next up previous contents index
Next: 動的電磁場 Up: 電磁場の基本方程式 Previous: 静磁場の性質   Contents   Index

電流の作る磁場

極めて微小な電流ループの作る磁場を、きちんと計算しておこう。

3.2節に示したように、微小電流ループと微小磁石は等価である。 これを利用して、まず微小磁石の作る磁場を求めよう。 微小磁石は、長さ$ l'$、断面積$ \Delta S$の細長い形状とし、 両端に正負の磁荷$ Q_m$$ -Q_m$を有しているとしよう。 l'は十分小さなベクトルし、 負磁荷および正磁荷の位置ベクトルをr'r'+l'とする。 なお、源側の座標変数には「'」を付けた。 これら磁荷はクーロン場を作るので、磁場は次式のようになる。

$\displaystyle \emph B=\frac{Q_m}{4\pi}\left(\frac{\emph r-\emph{r'}-\emph{l'}} ...
...rt\emph r-\emph{r'}\vert^3}\right) +Q_m\frac{\emph{l'}}{l'}b(\emph r-\emph{r'})$ (3.34)

この右辺第1項は正磁荷から出る放射状の磁場、第2項は負磁荷に入る放射状の磁場、 第3項は、負磁荷から正磁荷に向う一様磁場である。 この一様磁場を表すのに、関数 $ b(\emph r-\emph{r'})$ と記載した関数を使っているが、 この関数は、負磁荷から正磁荷までを繋ぐ細い領域にだけ、 一定値 $ Q_m/\Delta S'$を持っているとする。

ここで、微小磁石を十分小さくする、つまり$ l'$$ \Delta S'$を共に十分小さくした極限を考えよう。 右辺の前の2項は、r'による微分の形をしている。 ただし、ベクトルを変数とするベクトル関数の微分であるので、 ちょっと工夫が必要であり、次式を利用して変形する。

$\displaystyle \emph f(\emph{r'}+\emph{l'})-\emph f(\emph{r'})$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \emph i
(f_x(\emph{r'}+\emph{l'})-\emph f_x(\emph{r'}))+\cdots$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \emph i\left(\D{f_x}{x'}l'_x+\D{f_x}{y'}l'_y+\cdots\right)+\cdots$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \emph i(\emph{l'}\cdot\mathop{\emph ▽}\nolimits \emph')f_x+\cdots
=(\emph{l'}\cdot\mathop{\emph ▽}\nolimits \emph')\emph f$ (3.35)

$ \mathop{\emph ▽}\nolimits $に「'」が付いているのは、r'を微分することを指す。

第3項については、デルタ関数で表すことができ、 関数$ b$に体積を掛けたものが$ Q_ml'$なることから、 その $ \emph{l'}Q_m$倍に収束し、以下の結果が得られる。

$\displaystyle \emph B=\frac{Q_m}{4\pi}(\emph{l'}\cdot\mathop{\emph ▽}\nolimits...
...emph{r'}}{\vert\emph r-\emph{r'}\vert^3} +Q_m\emph{l'}\delta(\emph r-\emph{r'})$ (3.36)

ここで、微小磁石を微小電流ループに置き換えよう。 式3.12から $ Q_m=\mu_0K\Delta S'=\mu_0I\Delta S'/l'$ であるから、上式は次にように書き換えられる。

$\displaystyle \emph B=\frac{\mu_0I}{4\pi}\left[(\emph{Δ\-S'}\cdot\mathop{\emph...
...mph'\cdot \frac{\emph r-\emph{r'}}{\vert\emph r-\emph{r'}\vert^3}\right)\right]$ (3.37)

なお、デルタ関数の替わりに、クーロン場のdivに置き換えてある。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits (\emph A\cdot\emph ...
...olimits \times\emph B) +\emph B\times(\mathop{\emph ▽}\nolimits \times\emph A)$    

の公式とl'が一定であること、かつ、 $ \mathop{\emph ▽}\nolimits \emph'\times
[(\emph r-\emph{r'})/\vert\emph r-\emph{r'}\vert^3]=\emph0$を利用すると、 次のように変形できる。

$\displaystyle \emph B=-\frac{\mu_0I}{4\pi} ($ΔS'$\displaystyle \times\mathop{\emph ▽}\nolimits \emph')\times \frac{\emph r-\emph{r'}}{\vert\emph r-\emph{r'}\vert^3}$ (3.38)

ここで得られた図 3.38図 3.34の前2項だけには、 $ \emph l\delta(\emph r-\emph{r'})$の差しかないが、 それがどれほどの差であるかを議論しておこう。 どちらの式も、微分を実行してみると、次式のように、同じ結果が得られる。 ただし、$ \emph{r'}$を原点、 $ Q_m\vert\emph{l'}\vert/4\pi
=\mu_0I\vert\emph{Δ\-S'}\vert/4\pi=\emph k$とする。

$\displaystyle \emph B=\frac{\emph k}{r^3}-\frac{3(\emph r\cdot\emph k)\emph r}{r^5}$ (3.39)

差が原点にあるデルタ関数だけなので、当り前と言えば、当り前の結果である。 問題は原点付近における差であるが、 デルタ関数というのは限りなく小さい領域でしか定義されていないので、 その差を視覚的に示すのは容易ではない。 しかし、前者は近接した二点を湧き出し点と吸い込み点とする場を構成し、 後者はこうした点を持たないループ状の場であることがわかる。

前にも述べたように、 任意の電流ループは、そのループの囲む曲面を分割することにより、 複数の微小電流ループの集合に置き換えることが可能である。 この際、分割された各要素には、 大きな電流ループに流れているのと同じ電流が流れているものとする。

この結果、任意の電流ループの作る磁場は以下のようになる。

$\displaystyle \emph B=-\frac{\mu_0I}{4\pi}\int_S(\emph{dS'}\times\mathop{\emph ...
...\emph{dr'}\times \frac{\emph r-\emph{r'}}{\vert\emph r-\emph{r'}\vert^3} %3.10
$ (3.40)

この式は、ビオ・サバールの法則(Biot-Savart law)となっている。 このように、微小電流ループの作る磁場からも、 ビオ・サバールの法則を導くことができるのである。


next up previous contents index
Next: 動的電磁場 Up: 電磁場の基本方程式 Previous: 静磁場の性質   Contents   Index
Yoichi OKABE 2008-03-29