電荷や物質に働く力は結局はローレンツ力(Lorentz force)に帰着する。 しかし、 例えば平行平板コンデンサーに途中まで挿入された誘電体に働く力などを考えると、 難々簡単にはローレンツ力では理解しがたいものがある。 もちろん、正確に物質を構成している粒子に働くローレンツ力を計算し、 その総和をとれば、誘電体に働く力は計算できるのであるが、 それは余り容易ではないため、エネルギーを利用したりして計算することが多い。
なお、古典力学と量子力学の双方の効果を一気に説明する手法がある。 それは付録に示した最小作用の原理(principle of minimum action)と呼ばれる手法である。 元々は、束縛力のあるような複雑な力学系の問題を解くために、 ラグランジェが発展させた解析力学と呼ばれる手法の一つの表現形であるが、
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(6.1) |
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(6.2) |
さて古典力学の場合には、軌道を少し動かしても、
この値がほとんど変らない付近に軌道が選ばれる。
一方量子力学の場合には、異なる複数の軌道に対し、
この積分の値が同じ値となるときに、強い干渉が起ることになる。
例えば、板状のソレノイドの上下を通る電子ビームを考えよう。
ソレノイドの作る磁場の方向を
軸、ビームの進行方向を
方向、
ソレノイドの板の面に垂直な方向を
方向としよう。
板状のソレノイドの周りにはベクトルポテンシャルが誘起されるが、
その方向は主として
方向である。板の端では
方向のポテンシャルも存在するが、その領域は端付近に限られているので、
この議論では無視しよう。
試しの軌道として
方向にソレノイドの上を通る直線と、
下を通る直線の二種類を仮定し、
それぞれのビームの作用を計算してみよう。
まず、上のベクトルポテンシャルが
だったとしよう。
また、そこでは速度がベクトルポテンシャルのなかった時に比較し
になったとしよう。
すると作用積分は次のようになる。
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(6.3) |
これらが同じ値となる条件を考えてみよう。
そのためには上の軌道では
とし、下の軌道では
としなければならない。
つまり、上の軌道ではやや早目、下の軌道ではやや遅目に動くことになる。
ベクトルポテンシャルの存在領域の長さ
、スリット間隔
とすると、下の軌道の粒子がスリットに到着したとき、
上の軌道の粒子はスリットを通り越して、
だけ先に居ることになる。
これら二つの軌道を通る粒子がゴールのスクリーンに同時に到着するには、
スリットを出てから下方斜めの方向に動くしかない。
その振れ角を
とすると、
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(6.4) |
このように、古典力学の運動は量子力学で説明できるが、 ポテンシャルが空間的に余り激しく変化すると、ビームは広い範囲に拡がってしまい、 古典力学で扱う粒子のようなイメージを持たなくなる。 つまり、古典力学の粒子を扱うには、 ポテンシャルは緩やかに変化している必要がある。 このような条件で粒子の受ける軌道変化を計算すると、 結局、運動はポテンシャルの一次変化にだけ依存するようになり、 ローレンツ力の与える式になってしまう。 つまり、力という概念を議論しようとすると、どうしても古典的近似になり、 電場、磁場だけが現われ、ポテンシャルは現われなくなってしまうのである。 したがって、本章では、以後、マクロに観察されるローレンツ力を使った話を行う。