電磁気学(electro-magnetism)は電荷(electric charge)同士に働く力と、
磁石(magnet)の磁極(magnetic pole)同士に働く力の解析から形成されていった。
前者は電場(electric field)、後者は磁場(magnetic field)である。
また合わせて電磁場(electro-magnetic field)という。
なお、これらは物理系の呼び方であって、工学系では電界(electric field)、
磁界(magnetic field)、電磁界(electro-magnetic field)という。
私は工学系なので、電界・磁界と呼びたいところであるが、
個人的趣味によって電場・磁場を用いる。
分野によって用語が異なるは不幸なことであるが、
分野ごとに長い歴史を背負っているので、簡単には統一できないのが実状である
。
電流(current)も磁場を作り出すことができるし、磁場の電流は力を受ける。 現在、磁石は、図 1.1に示すように、 その中にたくさんのループ状の微小電流を持つことが知られているので、結局、 磁場は電流と電流に働く力である。
電荷と電荷に働く力を、前者の電荷に着目してみよう。 この位置を徐々に変えると受ける力は徐々に変化していく。 何となく、後者の電荷がまわりに何らかの影響力を有しており、 それを感じているようにみることができる。 このような影響のおよぶ範囲を場(field)と呼ぶ。 この立場で、後者の電荷は電場と呼ばれる場を張っていると考え、 前者の電荷はそれを測定する手段と考える。 測定する電荷を特に区別したいときには、検電荷(testing charge)と呼ぶ。
電流は電荷の移動であるから、電荷は動いていると磁場の影響を受け、 止まっていても電場の影響を受けることになる。 あちこちに電荷や電流があるとき、そこをある検電荷が動いているときに受ける力は、 図 1.2に示すローレンツ力(Lorentz force)であり、 式で与えると以下のようになっている。
を電場、
を磁場と呼ぶ。
は厳密には磁束密度(magnetic flux density)と呼ばれるが、厳密にいう必要のないときは、
単に磁場と呼ぶ。
電荷が動くとその移動方向に垂直に力を受けることも不思議であるが、
移動方向にかかわらず、移動方向とある磁場ベクトルとの外積で力が決まるのが、
さらに興味深い。
二つのベクトルとベクトル
の積には二種類の定義がある。 一つは内積(inner product)またはスカラー積(scalar product)といい、
とスカラー量となる積である。 二つのベクトルの挟む角度を
として、
でも計算できる。 もう一つは外積(outer product)またはベクトル積(vector product)といい、
とベクトル量となる積である。 二つのベクトルに垂直で、
の大きさを持つ。 取り得る方向は二方向あるが、
から
に右ネジを回したときに、 ネジの進む方向となる。 本書では内積、外積という言葉を用いる。
電場や磁場はまわりに置かれた電荷や電流が作り出す。 ここで、重要な性質がなりたつ。 場の原因となる電荷や電流が複数存在するとき、 全体の電荷と電流が作り出す電場や磁場は、 一つ一つの電荷なり電流が作り出す電場や磁場のベクトルを合成になるのである。 これを重ね合わせの原理(principle of superposition)という。 つまり、電磁気学は、これら場の概念と重ね合わせの原理によって、 美しく体系化されているといっても過言ではなかろう。