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静電場の性質

電場は、クーロンの法則(Coulomb law)に従い、電荷が原点にある場合、 距離の二乗に反比例し、原点から発散する方向を持つベクトル場である。

$\displaystyle \boldsymbol{E}=\frac Q{4\pi\varepsilon_0}\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}$ (85)

ここで、 $ \varepsilon_0$電気定数(electric constant)であり、 $ 1/(4\pi\times9\times10^9)=8.85\times10^{-12}$[F/m] である。

電場の特長は、発散はあるが回転のないことである。 まず、任意の形状の閉曲面の上で、 点電荷が原点に一つだけある場合の発散積分を計算してみよう。

$\displaystyle \oint_$$\displaystyle \text Sd\boldsymbol{S}\cdot\boldsymbol{E}=\frac Q{4\pi\varepsilon_0} \oint_\text Sd\boldsymbol{S}\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}$ (86)

前章の式 2.29より、右辺の積分は、 閉曲面が電荷を囲めば$ 4\pi$となるから、 ガウスの法則(Gauss law)と呼ばれる次式が成立する。 前章で示した面積分と体積積分を結ぶ数学の恒等式群のことも似た呼び方をするが、 電磁気学では、クーロンの法則から誘導されたこの式のことをそう呼ぶ。

$\displaystyle \oint_$$\displaystyle \text Sd\boldsymbol{S}\cdot\boldsymbol{E}=\frac Q{\varepsilon_0}$ (87)

一方、閉曲面が点電荷を囲んでいないときには、 式2.31より0となることが導かれる。

閉曲面内にいくつか電荷があるときには、 電場はそれぞれの電荷の作る電場のベクトル加算の結果となるから、 発散積分の結果も、個々の電荷の発散積分の総和となる。 結果的に、上式の右辺の$ Q$として閉曲面内の総電荷を考えればよいこととなる。 電荷が点電荷の集合ではなく、空間に拡がって分布するときには、 電荷密度(charge density)$ \rho$を用いて次式のように表すことができる。

$\displaystyle \oint_$$\displaystyle \text Sd\boldsymbol{S}\cdot\boldsymbol{E} =\frac1{\varepsilon_0}\int_\text VdV\,\rho$ (88)

この左辺は、ガウスの定理 $ \oint_$$ \text Sd\boldsymbol{S}\cdot\boldsymbol{E}
=\int_\text V\mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}$により $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}$の体積積分になる。 右辺も体積積分であるから、積分記号を外すと、 ガウスの法則の微分形(differentail form of Gauss law)と呼ばれる次式が得られる。

$\displaystyle \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}=\frac1{\varepsilon_0}\rho %3.5
$ (89)

積分記号をいきなりはずすのは乱暴かもしれない。 厳密には、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}$$ \rho$がほぼ一定に見えるまで積分領域を十分小さくして、 左右の体積積分を体積との積にしてしまう。 この両辺を体積で割れば、上式が得られる。

この表現で点電荷がある場合は、 第2章の式2.36にしたがって、 前章2.4節で述べた点状デルタ関数を使って表すことができる。 まず、点電荷の代わりに、半径$ a$程度拡がった電荷分布の作る電場を考え、 その $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $を計算してみよう。 例えば、半径$ a$の球内で、 $ \Delta V=4\pi a^3/3$とするとき、 一定の電荷密度 $ \rho=Q/\Delta V$を持って拡がっている電荷を考える。 いうまでもないことであるが、 $ a\rightarrow0$で、 $ \rho=Q\delta(\boldsymbol{r})$となる。

$\displaystyle \rho=\begin{cases}{\displaystyle\frac Q{\Delta V}} & \text{(insid...
...)} \\ \vspace{-0.7em} \\ {\displaystyle0} & \text{(outside sphere)} \end{cases}$ (90)

対称性から考え、電場の方向は電荷分布の中心から放射状で、 かつ中心対称となる。 球内では、半径$ r$内に存在する総電荷は$ Q(r/a)^3$となるので、 ガウスの定理より、電場の大きさは、 これを表面積の $ \varepsilon_0$倍である $ 4\pi\varepsilon_0 r^2$ で割った値となる。 また、球外では、総電荷が$ Q$と一定になることだけが異なる。 この結果、得られる電場は次式で与えられる。

$\displaystyle \boldsymbol{E}=\frac Q{4\pi\varepsilon_0} \begin{cases}{\displays...
...{\displaystyle\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}} & \text{(outside sphere)} \end{cases}$ (91)

ここに得られた電場と電荷分布を図 3.1に示すが、 この電場は連続であるため、まったく問題なく微分することができ、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $は簡単に計算でき、その結果は再び $ \rho/\varepsilon_0$になる。

図 3.1: 特異性を緩めた電場と電荷密度($ a=1$)。
\includegraphics[width=0.5\columnwidth]{fig/field.E.eps} \includegraphics[width=0.5\columnwidth]{fig/field.delta.eps}

さて、電場の右辺は、 $ a\rightarrow0$で球内の領域がなくなるため、 通常の点電荷の作る電場となる。 一方、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}=\rho/\varepsilon_0$となるため、 極限で、右辺はデルタ関数となり、次のように表すことができる。

$\displaystyle \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E} =\frac Q{\varepsilon_0}\,\delta(\boldsymbol{r}) %3.6
$ (92)

このようにクーロン場は、電荷の存在するところを除くあらゆるところで、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $が0、つまり発散のない場であることが分かる。 この式は、前章2.4節式2.36からも、 ただちに求めることができる。

原点以外の $ \boldsymbol{r}'$に電荷がある場合には、 $ \delta(\boldsymbol{r})$のところを、 $ \delta(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}')$に置き換えるだけでよい。 点電荷がたくさんある場合には、 この右辺の点電荷の値$ Q$と位置 $ \boldsymbol{r}'$を変えたものを合計すればよい。 このように、電場の源である電荷の存在しているところだけが特異になる。

次に、一つの電荷が作る電場の回転積分を計算してみよう。

$\displaystyle \oint_$$\displaystyle \text Sd\boldsymbol{S}\times\boldsymbol{E} =\frac Q{4\pi\varepsilon_0} \oint_\text Sd\boldsymbol{S}\times\frac{\boldsymbol{r}}{r^3} %3.7
$ (93)

この右辺の積分は式 2.42より、 閉曲面が電荷を囲むか否かに関わらず、 $ \boldsymbol{0}$となる。

電荷がたくさんあっても、また電荷が空間に分布して存在していても、次の式が成立する。

$\displaystyle \oint_$$\displaystyle \text Sd\boldsymbol{S}\times\boldsymbol{E}=\boldsymbol{0} %3.8
$ (94)

左辺はガウスの外積定理により $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{E}$の体積積分になる。 したがって、積分記号を外すと、いたるところで、次式が成立することが示される。

$\displaystyle \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{E}=\boldsymbol{0}%3.9
$ (95)

このように、電場はいたるところ回転の存在しない場である。 発散についても、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}$は電荷がない限り0であり、 きわめて素直な場である。 電荷を囲む任意の閉曲面で発散積分が存在するのは、電荷のあるところだけの発散が、 外部からも観測されるに過ぎない。

素直な場とは、どんなイメージだろうかというと、水の流れがよい対応を与える。 圧縮もされず、粘性もない流れは $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $ $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits $も0である。 水は、壁のすぐ傍を除けば、おおむね、この条件を満たすので、 水の流れの流線を想像してもらえればよい。 つまり、正電荷から湧き出して、負電荷に吸い込まれる流れが、 よいイメージを与える。 もちろん、正負の電荷が全体として相殺しないときには、 均一に無限遠に流れ出ていったり、無限遠から流れ込んできたりする。

なお、各点でベクトル場に沿うように引いた曲線を指力線(line of force)、 電場の場合には、特に電気力線(line of electric force)という。 原理的には無数の曲線が引けることになるが、 通常はその密度がベクトル場の強さに比例するように間引いて引く。 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $のないところでは、指力線を連続的な曲線として引くことにより、 あらゆる点で、その密度がベクトル場の強さに比例するようにすることができる。

指力線に沿った任意断面形状の管を考えよう。 これにガウスの定理を適用すると、積分結果が0の場合、 管の断面積とベクトル場の強さの積は一定となることが、簡単に証明できる。 これより、指力線の密度はベクトル場の強さと比例することが分かる。

この結果、電気力線を見ることにより、それが発生するところが正電荷で、 消滅するところが負電荷であることが理解できよう。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日