今迄、いくつかの静電磁場の例を示してきたが、 これらの例は、ほとんど点対称、線対称といったきわめて対称性の高いものであった。 対称性が高いと、静電場の場合にはガウスの法則が使えるし、 静磁場の場合にはアンペールの法則が使える。 しかし、一般の電磁場の解析は容易ではない。
それでは、与えられた条件での電磁場を計算するには、 どの式をどのように使えばよいのであろうか。 本節では、静的な電磁場の計算手法について説明する。 静的であると、まず、時間微分がすべて0となるので、 マクスウェル方程式は、電場と磁場に関し、完全に独立となるので、 それぞれ独立に決定できることになる。
物質のない場合の電場計算、つまり、電荷が動くことなく独立に存在する場合には、 電場はクーロンの法則を用いて電荷から決定できる。 本書に示した少ない例では、ガウスの法則を使って電界を求めているが、 こうした作業ができるのは、電荷分布が球状、 円柱状、平面状といった対称性のよい場合だけである。 一般の形状では、クーロンの法則の法則を使って、 各電荷の作る電場をコンピュータによって加算(積分)するしかない。 磁場の場合も、対称性のよい場合にはアンペールの法則が利用できるが、 一般にはビオ・サバールの法則による各線分の作る磁場を、 コンピュータによって加算(積分)するしかない。
物質が存在すると、これらの計算は一層面倒となる。 電場の場合には、導体と誘電体が関係する。 実は導体は誘電率が無限大の誘電体として扱うことができる。 ただし、導体には電荷を帯電させることができる。 このため、正負の電気量の差が、導体全体で一定となるという条件が成立する。 一方、誘電体では、正負の電気量の差は0となる。 いずれにせよ、対称性がよければ、ガウスの定理を利用できるが、 一般の場合にはコンピュータを駆使せざるを得ない。
初期状態、つまり計算の前提としては、 いくつかの導体上に決まった量の自由電荷が与えられるか、 いくつかの導体の電位が与えられるか、 これらの複合であることが多い。 しかし、電位が与えられている場合でも、 まず導体上に適当な量の自由電荷を仮定する。 そして、クーロンの法則を利用して、全体の電場を計算する。 この最初の計算結果では、導体内に電場が残ったりする。
この計算の結果、導体の電位(どこか代表点の電位)が不適正の場合には、 自由電荷を補充/削減する。 導体内で電場が残っている場合には、電場の方向へ、電荷移動を行う。 また誘電体で内部で電場がある場合には、それに比例して分極ベクトルを生成し、 それによる分極電荷を誘電体表面に生成する。 そして、全電荷を使って、電場を再計算する。 これを繰り返すことで、収束した結果が、求める静電場となる。 この計算の仕方は、まさに、実際の電荷が移動していって、 静電場が確定する過程のシミュレーションそのものである。 この他にも、いくつかの手法が提案されているが、本質的には、 ここに述べたものと同じ作業をしていると理解してよいであろう。
磁場の場合には、導体上の自由電流が与えられている場合がほとんどであり、 鎖交磁束が与えられることはほとんどない。 仮に鎖交磁束が与えられる場合でも、静電場のやり方に準じて計算すればよい。 自由電流が与えられるといっても、 導体内の分布状況までが与えられることはないので、 やはり、最初は、自由電流を導体内の適切な位置に仮定する。 そして、ビオ・サバールの法則を用いて、全体の磁場を計算する。
この計算の結果、導体内に磁場が残る場合は、ローレンツ力にしたがって、 自由電流の位置を導体内で移動する。 また、磁性体の内部では、磁場に比例して磁化ベクトルを生成し、 それによる磁化電流を磁性体表面に生成する。 そして、全電流を使って、磁場を再計算する。 これを繰り返すことで、収束した結果が、求める静磁場となる。 この計算の仕方は、まさに、実際の電流が移動していって、 静磁場が確定する過程のシミュレーションそのものである。
かって、コンピュータが身近になかったころは、 色々手の込んだ複雑な電磁界解析の手法が提案されたが、 強力なコンピュータが身近に手に入るようになった現在、 こうした計算は、ほとんど、実際に起きている現象をシミュレーションすることで、 成されるようになっている。
なお、これ以外の手法としては、電場、磁場の代わりに、 スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルを計算する手法があるが、 本質的には、ここに述べたものと、大きな変化はない。