いままでは面積分について述べて来たが、線積分についても同様な議論が可能である。
以下のように、ほとんどの議論が面積分と同じように進行する。
まず、線積分とは次のような概念である。
図 2.9のように、ある閉曲線に沿って回ることを考える。
その上を微小な区間で分割する。
その微小区間の長さを大きさとし、
回る方向と同じ向きを向いたベクトルを
で表す。
これに適当な重み、例えば場所で値が決まる関数のような重みを付け、
合計したものが線積分である。
実際に、重みを一定にして線積分を行うと、
その結果は閉曲線の形状によらずに
となる。
この証明も面積分のときと同じようにすることができる。 まず、この結果があるベクトルになったとしよう。 両辺に
方向の単位ベクトル
をスカラー的に掛ける。 まず、右辺は
となる。 一方、左辺の
は
を
に平行なある直線に射影した大きさになる。 閉曲線状で位置が移動していくと、 射影された点はこの直線上を一往復することになる。 つまり二重に射影されるが、片方の射影結果は正になるのに対し、 もう片方の射影結果は負となり、結果として全合計結果は0となる。 つまり右辺は
となる。
もう一つ今後の議論のために重要な線積分がある。
を重みとした線積分であるが、これを考える場合は、
ほとんど平面と見なせるような微小な領域Sを囲んだ閉曲線とする。
結果は閉曲線の形状によらず、
閉曲線の囲む領域の面積のベクトルを微小ということで、
と記載するとき、以下のように与えられる。
これを証明するには、まず、閉曲線に囲まれた領域を、 図 2.10のように面と垂直な多数の面で小片に分割する。
各小片ごとの線積分は、 対応する二つの積分要素の和とする。 この値を求めるのであるが、各細い小片を囲む線積分全体を求めると、 最初に述べたように
となるはずである。
ここで、は
番目の小片の左側の切片の長さである。 また
は右側の切片の向く方向の単位ベクトル、 つまり
方向の単位ベクトルである。 この関係を使い、各線積分を切片長の差に置き換えることができる。 さらに変形すると証明が完了する。
これらを利用すると、この微小領域で僅かに変動しているスカラー場に対して、 次式が成立することが証明できる。
証明は、次式を代入することで、容易にできる。
さらに以上の結果を利用して大きな曲面状の領域を囲む閉曲線に対して、 次の式を誘導することができる。
例えば、
とすると、次式が得られる。
この式の誘導にあたって、まず大きな曲面を、 図 2.11に見られるように小さな領域に分割する。 各領域では上の関係が成立するが、これを寄せ集めると、左辺の合計で、 隣接する小領域の間の線積分は互いに打ち消し合うから、結局、 縁の閉曲線の積分だけが生き残る。 一方右辺は、面積分になるので、上式が成立することとなる。
同様に線積分要素とベクトル場の内積から、次の式が導かれる。
この内積線積分の定理は、回転の程度を線積分でも表現できることを示している。 地球の赤道のような閉曲線を考えよう。 この閉曲線に沿って、ベクトル場がちょうど偏西風のように回っているとすると、 このベクトル場をはるかかなたから見ると、 明らかに西から東への渦状の流れを構成している。 もっと複雑な場合にも、次のような計算をすれば、 閉曲線全体で合計した渦の強さを求めることができよう。 まず閉曲線に右回転か左回転かの向きを決める。 次にその上のある微小線要素を考えよう。 そこで線要素の接線ベクトルとベクトル場の内積をとると、 その値が正ならば閉曲線方向の回転に寄与し、 負ならば逆方向の回転に寄与することが分かる。 したがって、これに線要素の長さの重みを付けて合計すれば、 閉曲線に沿った渦の強さが得られる。 不幸にして内積があちこちを向いて全体として合計すると0になるときは、 渦はなかったというふうに考える。
このストークスの定理は、
ポテンシャルという概念とも深く関わっている。
任意の点Oを原点として、そこから別の任意の点Pまで、
力
を線積分していった値が経路に寄らず一定になるとき、
その積分結果の符号反転したものをポテンシャル(potential)という。
また、このような力を
を保存力(conservative force)、ポテンシャルを保存場(conservative field)という。
このようなときに、図 2.12に示すように、
点Oから点Pまでの経路をC
、別の経路を
として、
点O→C
→点A→C
→点Oなるループ状の経路をCとすると、
次の式が得られる。
| (79) |
ここで、C
に沿う点Pから点Oまでの線積分を、
逆向きのC
に沿う点Oから点Pまでの線積分に置き換える際、
符号が反転することを利用している。
この結果から、どのような閉曲線に沿って回転積分しても、その結果が0のとき、
そのベクトルは保存的であるといえる。
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が原点からの積分経路によらず、
一義的に与えられるということは、
任意の点のポテンシャルが一義に決定されることを示している。
また次式が成立する。
| (80) |
この証明は、点Pの座標をとして、 その近傍のポテンシャルを
のテーラー展開を利用して表すと、 次のように書けるはずである。
| (81) |
一方、次式が成立する。
| (82) |
これらを比較することにより、証明が完了する。
つまり、ポテンシャル
が与えられていると、
それから力
を求めることもできる。
ここで、ストークスの定理と勾配(gradient)の概念が、
繋がりを持つことが理解できよう。
ちなみに、勾配の節でも述べたように、
で与えられるクーロン場は保存力であり、
そのポテンシャルは
となる。
電流の作る磁場の渦は、回転場であるので、内積線積分は0とならない。 電流路と鎖交するどんな閉曲線に対しても、 いつも一定の内積線積分結果を与えるというのが、 アンペールの法則(Ampere law)である。
さらに線積分要素とベクトル場の外積から、次の式が導かれる。
第二式は、例のごとくベクトル演算子
を単純なベクトルのように見なし、
形式的に外積を二回とった形となることを示している。
ただし、演算子なので、順番を変えてはいけない。
最後の式は、第二式のすべての項を成分ごとに分解し、それを再合成すると得られる。
これを大きな曲面を囲む閉曲線に拡張すると、次式が得られる。
この式はベクトル場のストークスの外積定理(Stokes outer product theorem of vector field)とでも呼ぶべきものであるが、 以後は単にストークスの外積定理(Stokes outer product theorem)といおう。