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ラグランジュの未定係数法

本節では束縛力の大きさを簡単に求める方法を示そう。ラグランジュ・ ダランベールの仮想変位の原理からスタートする。

$\displaystyle \sum_i^n(m_i\ddot x_i-F_i)\,\delta x_i=0$ (693)

ここで、 $ \delta x_i$$ c=N-n$個の束縛条件にしたがう変位とした場合、 この式は、自由度$ n$ $ \delta x_i$の変位に対し停留する。

$ c$個の束縛条件が次のように陰関数で与えられているとしよう。

$\displaystyle G_k(x_1,\cdots,x_N)=0 \hspace{1cm} (k=1,\cdots,c)$ (694)

これから $ \delta x_i$の変位に対する条件が得られる。

$\displaystyle \sum_i^N\D{G_k}{x_i}\,\delta x_i =\sum_i^Ng_{ki}\,\delta x_i=0 \hspace{1cm} (k=1,\cdots,c)$ (695)

ここで $ g_{ki}=\partial G_k/x_i$と再定義してある。

ここでラグランジュの未定係数法と呼ばれる手法を利用しよう。 まずその手法について述べると、 まずこれらの束縛条件の微分に任意定数 $ \lambda_k: (k=1,\cdots,c)$を掛け、 それらを式C.19から引いた式を作る。

$\displaystyle \sum_i^N\left[m_i\ddot x_i-F_i-\sum_k^c\lambda_kg_{ki}\right] \,\delta x_i=0$ (696)

このように新たに$ c$個の未知数を導入することにより、 変位をまったく自由にする手法がラグランジュの未定係数法(Lagrange method of undetermined multiplier)である。

ラグランジュの未定係数法は次のように表現できる。 $ f_i=m_i\ddot x_i-F_i$と置こう。 すると、$ N$次元空間のベクトルで表現した場合、 証明すべき命題は次のようになる。

$ c$個の束縛条件の$ i$成分を$ g_{ki}$とすると、 束縛条件はベクトル $ \boldsymbol{g}_k$ $ \delta\boldsymbol{x}$の内積が0、 つまりこれらが直交していることを示す。 このとき、たまたま $ \boldsymbol{f}$ $ \delta\boldsymbol{x}$が直交していれば、 $ \boldsymbol{f}$ $ \boldsymbol{g}_k$の線形結合で与えられるというものである。

例えば、$ N=3$で、束縛条件が$ c=2$とすると、最初の束縛条件で、 $ \delta\boldsymbol{x}$ $ \boldsymbol{g}_1$ と垂直な面上になければならなくなる。 次の束縛条件で、 $ \boldsymbol{g}_2$と垂直な別の面上になければならなくなる。 この結果、 $ \delta\boldsymbol{x}$ はこれら二つの面の交線上になければならなくなる。 さて、ベクトル $ \boldsymbol{f}$がこの交線に垂直ならば、 $ \boldsymbol{f}$ $ \boldsymbol{g}_1$ $ \boldsymbol{g}_2$の作る面内に入り、 これらの線形結合で与えられるということになる。

証明は次のようになる。 $ c$個の束縛条件が独立であれば、$ g_{ki}$ を行列で表したとき、そのrankは$ c$となる。 このとき、列を適宜入れ替えて、 左の$ c\times c$の部分行列の行列式が0にならないようにしておく。 束縛条件の式から $ \delta x_1,\cdots,\delta x_c$の関わる部分と $ \delta x_{c+1},\cdots,\delta x_n$の関わる部分とに分ける。

$\displaystyle \sum_{i=1}^cg_{ki}\delta x_i=-\sum_{i=1}^ng_{ki}\delta x_i$ (697)

左辺の行列の行列式は0でないから、 $ \delta x_1,\cdots,\delta x_c$ $ \delta x_{c+1},\cdots,\delta x_n$ の一次結合で表されることになる。 これは、$ n$次元システムで、$ c$個の束縛があるため、$ n-c$ の自由度があることに対応している。 つまり、 $ \delta x_{c+1},\cdots,\delta x_n$ は勝手に選ぶことができ、残りはこれらから決定される。

さて、束縛条件を満たす $ \delta x_i$であれば、次式は必ず成立する。

$\displaystyle \sum_{i=1}^n\left(f_i-\sum_k^n\lambda_kg_{ki}\right)\delta x_i=0$ (698)

ここで、$ \lambda_k$を最初の$ c$番の要素だけを利用し、 次式を満たすように決めよう。

$\displaystyle f_i-\sum_k^c\lambda_kg_{ki}=0 \hspace{1in} (i=1,\cdots,c)$ (699)

これを前式に代入すると、次式が成立する。

$\displaystyle \sum_{i=c+1}^n\left(f_i-\sum_k^n\lambda_kg_{ki}\right)\delta x_i=0$ (700)

ここで、 $ \delta x_{c+1},\cdots,\delta x_n$は任意に選べるので、

$\displaystyle f_i-\sum_k^n\lambda_kg_{ki}=0 \hspace{1in} (i=c+1,\cdots,n)$ (701)

が成立する。 これと $ \delta x_1,\cdots,\delta x_c$に成立した式を合わせると、 次式が導かれる。

$\displaystyle f_i=\sum_k^n\lambda_kg_{ki} \hspace{1in} (i=1,\cdots,n)$ (702)


つまり、ダランベールの仮想変位の原理を示す$ n$ 個の自由度を持つ式と同じ式に、 $ c$の束縛数の未知数$ \lambda_k$を係数とする式を加えたことにより、 $ N$個の $ \delta x_i$をまったく自由に変位できることになるのである。 すると、前節と同じ手続きで次の式を誘導することができる。

$\displaystyle \sum_i^N\left[\frac d{dt}\left(\D T{\dot x_i}\right) -\D{T}{x_i}-F_i-\sum_k^c\lambda_kg_{ki}\right]\delta x_i=0$ (703)

これから、保存場の場合、ラグランジュの運動方程式は次のようになる。

$\displaystyle \frac d{dt}\left(\D L{\ddot x_i}\right)-\D L{x_i}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle 0
\hspace{1cm} (i=1,\cdots,N)$  
$\displaystyle \D L{\lambda_k}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle 0 \hspace{1cm} (k=1,\cdots,c)$ (704)

ただしラグランジアン$ L$は次式で与えられる。

$\displaystyle L=T(x,\dot x)-U(x)+\sum_k^c\lambda_kG_k(x)$ (705)

また束縛力$ R_i$は次のようになる。

$\displaystyle R_i=\sum_k^c\lambda_kg_{ki} =\sum_k\lambda_k\D{G_k}{x_i} \hspace{1cm} (k=1,\cdots,n)$ (706)

本節で示した議論は、デカルト座標系$ x_i$を基本としたが、 一般座標系$ q_j$で示した運動に、さらなる束縛がある場合でも、 まったく同じ議論が成立する。 その場合、これらの式の$ x_i$$ q_j$で置き換えた式が成立する。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日