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直線電流

$ z$軸に沿って流れている直線状の直流電流$ I$の作る磁場を 考えてみよう。 この磁場は、アンペールの周回積分の法則を用いて簡単に求めることができる。 しかし、練習のために、ベクトルポテンシャルから計算してみよう。

電流ベクトルを$ x$$ y$$ z$の三成分に分解してみると、 明らかに$ z$成分しか持たない。 ベクトルポテンシャルの各成分は、電流の対応成分からしか 形成されないから、$ A_z$しか誘起されない。

まず、$ 1/r$型のポテンシャルの積分という形で、$ A_z$ を計算してみよう。 観測点の座標を$ (x, y, z)$とし、さらに $ r=\sqrt{x^2+y^2}$とする。 また発散を避けるために、電流路の長さを$ -L$から$ L$に限っておく。

$\displaystyle A_z$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{\mu _0I}{4\pi}\int_{-L}^Ldl\frac1{\sqrt{(l-z)^2+r^2}}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \left.\frac{\mu _0I}{4\pi}\log\left[{\sqrt{(l-z)^2+r^2}
+(l-z)}\right]\right\vert _{-L}^L$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{\mu _0I}{4\pi}\log\frac{\sqrt{(L-z)^2+r^2}+(L-z)}
{\sqrt{(L+z)^2+r^2}-(L+z)}$  
  $\displaystyle \doteqdot$ $\displaystyle \frac{\mu _0I}{2\pi}\log\frac{2(L-z)+r^2/2(L-z)}{r^2/2(L+z)}$  
  $\displaystyle \doteqdot$ $\displaystyle \frac{\mu _0I}{2\pi}\log\frac{2L}r
=\frac{\mu _0I}{2\pi}\log\frac{2L}r$ (280)

ここで、最初の近似では$ L\pm z$に対し$ r$が十分小さいとして平方根を近似し、 次の近似では、$ L$に対し$ r$$ z$が十分小さいとしている。

本来$ L$$ \infty$であるべきであるが、 こうすると解が発散してしまう。 もともと、無限に長い電荷では、発散するのは当然の結果である。 しかし、無限大の電位ではいかんともできないので、今後の議論は、$ L$ が十分大きいものとして、上式のままで進めていくものとする。 ここで、まず平方根を$ L+z$に対し他の項が小さいものとして一次近似し、 さらに$ L$に対し$ z$を無視した。

上の式は、内積面積分の定理を利用すると、 もっと簡単に求めることができる。 電流の$ z$成分は$ z$軸上だけに$ I$の一定値を持つから、 対応する電荷モデルは$ I$の線電荷密度を持つ直線状一様電荷となる。 まず、これの作る電場を求める。

$\displaystyle E=\frac I{2\pi\varepsilon_0}\frac1r$ (281)

これを積分すると、スカラーポテンシャルが得られる。

$\displaystyle \phi=\frac I{2\pi\varepsilon_0}\log\frac a r$ (282)

この $ \varepsilon_0\rightarrow1/\mu_0$とすれば、 ベクトルポテンシャル$ A_z$が得られる。

$\displaystyle A_z=\frac{\mu_0I}{2\pi}\log\frac a r$ (283)

ここで$ a$は積分の際の基準点の原点から半径距離を表す。 先に求めたものと比較すると、$ a$$ 2L$になっているだけである。 これは長さ$ 2L$の線電流の作る場も、 原点近傍では無限長線電流の作る場とほとんど同じであり、 その影響がおよそ$ 2L$程度の範囲に拡がっていることを示している。 いずれにせよ、ポテンシャルは微分して使われるので、$ a$でも$ 2L$ でも、利用の際は関係なくなる。

いうまでもなく、$ A_x$$ A_y$も0であり、 ベクトルポテンシャルは$ z$方向を向く。 以上のことから、さきに述べたベクトルポテンシャルは電流源の方向を持ち、 遠方で減衰する形となることが理解できよう。

ベクトルポテンシャルの $ \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits $を計算すると、 まわりにできる磁場 $ \boldsymbol {B}$を求めることができる。

$\displaystyle B_x$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \D{A_z}y-\D{A_y}z=-\frac{\mu_0I}{2\pi}\frac y{r^2}$  
$\displaystyle B_y$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \D{A_x}z-\D{A_z}x=\frac{\mu_0I}{2\pi}\frac x{r^2}$  
$\displaystyle B_z$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \D{A_y}x-\D{A_x}y=0$ (284)

これをまとめてベクトル表現すると、次のようになる。

$\displaystyle \boldsymbol{B} =\frac{\mu_0I}{2\pi}\frac{\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{r}}{r^2}$ (285)

あたり前であるが、これはアンペールの法則から計算したものと一致する。 計算したベクトルポテンシャルと磁場の概要を図 7.1に示す。

図 7.1: 直線電流が作るベクトルポテンシャル(実線)と磁場(破線)の概要。
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(68,93)
\put(0,0){\sp...
...put(34.5,87.6){\makebox(0,0)[b]{{\footnotesize$I$}}}
\end{picture}
\end{figure}


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日