next up previous contents index
Next: 動的な場のポテンシャル Up: ポテンシャル Previous: スカラーポテンシャル   Contents   Index

ベクトルポテンシャル

マクスウェル方程式は、電荷や電流のような場の発生源を含む式二本と、 発生源を含まない式二本に分類することができる。 このうち、後者の二本を自動的に満たすようにできないかということで、 ポテンシャルの概念が導入された。 この際、利用する重要な事実として「rotが0となる場は、何らかの スカラー場のgradで表現できる」および「divが0となる 場は、何らかのベクトル場のrotで表現できる」がある。 前節で示したスカラーポテンシャルである静電ポテンシャルは、この前者の 例である。

まず、任意のベクトル場Xを考えよう。 これに対し、やや天下り的であるが、次のスカラー場を考える。

$\displaystyle \phi=\frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph X}r$ (4.12)

また、次のベクトル場を考える。

$\displaystyle \emph A=\frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph X}r$ (4.13)

すると、次式が得られる。

$\displaystyle -\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi+\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac1{4\pi}\int_VdV\,
\frac{-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits ...
...times}\nolimits (\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph X)}r$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle -\frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\emph X}r=\emph X$ (4.14)

ここで、二番目の等号はrot rotがgrad(div) $ -\mathop{\emph ▽}\nolimits ^2$ に変形できることを利用した。 また、最後の等号は、$ x$$ y$$ z$各成分ごとにポアソンの定理を適用した。

したがって、式4.124.13を用いて、次式が成立する。

$\displaystyle \emph X=-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi+\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A$ (4.15)

この関係をヘルムホルツの定理(Helmholtz theorem)と言う。 ここではポアソンの定理を適用しているから、積分体積$ V$以外では $ \mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\emph X=0$となることを前提としている。 つまり、場の発生源はすべてこの体積$ V$内に存在していることを仮定している。

$ \phi$スカラーポテンシャル(scalar potential)、Aベクトルポテンシャル(vector potential)と呼ばれる。 これに以下の恒等式を加味する。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits (\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi)=\emph0$ (4.16)

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits (\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A)=0$ (4.17)

これより、「任意のベクトル場は、スカラーポテンシャルの$ -$grad で表わされる回転のない場と、ベクトルポテンシャルのrotで 表わされる発散のない場に分解できる」ということがいえる。 また、上には$ \phi$Aの具体的な求め方も示してある。 ただ、$ \phi$Aの形にはかなりの自由度があり、ここに 示したのは単なる一例であることを了解しておいてほしい。

静電場は回転のない場である。 したがってスカラーポテンシャル$ \phi$$ -$grad で与えられることは前節で説明したようである。 動電場は回転もある場であるから、若干の修正が必要となるが、その前に 磁場について述べておこう。 磁場は静磁場、動磁場を問わず発散が0である。 このことは、磁場がなんらかのベクトルポテンシャルAの rotで表現できることを意味している。

$\displaystyle \emph B=\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A$ (4.18)

また、この式から直ちに次式が得られる。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph B=0$ (4.19)

これより、ベクトルポテンシャルを用いて表された磁場Bの divが、自動的に0となることが理解できよう。

Bの分布からAの分布を求める一つの方法は、 上述のように、体積積分で行うのが一つのやり方である。 具体的には式4.15$ \phi=0$としてXBと考える。 すると式4.13より、次式が得られる。

$\displaystyle \emph A=\frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph B}r$ (4.20)

なお、ついでに、この式から次の二つの式が得られる。

$\displaystyle \emph A$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{\mu_0}{4\pi}\int_VdV\,\frac{\emph J}r$ (4.21)
$\displaystyle \emph A$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac1{4\pi}\int_VdV\,\frac{\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits (\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A)}r$ (4.22)

もう一つの方法であるが、Eの分布から線積分を用いて、 ほとんど自動的に$ \phi$の分布を求めたように、 Bの局所的分布から計算できると便利である。 それはさほど容易な仕事ではない。 一つの理由は、BAを結び付ける式の積分形にある。

$\displaystyle \int_S\emph{dS}\cdot\emph B =\oint_C\emph{dr}\cdot\emph A$ (4.23)

この式はベクトルポテンシャルの線積分が、その積分路に鎖交する磁束に 一致するという重要な法則を示しているが、右辺が線積分で与えられ、電場の 場合のようにポテンシャルそのものとならない点が問題である。 もう一つの理由は、後に述べるように、Aに大きな自由度があるからである。

しかし、局所的な磁場を積分してポテンシャルを求める手法は皆無ではない。 ここでは代表的なものを二つあげておく。 まず、第一の手法は、いたるところで$ A_z=0$と仮定してしまうものである。 すると、 $ B_x=-\partial A_y/\partial z$となるから、点$ P$での $ A_y=-\int dz B_x$となる。 この積分の経路は点$ P$$ xy$面への垂線の足から点$ P$までとする。 また、この積分のさい、積分定数は0と仮定してしまう。 $ A_x$は、 $ B_y=\partial A_x/\partial z$ $ B_z=\partial A_y/
\partial x-\partial A_x/\partial y$を同時に満たす必要がある。 前者から、 $ A_x=\int dz\,B_y+f(x, y)$となる。 今度は$ z$の偏微分で消え去ってしまう$ x$$ y$だけの関数を後の 調整のために残しておく。 後者の式へ、いままでに得られた$ A_x$$ A_y$の式を代入すると、 $ B_z=B_z-B_z(0)-\partial f/\partial y$が得られる。 ただし、ここで $ \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph B=0$を利用した。 また、$ B_z(0)$とは$ xy$面上での$ B_z$の値である。 これより $ f=-\int dy B_z(0)$となる。 この積分路は$ x$軸上の点から先に述べた点$ P$の足までである。

$\displaystyle A_x=-\int_{(x,0,0)}^{(x,y,0)}dy\,B_z+\int_{(x,y,0)}^{(x,y,z)}dz\,B_y, \qquad A_y=-\int_{(x,y,0)}^{(x,y,z)}dz\,B_x,\qquad A_z=0$ (4.24)

これらのrotをとるとBになることは容易に確かめられるであろう。

第二の手法は、同様な計算を極座標で行うものである。 この場合、A$ r$方向の成分を 0 とする。 極座標でのrotやdivの表現は複雑であるので、ここではその結果のみを示す。

$\displaystyle \emph A=\frac1r\int_0^Pdr\,\emph B\times \emph r$ (4.25)

なお、積分路は原点から点$ P$までの直線とする。 r $ (xt,yt,zt)$$ dr$$ r\,dt$とおいて、 rotをとることにより、Bになることが証明できる。

以上のように、ベクトルポテンシャルの決定にはかなりの自由度がある。 これは、Aの選び方に、divを自由に決めてよいという 大きな自由度があるからであるが、それについては後の節で詳しく述べる。


next up previous contents index
Next: 動的な場のポテンシャル Up: ポテンシャル Previous: スカラーポテンシャル   Contents   Index
Yoichi OKABE 2008-03-29