前小節で述べたように、電荷が突然あるところに出現するには、必ずそれに
対応する電流が流れていなければならない。
電流が無限遠のあらゆる方向から原点に向って対照的に流れ込んだ結果、
突然原点に電荷が発生したものとしよう。
このためには一瞬大電流が流れ込む必要がある。
一瞬を
とすると、電流の大きさは
となる。
この電流は原点対称に分布しているが、その原点から
離れた点での
電流密度は次のようになる。
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(7.32) |
ここで、
とは、
から 1 になる階段関数であり、右辺の
括弧全体で
の間だけ存在することを示す。
以下、ポテンシャルを求めるところまで、この時間項のことは無視して
議論してさしつかえない。
まず、電流源の座標を r'、観測点を r、観測点から電流源を
見た座標を
としよう。
電流が観測点に作るベクトルポテンシャルには伝播遅延があるため、
観測点からの半径が
の球殻状の領域の
電流しか影響を与えない。
また、この球殻上の電流の効果はベクトル的に合算されるため、その r
方向の成分しか影響してこない。
このことを考えて A を求めると次のようになる。
なお、この定積分は複雑そうなので、数式処理のソフトによって求めた。 この解をスカラーポテンシャルと組み合わせると、きちんとローレンツ条件を 満しているが、その証明は読者に任せる。
ここで得られたスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルから電場や磁場を
計算することができる。
その結果、まず A の放射対称性から B=0 となる。
また
の
計算結果は次のようになる。
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(7.34) |
最初の過渡的な時間を除くと、電場は全領域にわたってクーロン型の 形をしている。 また、過渡的な時間も最終的な値に全領域が比例的に立ち 上がっているだけである。
不思議なことに、電場には光速の効果が表われてこない。 これはまず、原点に 向う電流を全領域に強制的に流したが、原点での電流連続性から、変位電流が 逆向きに流れざるをえず、その結果、電場が全領域に発生したのである。 さらにその後、電流を止めたが、この時には伝播域内部の電場との連続性から、 やはり外部にも同じ形の電場が存在せざるを得ない。 これらの結果、電荷発生後は常に、全領域にクーロン型の電場が 存在することになるのである。
さて、全領域に電場が存在するのならば、導体中にそれに比例した電流が 流れることになり、結局、見かけ誘電緩和過程には光速が 表われないことになるのである。
なお、ここに示すような空間対称性のよい問題に対しては、ローレンツ条件を 利用して A を計算する方が楽である。 ローレンツ条件を書き換えると次のような発散の式が得られる。
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(7.35) |
つまり、
を電荷のように思って、
ガウスの法則により電場を求める手法を利用して、A を求めるという
方法である。
まず
を求めておこう。
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(7.36) |
この値の半径
までの体積積分を球面の面積
で
除したものが
となる。
この結果は式 7.33と完全に一致する。
なお、これらの
の極限を示すと、次のようになる。
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(7.37) | ||
![]() |
(7.38) |
まとめると、スカラーポテンシャルはクーロンポテンシャルを ほぼ
の付近まで影響させながら、徐々にその影響域を光速で拡げていく。
一方、そのスカラーポテンシャルの裾野を拡げるために、
ベクトルポテンシャルが無限遠から、この裾野まで内向きに存在する。
このベクトルポテンシャルは一点で観測する限り時間と共に増大し、境界が
到達したとたんに消滅する。
また境界と共に移動しながら観測していると、その最大値は時間に反比例して
減衰していく。
最後には無限遠まで拡がったスカラーポテンシャルだけが存在することになる。
誘電緩和の場合には、このようにして注入によりでき上がった電荷が 漏曳電流によって、徐々に減衰していく。 つまり、対称電流注入の場合、誘電緩和には光速の効果は見えてこない。