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: ファインマンの角運動量のパラドックス : パラドックスの解答 : 磁場力の消失   目次   索引

ファインマンの作用反作用のパラドックス

図 E.2に示すような電荷シートの場合であるが、 #1の速度が余り速くなく相対論の効果を考える必要のない場合を扱おう。 この場合、両電荷の間の電場は、両電荷の作る電場が相殺し0となる。 この領域外は、相殺が起きず加算的になり、 $ E_x=\sigma/\varepsilon_0$となる。 $ \sigma$は電荷面密度である。 また、磁場は#2が作るものだけとなり、#2シートの$ -x$側で $ B_z=
\mu_0\sigma v_2$$ x$側でその符号反転したものとなる。 このため、 $ \boldsymbol{g}$は両シートの外部だけに存在し、 単位体積当りの運動量は $ g_y=\mu_0\sigma^2v_2$となる。 #1のシートの移動に伴い、外部領域が$ v_1$の速度で増加していくので、 単位$ yz$面積当りの運動量の増加率は $ dg_y/dt=\mu_0\sigma^2v_1v_2$となる。

図 E.2: 2枚のシート状電荷が互いに及ぼしあう力
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(87,62)
\put(0,0){\sp...
...\makebox(0,0)[b]{{\footnotesize$\boldsymbol{F}_1$}}}
\end{picture}
\end{figure}

さて、電荷シートが電場から受ける力は、互いに斥力となるが、その大きさは等しい。 磁場からは#1のシートだけが力を受け、その単位$ yz$面当りの値は $ F_y=-\sigma
B_zv_1=-\mu_0\sigma^2v_1v_2$となる。 これは明かに運動量の増加率と同じ値で、方向が反対であるので、 力と運動量増加率との総和が0であることが示される。

点電荷の場合も、概要を示しておこう。 電磁場の運動量 $ \boldsymbol{g}$を構成する各項のうち交差項のみを考える。 空間の各点で、電場 $ \boldsymbol{E}_i$から磁場 $ \boldsymbol{B}_j$に向う右ネジの方向を丹念に調べていくことになる。

まず、 $ \boldsymbol{E}_1\times\boldsymbol{B}_2$を考えよう。 #1付近では、$ z$方向を軸として右ネジに循環するような形となり、 両電荷の間では$ -y$方向を向く。 #2を通る$ yz$面付近に近づくと、徐々に0になり、 そこで逆転して$ y$方向となる。 #1が#2に近寄っていく際、もっとも大きな電磁場の運動量の変化は #1の場所で発生する。 ここでは$ -y$方向の運動量が#1の移動に伴なって反転するからである。 このため、 $ d\boldsymbol{g}/dt$$ y$方向を向く。

次に $ \boldsymbol{E}_2\times\boldsymbol{B}_1$を考えよう。 これは明かに$ x$軸対称となる。 #1付近や#2付近では大きな値になるが、概ね、#2を囲む球面に沿って、 $ -x$方向から$ x$方向を向くベクトルになる。 この場合には、両電荷が近寄っていく際、運動量の反転のような現象は起きず、 大きな運動量の変化はないであろう。

これら電磁場の運動量の増加率に両電荷に働く力を加えたものが0になるはずである。 詳細の検討はかなりの仕事になるので省くが、 少なくとも運動量増加率の大きな成分である$ y$方向の増加率は #1に働く$ -y$方向の力で相殺されそうであるということで納得してほしい。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日