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スカラーポテンシャル

静電場の基本方程式は、マクスウェル方程式(Maxwell equations)の最初の二本の式、 つまり、divが電荷密度に比例するという式と、rotが0になるという式である。 このうち、後者のrotが0になるということは、任意の閉曲線に沿った 静電場の線積分が0となることを意味している。 閉曲線上に二点をとり、積分路を二分してみると、それぞれの積分が互いに 符号の反転した同じ値になることがわかる。 片側の積分路を移動してみても、この事態は変わらず、しかも固定された積分は 変化しないことから、その積分結果は前の結果と等しくなる。 以上の結果、二点間を結ぶ曲線に沿う静電場の線積分は、曲線の形によらず 一定になる。 空間のある一点を基準として、各点までの静電場Eの線積分を 実行し、それを符号反転したものを、静電ポテンシャル(electro-static potential)という。

$\displaystyle \phi=-\int_C\emph{dr}\cdot\emph E$ (4.1)

静電ポテンシャル$ \phi$は場所が決まると値が決まることから、 第2章で述べたスカラー場の一つであり、 スカラーポテンシャル(scalar potential)ともいう。 つぎの節でベクトルポテンシャルという概念を導入するが、それとの対比で、 以後、スカラーポテンシャルと呼ぶことにする。 上式を微小距離に対し適用すると、次式のようになる。

$\displaystyle d\phi=-(E_x\,dx+E_y\,dy+E_z\,dz)$ (4.2)

これと$ \phi$の全微分の式を比較することにより、$ E_x$などが得られる。

$\displaystyle E_x=-\D\phi x,\quad E_y=-\D\phi y,\quad E_z=-\D\phi z$ (4.3)

これは、スカラー場の勾配の概念gradそのものである。

$\displaystyle \emph E=-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi$ (4.4)

これらの式は、$ \phi$の分布からEの分布を求める際、有用である。

両辺のrotをとると、式 4.3を利用して、次式が得られる。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph E=0$ (4.5)

つまり、スカラーポテンシャル$ \phi$を用いて表わされたE が回転のない場になることが理解できよう。 もともとスカラーポテンシャルは、このようにマクスウェル方程式の第 2 式を 自動的に満たすべく導入された概念である。

スカラーポテンシャル$ \phi$で表わされた電場Eを、 電場の発散の式へ代入しよう。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits (-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi)=\frac1{\varepsilon_0}\rho$ (4.6)

div gradを計算すると、結局、次式が得られる。

$\displaystyle \D{^2\phi}{x^2}+\D{^2\phi}{y^2}+\D{^2\phi}{z^2}=\mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\phi =-\frac1{\varepsilon_0}\rho$ (4.7)

この式は、ポアソンの式(Poisson equation)と呼ばれている。

電荷分布$ \rho$が知られているときに、これから スカラーポテンシャル分布$ \phi$を求めることも可能である。 まず、点電荷$ Q$の作るスカラーポテンシャルを求める。 点電荷の作る電場は、クーロンの法則で与えられる$ 1/r^2$に比例する 形である。 これを適当な定点る点(無限遠点を選択)を基準にして$ r$まで積分する。

$\displaystyle \phi=\frac Q{4\pi\varepsilon_0}\frac1r$ (4.8)

これをクーロンポテンシャル(Coulomb potential)という。 一般に$ 1/r$に比例するポテンシャルを クーロン型ポテンシャル(Coulomb type potential)という。

次に電荷分布$ \rho$の作るスカラーポテンシャルを考える。 空間を賽の目に分割し、各微小体積内の電荷の作るスカラーポテンシャルを 考えると、上式の$ Q$$ dV\rho$に置き直したものになる。 これを合計したものが、分布電荷の作るスカラーポテンシャルである。

$\displaystyle \phi=\frac1{4\pi\varepsilon_0}\int_VdV\,\frac\rho r$ (4.9)

ここで、当然のことながら、体積$ V$以外には電荷のないことを 仮定している。

なお、上式の$ \rho$をdivEにより置換した式により、 電場分布から線積分でなく体積積分により電位を計算することができる。

$\displaystyle \phi=\frac1{4\pi\varepsilon_0}\int_VdV\,\frac{\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph E}r$ (4.10)

さらに、$ \phi$だけにした式は任意の$ \phi$に対する恒等式になる。

$\displaystyle \phi=\frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\phi}r$ (4.11)

この式は特にポアソンの定理(Poisson theorem)と呼ばれている。 ここでも、$ V$以外では $ \mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\phi=0$を仮定している。


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Yoichi OKABE 2008-03-29