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ファラデーの電磁誘導の法則

ファラデーの法則(Faraday law)にも不思議な現象が発生する。 ソレノイドに流れる電流を変えてその作る磁場を変化してみると、 その周りに電場が発生するというものである。 しかし、ソレノイドの外には何の磁場もないのに、 ソレノイドの外部にも電場が発生するのである。 つまり、磁場のない外から内部の変化が分るのである。

これも、外部に存在するベクトルポテンシャルが変化するから、

$\displaystyle \emph E=-\D{\emph A}t$ (5.19)

の式にしたがう電場が観測されると考えれば理解しやすい。 念のため、この両辺を任意の閉曲線に沿って線積分すると

$\displaystyle \oint\emph{dr}\cdot\emph E=-\D{}t\oint\emph{dr}\cdot\emph A =-\int\emph{dS}\cdot\emph B$ (5.20)

となり、ファラデーの法則が誘導できる。

これらの式は、磁場の存在しない外部だけでなく、 磁場の存在する内部でも成立する。 ファラデーの法則では電場の周回積分や回転しか得られないのに対し、 ベクトルポテンシャルを用いると、 各点における誘導電場が直接計算できるのである。

磁場中にある導体を動かしていくと、導体上に起電力が発生する。 これは、導体の中にある電荷に磁場に起因するローレンツ力(Lorentz force)が働き、 電荷が移動していき、導体に偏在するようになる。 このため、電場が発生するが、結局、 磁場による力と電場による力とが平衡するところで電荷の移動は停止する。 つまり、次式が成立する。

$\displaystyle \emph F=q(\emph E+\emph v\times\emph B)=0$ (5.21)

これから、導体移動に伴なう起電力は次式で与えられる。

$\displaystyle \emph E=-\emph v\times\emph B$ (5.22)

これが発電機の原理である。

しかし、同じ結論は、ベクトルポテンシャルを用いると、 次のように表現することも可能である。 磁場があるところ、あるいはその周辺には、ベクトルポテンシャルがある。 導体が空間的に変動するベクトルポテンシャル中を移動すると、 導体の感じるベクトルポテンシャルは時間的に変動する。

$\displaystyle \frac{d\emph A}{dt}=\sum_i\D{\emph A}{x_i}\frac{dx_i}{dt} =\sum_iv_i\D{\emph A}{x_i}$ (5.23)

この時間変動を電場として感じるのである。

ソレノイドの周りに別のコイルを巻くと、 変成器(transformer)を作ることができる。 ここでも、第二のコイルの存在するところには磁場がなくても、 第二のコイルは、ベクトルポテンシャルを介して、 第一のコイルの作る磁場を感じることができる。 特に鉄心があると、磁場はほとんど鉄心中を通過するので、 ベクトルポテンシャルの考えを抜きにしては、 両者の結合を理解することは不可能である。

さて、二つのコイルに電流 $ I_1$$ I_2$ を流すと $ \Phi=\mu_0(N_1I_1+N_2I_2)$ なる磁束が発生する。 一方、

議論を簡単にするために、 この外のコイルもある程度の長さを持つソレノイドとし、 かつ両端は短絡されているものとする。 内側ソレノイドの電流を変化させると、変成器であるから、 外側ソレノイドには、電流が誘起される。

いままで、学んできた電磁気学では、ここにはファラデーの法則(Faraday law)、 つまりマクスウェル方程式(Maxwell equations)の第 2 式により誘起される電場があると考える。

実際、この誘起電流は次のようにして計算することができる。 まず、内側ソレノイドがその内部に $ \Phi$ の磁束を作っているとする。 この磁束が変化すると、電場が誘起される。 まず、ファラデーの法則より、次式が成立する。

$\displaystyle \oint\emph{dr}\cdot\emph E=-\D{\emph B}t$ (5.24)

あるいは

$\displaystyle \phi=-\D{\Phi}t$ (5.25)

左辺は外部に誘起される電場を周回積分した誘導起電力であり、 右辺は外側ソレノイドに鎖交する全磁束 $ \Phi$ である。 外側ソレノイドの抵抗が極めて少ないとすると、導体の表面では電場はほぼ 0 でなければならない。 そうでないとすると、無限の電流が流れてしまうからである。 外側ソレノイドに対し上式を適用すると、電場 $ E=0$ と仮定すると、その 積分である磁束 $ \Phi=0$ が誘導できる。 ソレノイドが十分長いときには、その外部に作る磁場はほとんど 0 とみなせるので、その近似が成立する場合を考えよう。 内側ソレノイドコイルの電流を $ I_i$、単位長当りの巻数を $ N_i$ とすると、 $ \Phi_i=\mu_0N_iI_i$、同様に外側ソレノイドの方を $ I_o$$ K_o$ とすると、 $ \Phi_o=\mu_0N_oI_o$ となる。 この合計が 0 ということから、 $ I_o=(N_i/N_o)I_i$ が得られる。

しかし、ソレノイドの抵抗が高かったり、磁束の変化がゆっくりしていると、 この条件は成立しなくなり、二次側 (外側) の電流はどんどん低下してしまう。 特に直流では二次側電流はまったく流れない。

外側ソレノイドコイル一巻当りの抵抗を $ R$ とすると、誘導起電力により $ I_o=\phi/R$ の電流が生じる。 あるいは $ \phi=RI_o$ なので、この式を用いて $ RI_o=-d\Phi/dt=
\mu_0N_idI_i/dt-\mu_0N_odI_o/dt$ が得られる。 例えばすべてが $ \omega$ の角周波数で変化しているとすると $ d/dt
\rightarrow j\omega$ と置くことができるので、 $ RI_o=j\omega\mu_0
N_iI_i-j\omega\mu_0N_oI_o$ となり、 $ I_o=[j\omega\mu_0N_i/(j
\omega\mu_0N_o+R)]I_i$ が得られる。 周波数が高いと前文と同じ出力電流が得られるが、周波数が非常に低いと、 $ I_o=(j \omega\mu_0N_i/R)]I_i$ となり、周波数が 下るにしたがって、$ I_o$ は無くなっていく。

しかし、二次側に超伝導線のような量子効果の観測できる線を用いると、 低周波のみならず直流でも、高周波と同じ比率の二次電流が流れることが 知られている。 これはファラデーの法則ではどうやっても説明できない。

上の囲みの中の式 $ RI_o=\mu_0N_idI_i/dt-\mu_0N_odI_o/dt$ で抵抗 0 としてみると、 $ I_o/dt=(N_i/N_o)dI_i/dt$ が得られるが、この式から 時間微分演算記号を落とせない限り、直流のことは何も言えない。 しかし、ファラデーの法則を用いる限り、微分演算の無い式を 誘導することはできない。

一方、外側ソレノイドコイル内の電荷が、ベクトルポテンシャルを 感じているとすると、この話は簡単に説明できる。 前節で学んだように、スカラーポテンシャルのない場合、 $ m\emph v+Q\emph A$ が一定になるような性質がある。 $ A=0$ のときに $ v=0$ だったとすると、ソレノイドに電流が流れ、 周りの $ A$ が増加すると、$ v$ は逆に動き出し、その結果、 逆向きの電流が流れることになる。


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Yoichi OKABE 2008-03-29