してみると、
磁荷単位はおのずから決まってくる。
| (641) |
ところで、単位電流1A
abとはどのように定めるのであろうか。
それには再び、式B.17を利用する。
この式の
、
に1A
abを代入すると、
次のようになる。
![]() |
(642) |
次は電気系の単位について述べよう。
今度は、クーロンの法則の式B.30から、
すべてを同様な手順で決定していく。
まず電荷と電場の単位を次のように命名する。
| (643) | |||
| [
|
(644) |
また、式B.11の右辺から
を一つ除いた部分が電場であることを利用して、電気定数が決定できる。
| (645) |
| (646) |
同様に次式が成立する。
| dyne=C |
(647) |
| (648) |
1単位の電荷1C
abは式B.11の二つの電荷に
1C
abを代入することで決定できる。
| (649) |
以上をまとめて一般的な単位系に拡張すると、電流単位をA
_、
磁束単位をWb_ とするとき、
はWb_/A
_m_ と、
これらの比と長さ単位で表現できる。
また、これらの積はA
_Wb_=J_ とエネルギー単位になる。
ここで、m_ とJ_ はMKS単位系ではm、Jであるが、
CGS単位系ではcm、ergである。
また、電荷単位をC_ 、電圧単位をV_ とするとき、
の単位はC_/V_m_ と、
これらの商と長さ単位で表現できる。
また、これらの積はC_V_=J_
とエネルギー単位になる。
この最後の結論は単位間の換算を行う際、きわめて重要である。 もともと、読者の大部分は自ら実験を行って 単位電荷や単位電流を求めることはなく、 ある単位が他の単位系でいうとどれ程の値になるかに関心があるので、 ある意味では換算の手法さえ分かればよいと思われる。 以上の結果を利用すると、それが簡単にできるのである。 その具体的な方法については、次節に示す。
磁気単位と電気単位を結ぶのは
である。
マクスウェル方程式で、
の現れる
式と
式を見ると、
の単位は非対称系では無次元のようであり、
対称系では光速のようでもある。
つまり、数値が一つ定まらないばかりか、単位すら異なるように見える。
ここが電磁気学の単位系のもう一つの困難な点である。
については、再度議論する。
なお、
の単位R_ は、電流連続の式B.16から
C_/A
_s_ であることが分かる。
また、A
_Wb_=J_、C_V_=J_ の関係を利用すると、
Wb_/V_s_ としてもよい。
つまり、電気系の基本単位はC_=R_A
_s_ 、V_=Wb_/R_s_
と磁気系の基本単位から誘導できることが分かる。
これらの関係を表B.2に図示しておこう。
ここでも再び(A
_ or Wb_ )と(C_ or V_ )の二つを決定すれば、
後の二つはこれらから決定されることが分かる。