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平行平板キャパシタに挿入された誘電体に働く力

$ \varepsilon\rightarrow\infty$の場合を考える。 この場合には、誘電体中の電場は限りなく弱くなるので、 金属に差し替えてもほとんど同じである。 そこで、誘電体の代わりの金属をやや薄くし、極板との間にギャップを空けてみよう。

図 E.1: キャパシタの端では電場が乱れている。
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(135,73)
\put(0,0){\s...
...ut(132.4,33.9){\makebox(0,0)[b]{{\footnotesize$d$}}}
\end{picture}
\end{figure}

まず、ほとんどのところは、極板に垂直な電場が発生するが、 端だけはこれが乱れる。 図 E.1に示す電気力線が、 挿入された金属の先端部分と金属が外にはみ出す部分で曲がっているところである。 先端部分では、挿入された金属の先端に、 明らかに横向きでかつ金属を引き込む電場が働いている。 一方、極板側の電場は必ず極板に垂直で横向きの力にはなっていない。 逆に金属が外部にはみ出す部分では、金属と極板の位置関係が逆なだけで、 ほぼ同じ図となっており、今度は極板は横向きの力を受けるが、 金属は横向きの力を受けないという結果が得られる。

この力の大きさをおよそ見積もることができる。 先端部分のちょっと内側では等電位面はほぼ平行で等間隔であるが、 外側ではほぼ放射状に拡がる。 先端に対応する極板の位置から$ r$離れたところの円を考えると、 等電位面はほぼ等間隔でこの円を横切ることになる。 そこで金属の端面での電場は $ E=V/2(\pi r/2)=V/\pi r$となる。 ここで、極板間の電位差を$ V$、その半分がギャップにかかっており、 それを1/4円周で割ることで、電場を求めている。 端面に働く力は $ \varepsilon_0E^2/2=\varepsilon_0V^2/2\pi^2r^2$を、 $ r=a$から$ \infty$まで積分することにより得られるので、 単位奥行当たりの力は $ F=\varepsilon_0V^2/2\pi^2a=\varepsilon_0Q^2/2\pi^2C^2a$となる。

一方、仮想変位の原理から求めた力は $ F=(Q^2/2)d(1/C)/dx=\varepsilon_0Q^2/2C^2a$であるから、 $ \pi^2$、つまり十倍程度大きい。 これは大きな差と感じる人も多いだろうが、 実際の等電位面は金属の突端でもっと金属寄りを通過し、その結果、 金属突端付近で電場はかなり大きくなるので、十分理解できる誤差である。 いずれにせよ、挿入された金属の先端部で極板のすぐ近傍にのみ横向きに 引っ張る力が存在することが確認できたのである。

なお、挿入金属には先端付近に横向きの力がかかっているが、 その付近の極板には面垂直の力はあるものの、横向きの力はかかっていない。 作用反作用の法則はどうなっているのだろうと疑問に感じた人がいるかも知れない。 実は、極板には、導体が外へ出る付近で、横向きの力がかかっている。

これは、次のように理解できる。 挿入金属の突端にかかる力の反作用は、まず極板内のその辺に存在する電荷に働く。 この辺りの電荷が力を受けると、電荷は移動を開始するが、その結果、 極板内の電荷密度に変化が起こる。 これら移動や密度変化はいずれ平衡に達するが、 その時点で突端付近に存在した電荷の受けた横向きの力は、 他の電荷の力に移動していき、結局、極板縁の電荷にまで伝わる。 ということで、あたかも剛体に力がかかったときのように、 力は電荷全体に及び、その結果、とんでもない電荷に反作用が働くのである。

次にギャップおよびその周辺の空間に働くマクスウェル応力を見てみよう。 この空間の縁はすべて導体であり、電場は空間に垂直であるので、 $ \varepsilon_0E^2/2$なる引力がかかることになる。 この引力はギャップ内では、空間を上下に引っ張る形になっているが、 より大きな力が金属突端付近と極板縁にかかっている。 図 E.1の空間部分に着目してみると、 空間にかかる力はバランスしている。 また導体には、この反作用である引力がかかることになる。 このように静的な場合のマクスウェル応力とは、結局、 導体側の電荷の剛体的集合運動の結果を反映し、 一見予想もつかないような形となることが理解できよう。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日