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超伝導インダクタンス

超伝導体のインダクタンスを計算する前に、通常のインダクタンス(inductance)を 計算してみよう。 これには電流の作る磁界を計算するのが普通である。 磁界はベクトルポテンシャルから計算できるので、実は次の式の第二項を 基本としていると言える。

$\displaystyle \emph p = M\emph v + q\emph A$ (8.24)

この式は一般化運動量と呼ばれる概念の定義である。 粒子の全エネルギーは $ U=M\emph v^2/2 + qV$ で表わされるように、速度に 基づく運動エネルギー (相対論では $ Mcv_t$ と書かれる) とポテンシャルエネルギーの和で与えられるように、粒子の全運動量は、速度に 基づく力学的エネルギーとベクトルポテンシャルの和で与えられる。

多くの材料では上式の第一項は無視できるため、 $ \emph p=q\emph A$ と表わされる。 一方、 $ \emph F=d\emph p/dt$ であり、また $ \emph F=-q{\rm grad}
V$ であるので、 $ {\rm grad}V=-\partial{\emph A}/\partial t$ が 成立する。 ここで、 $ \emph F=-q{\rm grad}
V$ であって、 $ \emph F=q\emph E$ ではないことに注意して欲しい。 そこで、ある回路の枝が導体でできているときには、その枝の両端の 電位差はこの左辺を枝に沿って経路積分することで計算することができる。 このとき右辺も積分されるので、次式が成立する。

$\displaystyle \Delta V = -\frac\partial{\partial t}\int\emph{dr}\cdot\emph A$ (8.25)

となる。 $ \Delta V$ は線積分の終点と始点の電位差を示す。 負号は、電流の流れる方向に電位が上がっていくという定義をしたからで、 回路理論では電流の流れに逆らって電位が上がると定義しているので、 回路理論の電位を用いると、次式のようになる。 以後、電位の定義は回路理論に準ずるとしよう。 さらに、右辺のベクトルポテンシャルは、自分自身の電流や他の枝の電流により 構成されるので、

$\displaystyle \Delta V = \frac\partial{\partial t}\int\emph{dr}\cdot\emph A =\sum_iL_i\frac{dI_i}{dt}$ (8.26)

のような形となる。 $ L_i$ は比例係数である。 このうち、自分の電流による寄与分が自己インダクタンス(self-inductance)である。 また、他の電流の寄与分が相互インダクタンス(mutual-inductance)である。

なお、有限の長さの配線が作るベクトルポテンシャルは次式で与えられる。 これが磁気インダクタンス(magnetic-inductance)としてよく知られている概念である。

$\displaystyle \emph A = \frac{\mu_0\emph Jdv}{4\pi r}$ (8.27)

さて、超伝導体では単位面積当りの電流密度を大きくすることができる。 つまり、第一項の寄与が無視できなくなる場合も少なくない。 特に、超伝導エレクトロニクスで、配線の断面積が小さい場合には第一項の 影響が大となる。 第一項だけがある場合の解析を示しておこう。 この場合、第一項は電流密度に置き換えることができる。

$\displaystyle \emph p = \frac{M\emph J}{nq}$ (8.28)

磁気インダクタンスの場合と同様に両辺を時間微分すると、左辺は回路理論の 電位を用いて、 $ q{\rm grad}V$ となるから、次のように置き換えられる。

$\displaystyle {\rm grad}V = \frac{M}{nq^2}\frac{d\emph J}{dt}$ (8.29)

つまり、単位体積当り $ M/(nq^2)$ のインダクタンスを持つことが 理解できる。 これに枝の長さ $ l$ を掛け、電流密度を電流に置き換えると、

$\displaystyle \Delta V = \frac{M}{nq^2}\frac lS\frac{dI}{dt}$ (8.30)

全インダクタンスは長さに比例し、断面積に逆比例することが理解できよう。

このインダクタンスは力学インダクタンス(kinetic-inductance)と呼ばれるが、その成因は 何であろうか。 これは実は電子の慣性から来ている。 電子の質量によって、電子は簡単には速度を帰ることができない。 つまり電流を流れ続けさせようという原因となる。 これがインダクタンスとして観測されるのである。 原因は力学的なものであっても、回路的には自己インダクタンスと何ら 変るところがない。

さて、第一項も第二項も無視できない場合はどうなるのであろうか。

$\displaystyle {\rm grad}V = \frac{M}{nq^2}\frac{d\emph J}{dt} + \frac{d\emph A}{dt}$ (8.31)

となる。 これより

$\displaystyle \Delta V = \frac{M}{nq^2}\frac d{dt}\int\emph{dr}\cdot\emph J \frac d{dt}\int\emph{dr}\cdot\emph A$ (8.32)

が得られる。 つまり力学インダクタンスと磁気インダクタンスの合計が得られる。


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Yoichi OKABE 2008-03-29