電磁気に影響を与える物質とは、導体、誘電体、磁性体の3種類である。
導体(conductor)とは電場を与えると電流の流れる材料である。
電子の速度はローレンツ力に比例すると考えられるが、
であることを考慮すると、
が得られる。
通常、金属中では
は極めて大きいため、第二項はほとんど効かない。
そこで次のように近似できる。
は導電率(conductivity)とよばれる。
ただし、半導体などの材料では
が小さく、第二項は無視できない。
誘電体(dielectric material)とは電気的に中性の材料であるが、電場をかけると、内部の
電荷がわずかに移動することにより、全体では相変わらず中性であるが、
部分的には電荷が発生するような材料である。
このような材料は正電荷と負電荷を組にして考えるとよい。
電場のない場合は、正電荷と負電荷が各点で正確に重なっており、
電荷がまったく見えないが、電場をかけると、これらが各点でわずかに
分離すると理解する。
こうした現象を電気分極(electric palorization)と言う。
各点で電荷の移動方向の方向を持ち、その付近の単位面積あたり通過した
電荷量を長さとするようなベクトルを電気分極ベクトル(electric polarization vector)
と呼ぶ。
この移動の結果、ある閉曲面内に発生する電荷は次のようになる。
これから微分形が得られる。
われわれが意識して置いた電荷を自由電荷(free charge)
、電気分極の
結果現われる電荷を分極電荷(polarization charge)
と呼ぶが、
その合計である全電荷(all charge)
が、
クーロンの法則に基づく電場を発生する。
磁性体(magnetic materials)とはわれわれが意識して置いた自由電流(free current)以外に、
材料中に無数の微小電流ループのあるような材料である。
こうした内部電流の現われることを磁化(magnetization)と呼ぶ。
磁化が永久に存在するときは磁石になり、
外部磁場によって誘起されるときには常磁性体になる。
この無数の微小電流ループを磁化電流(magnetization current)という。
各点で微小電流ループの法線方向を向き、その付近の単位長をとったとき、
それに鎖交する電流値を長さとするようなベクトルを磁化ベクトル(magnetization vector)
と呼ぶ。
比較的長い閉曲線を考え、それに鎖交する全電流を考えると、
自由電流
以外に次の磁化電流
が鎖交する。
これから微分形が得られる。
さらに、分極の際に起こる電荷の移動も瞬時的な分極電流(polarization current)
を流す。
これらの合計である全電流(all current)
が、アンペールの法則に基づく磁場を発生する。
まとめて書くと、物質が存在するときのマクスウェルの方程式が得られる。
これらの方程式を解くのはそれほど簡単なものではない。
それは、分極
や磁化
が
や
に対し、どのように変化するかが一般的には
簡単ではないからである。
多くの材料では分極や磁化がほぼ線形に変化するが、そのような
線形材料では適宜比例係数を導入して処理するため、計算は比較的簡単になる。
一方、永久磁石のようなものは、磁場にかかわらず、磁化がほぼ一定になる。
このようなものは別の扱いが必要となる。
また、材料によっては、大きなヒシテリシスが現われる。
そうなると、その扱いはかなり難しくなり、多くの場合、近似的扱いが
使われる。
上記の方程式を見ると、左右に
や
がちらばっている。
これらをまとめる綺麗な方程式群が得られそうである。
事実、二つのベクトル場
と
を
ここで新しく導入された二つのベクトル場
は電束密度(electric flux density)、
は磁場強度(magnetic strength)と呼ぶ。
あるいは、単純に磁場と呼ぶこともある。
も磁場と呼ぶので、混乱が生じるが、そのような場合には、
は厳密には磁束密度(magnetic flux density)と呼ぶ。
これらの名称は、かって
と
を電磁気学の
中心とし、その結果、
と
を対応させて電磁気学を
構築したときの名残である。
式は一見美しくなったが、物理的には単なる変数の置き換えで、
元のマクスウェルの方程式と何ら変っていない。
なお、物質が線形であるときには、
、
と、誘電率(permittivity)、
透磁率(permeability)と呼ばれる比例係数を利用して、
E、Bに置き換えることができる。
このときでも、物質のあるところとないところがあると、解析は簡単ではない。
式3.60を利用して、 3.58の物質のあるときの方程式のを
で書き換えてみよう。
![]() |
|||
![]() |
|||
| (3.62) |
ただし、右辺は次のように定義する。
![]() |
|||
![]() |
|||
| (3.63) |
このうち、を磁流(magnetic current)、
を電流、
を磁荷(magnetic charge)と呼ぶ。 最後の磁荷の式は、分極 Pと分極電荷
を結び付ける式と大変よい対応がとれている。 なお、この式の電流は我々の使う物質中の電流と、 磁化電流だけ異なることに注意が必要である。
電磁気学を作りあげた当初は、電流よりも磁荷が重要であったこと、 さらに式の対称性のよさから、このE-H対応と呼ばれる定式化が主流であった。 現在は、磁気現象の成因はすべて電流であるとされていること、 さらに、前節で述べた磁石が受ける力に問題があること、 相対論的に問題があることなどから、 本書で採用されたE-B対応の定式化が主流である。