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導体

導体(conductor)とは電場を与えると電流の流れる材料である。 通常の導体では電子の移動を妨げる不純物が多く、 電子は力に比例して加速され、一瞬にして力に比例する臨界速度で走るようになる。 つまり、 $ \boldsymbol{v}=\mu_m\boldsymbol{F}/Q$となる。 ここでは、$ \mu_m$は透磁率ではなく、移動度と呼ばれる定数である。 したがって、$ n$を導体中の電子密度として、 ローレンツ力 $ \boldsymbol{F}=Q(\boldsymbol{E}+\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B})$の両側に$ \mu_m/Q$ を掛けると、 $ \boldsymbol{v}=\mu_m(\boldsymbol{E}+\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B})$が得られる。

$ nQ\boldsymbol{v}=\boldsymbol{J}$であることを考慮し、 $ \sigma=\mu_mnQ$と置くと、

$\displaystyle \boldsymbol{J}=\sigma\left(\boldsymbol{E}+\frac{\boldsymbol{J}\times\boldsymbol{B}}{nQ}\right)$ (174)

が得られる。 通常、金属中では$ n$はきわめて大きいため、第二項はほとんど効かない。 そこで次のように近似できる。

$\displaystyle \boldsymbol{J}=\sigma\boldsymbol{E}$ (175)

$ \sigma$導電率(conductivity)と呼ばれる。 ただし、半導体などの材料では$ n$が小さく、第二項は無視できず、 ホール効果(Hall effect)と呼ばれる電気伝導に磁気が関与する効果が現れる。

導体はホール効果が無視できる場合でも、 導電率によって、面白い応答をする。 均質な導体内の電磁場を考えよう。 この場合、次式が成立する。

$\displaystyle \boldsymbol{J}=\sigma\boldsymbol{E}$ (176)

この式の $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits $をとり、左辺の $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{J}$$ -d\rho/dt$ で置き換える。 また、右辺の $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}$をガウスの法則の微分形を用いて $ \rho/\varepsilon_0$で置き換えて、まとめ直すと次式が得られる。

$\displaystyle \frac{d\rho}{dt}+\frac\sigma{\varepsilon_0}\rho=0$ (177)

この方程式を解くと、電荷はいたるところで次のように 減衰していくことが分かる。

$\displaystyle \rho=\rho(0)\ e^{-\sigma t/\varepsilon_0}$ (178)

大変不思議なことに、電荷が伝わっていくような様子が見えず、その場で、 誘電緩和時間と呼ばれる $ \varepsilon_0/\sigma$程度の時間で減衰していくかに見える。 このような現象を誘電緩和(dielectric relaxation)と呼ぶ。 実は電荷は、電荷の多いところから少ないところへ逃げていくのであるが、 少ないところの電荷ももっと少ないところへ逃げていくので、 全体が一様に減衰していくのである。

したがって、十分時間が経つと、$ \rho=0$としてよい。 つまり、電荷は導体の表面だけに存在するとしてよい。 さらに、$ \sigma$が十分大きいと、 $ \boldsymbol{J}=\sigma\boldsymbol{E}$の関係から、 有限の $ \boldsymbol{J}$を達成するためには $ \boldsymbol{E}$は限りなく小さくなる。

導体は$ \sigma$の非常に大きな材料であるから、 この誘電緩和は一瞬にして起こることとなる。 また、 $ \boldsymbol{J}$が有限になるためには $ \boldsymbol{E}$がほとんど 0 でなければならなくなる。 逆に、 $ \boldsymbol{E}=0$を仮定すると、まず、 $ \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{E}=\rho/\varepsilon_0$より、導体の内部では

$\displaystyle \rho=0$ (179)

が得られる。 この結果は誘電緩和の最終値と同じ結論である。

さらにマクスウェル方程式の $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{E}$式である $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{E}=-\partial\boldsymbol{B}/\partial t$ の左辺が 0 となるから次式が得られる。

$\displaystyle \D{\boldsymbol{B}}t=0$ (180)

つまり、磁場が時間変動しないという磁場凍結(freezing of magnetic field)の原理が導かれる。 さらに、マクスウェル方程式の $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{B}$式を時間微分したものに $ \boldsymbol{E}$ $ \boldsymbol {B}$の条件を代入することにより、 $ \partial\boldsymbol{J}/\partial t=0$が誘導できる。 なお、超伝導体中では $ \boldsymbol{B}=0$が成立するが、 これは超伝導体が単なる抵抗0の導体ではないことを示している。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日