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トロートン・ノーブルのトルクのパラドックス

$ S$ 系の原点に静止した $ -Q$ の負電荷、 $ \left(a/\sqrt2,\,a/\sqrt2,\,0\right)$ に、$ Q$ の静止した正電荷があるとする。 これらの電荷は、これら二点を通る直線に沿って、互いに引き合っている。 正電荷の受ける力を $ \left(-F/\sqrt2,\,-F/\sqrt2,\,0\right)$ としよう。 負電荷の受ける力は、言うまでもなく、この符号反転したものとなる。

この力の四元成分を求めておこう。 まず空間成分は質点が静止しているので、これら三成分と一致する。 時間成分は $ u_tF_t=u_xF_x+u_yF_y+u_zF_z$ の関係を用いて計算することができ、四元速度が $ (0,0,0,c)$ より $ \left(-F/\sqrt2,\,-F/\sqrt2,\,0,\,0\right)$ となる。

これらを $ S$ 系に対し $ -v$ の速度で動いている $ S'$ 系で観測すると、正電荷の $ t$ における位置は $ \gamma=1/\sqrt{1-(v/c)^2}$ として、次のように変換される。

$\displaystyle \left(\gamma\left(\frac a{\sqrt2}+\frac vcct\right),\, \frac a{\sqrt2},\,0,\, \gamma\left(ct+\frac vc\frac a{\sqrt2}\right)\right)$ (D.11)

$ t'=\gamma\left(ct+va/\sqrt2c\right)=0$ のときの正電荷の位置を求めると、 $ \left(a/\sqrt2\gamma,\,a/\sqrt2,\,0\right)$ となる。

また、四元力は次のように変換される。

$\displaystyle \left(-\gamma\frac F{\sqrt2},\, -\frac F{\sqrt2},\,0,\, -\gamma\frac vc\frac F{\sqrt2}\right)$ (D.12)

古典的な力は、質点の速度による補正 $ \gamma$ を行って、 $ \left(-F/\sqrt2,\,-F/\sqrt2\gamma,\,0\right)$ となる。 位置の $ x,y$ 成分と力の成分は比例しておらず、 形式上、左回りのトルクを発生しているかに見える。

静止時の力として、電場による力を考えよう。

$\displaystyle F=\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0a^2}$ (D.13)

これを上に求めた運動中の古典的力に代入してみると

$\displaystyle -\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0a^2\sqrt2} \left(1,\,\frac1\gamma,\,0\right)$ (D.14)

原点に置かれた運動電荷は、 上記に示した電場と磁場を発生する。 電場は原点から放射状に出ているから、相対論に基づく $ x$ 方向の圧縮効果はあるものの、第二の電荷は原点の電荷からの反発力を感じる。 さらに、第二の電荷は、速度 $ V$ で運動しているから、 磁場の影響も受ける。 これによる力は $ y$ 方向を向く。 つまり、二点を通る直線と離れた方向の力を受ける。 原点の電荷は、その反作用を受けるので、 結果として二つの電荷は偶力を受けることになる。 S 系では、回転方向の力はなかったのに、S' 系では回転的な力が働く。 これは矛盾ではないかというものである。

S' 系で第二の電荷の受ける力は次のように与えられる。

$\displaystyle {\bf f'}=\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac {\left(x',\ y',\ 0\right)} {\sqrt{x'^2+y'^2}^3}$ (D.15)

これから、四元力は次のようになる。

$\displaystyle F_\mu'=\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac {\left(x',\ y',\ 0,\ 0\right)} {\sqrt{x'^2+y'^2}^3}$ (D.16)

これを S 系に変換する。


$\displaystyle F_\mu$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left(\Gamma\left(F_x'+\frac VcF_t'\right),\
F_y',\ F_z',\ \Gamma\left(F_t'+\frac VcF_x'\right)\right)$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}
\frac{\left(\Gamma x',\ y',\ 0,\ \G...
...a^2(x-Vt),\ y,\ 0,\ \Gamma^2(V/c)(x-Vt)\right)}
{\sqrt{\Gamma^2(x-Vt)^2+y^2}^3}$ (D.17)

-- トルクについても、同時性の影響を疑わなくてはいけない。 力と双極子の方向が本当に平行でないかをチェックするもっとも簡単な方法は、 双方が静止しているときの位置と力の関係を、 双極子が移動する座標系へ変換し、どうなるかを議論することである。 あるいは逆に、双極子が移動して見える座標系での位置と力を、 双極子が静止して見える座標系へ変換することである。 --

S' 系の原点と $ (x',y',0)$ の二点に、$ Q$ の静止電荷があるとする。 これらの電荷は、二点を通る直線に沿って、互いに反発している。 これを S 系で観測すると、原点に置かれた運動電荷は、 上記に示した電場と磁場を発生する。 電場は原点から放射状に出ているから、相対論に基づく $ x$ 方向の圧縮効果はあるものの、第二の電荷は原点の電荷からの反発力を感じる。 さらに、第二の電荷は、速度 $ V$ で運動しているから、 磁場の影響も受ける。 これによる力は $ y$ 方向を向く。 つまり、二点を通る直線と離れた方向の力を受ける。 原点の電荷は、その反作用を受けるので、 結果として二つの電荷は偶力を受けることになる。 S 系では、回転方向の力はなかったのに、S' 系では回転的な力が働く。 これは矛盾ではないかというものである。

S' 系で第二の電荷の受ける力は次のように与えられる。

$\displaystyle {\bf f'}=\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac {\left(x',\ y',\ 0\right)} {\sqrt{x'^2+y'^2}^3}$ (D.18)

これから、四元力は次のようになる。

$\displaystyle F_\mu'=\frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac {\left(x',\ y',\ 0,\ 0\right)} {\sqrt{x'^2+y'^2}^3}$ (D.19)

これを S 系に変換する。


$\displaystyle F_\mu$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left(\Gamma\left(F_x'+\frac VcF_t'\right),\
F_y',\ F_z',\ \Gamma\left(F_t'+\frac VcF_x'\right)\right)$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{Q^2}{4\pi\varepsilon_0}
\frac{\left(\Gamma x',\ y',\ 0,\ \G...
...a^2(x-Vt),\ y,\ 0,\ \Gamma^2(V/c)(x-Vt)\right)}
{\sqrt{\Gamma^2(x-Vt)^2+y^2}^3}$ (D.20)

第二の電荷の受ける Lorentz 力 $ {\bf f}$ を計算してみよう。

$\displaystyle {\bf f}=Q({\bf E}+{\bf V}\times{\bf B}) =\frac{Q^2}{4\pi\varepsil...
...frac {\left(\Gamma(x-Vt),\ y/\Gamma,\ 0\right)} {\sqrt{\Gamma^2(x-Vt)^2+y^2}^3}$ (D.21)

今、第二の電荷の S 系での点を通って、f の方向に引いた直線が $ x$ 軸と交わる交点 $ (x_0,0)$ を求めてみよう。

$\displaystyle x_0=x-\Gamma^2(x-Vt) \\ $ (D.22)


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Yoichi OKABE 2008-03-29