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面積分

スカラー場には勾配、ベクトル場については発散、 回転といった重要な概念がある。 これらの概念の導入にはいずれも閉曲面表面に沿う面積分が重要な役割を演ずる。

Figure 2.1: 地球全体の受ける太陽光エネルギーは、 各微小面積の受けるエネルギーの総和で得られる
\begin{figure}\begin{center}
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(81,117)
\put(0,0...
...x=139 lly=658 urx=220 ury=775 rwi=810}}
\end{picture} \end{center}
\end{figure}

面積分(surface integral)とは次のような概念である。 例えば、地表の単位面積当たり受ける太陽光のエネルギーが簡単な関数$ f$ で与えられるものとする。 地球の場合は$ f$$ \theta$$ \phi$の関数とするのがよいだろう。 このとき地球全体で受ける太陽光のエネルギーの総和を求めろと言われたら、 図 2.1のように、 地球の表面全体を十分小さな面積 $ \Delta S_i$で分割し、 各面積ごとのエネルギー $ \Delta S_if$を求め、それを合計すれば良い。

$\displaystyle \sum_i\Delta S_if$ (2.1)

ここで、 $ \Delta S_i$を十分小さくしたときの極限を次式で表す。

$\displaystyle \int dS\,f$ (2.2)

これが面積分である。 つまり、面積分の$ \int$は本来$ \sum$のことであり、 $ dS$ $ \Delta S_i$のことであると理解してもらいたい。 通常、積分というと大きく二つの理解の仕方がある。 一つは、ここに示したような「総和の極限」という理解である。 通常の積分であるリーマン積分(Riemann integral)も、 微小区間$ \Delta x$$ f$に掛けて合計した $ \sum_i\Delta
x_if_i$の極限と定義されている。

もう一つの理解の仕方は積分演算という考え方である。 つまり、関数から別の関数を作り出す演算であるという理解の仕方である。 $ x^n$から $ x^{n+1}/(n+1)$を作り出す演算子であるという理解の仕方である。 これは、積分に段々慣れてくると出来上がる概念であるが、 面積分をこの概念のように理解しようとすると、まったく不可能である。 面積分を理解するにはあくまでも「総和の極限」と解釈してほしい。 したがって、積分を記載する際、よく見られるように、 $ \int f\,dS$のように積分記号と$ dS$で関数を囲む形にする必要はなく、 順番は問題ではない。



問題2..1 $ f=I_0\cos\theta$とし、 $ dS=a^2\sin\theta
\,d\theta\,d\phi$とし、全エネルギーを計算してみよ。 ただし、太陽の方向を極座標の軸方向とした。 また、光は $ 0<\theta<\pi/2$の範囲でしか当たらないことを考慮せよ。

もう一つ別の例を挙げよう。 それは浮力の計算である。 液体中の物体には圧力がかかっている。 その合力が浮力となるのである。 例えば、深さによらず一定の圧力$ p$を受けている物体を考えよう。 この場合にも、物体の表面$ S$を微小面積 $ \Delta S_i$に分割する。 各面積の受ける力は $ -\Delta\emph S_i\,p$となる。 ここで、ベクトル $ \Delta\emph S_i$は大きさ $ \Delta S_i$を 持ち、その方向は物体の内から外を向き各面要素に垂直である。 浮力はこれらのベクトルの合力となる。

$\displaystyle -\sum_i\Delta\emph{S}_i\,p$ (2.3)

この総和は極限として次のような面積分として表される。

$\displaystyle -\oint_V\emph{dS}\,p$ (2.4)

ここで$ \oint$と積分記号に○を付けたのは、閉曲面すべてでの総和を意味する。 この面積分は「総和の極限」として考えると理解しやすいが、 演算子として考えると、絶対に理解できない。 電磁気学に出てくるさまざまな面積分が理解できなくなる最大の原因も、 ここにあるので、あくまでも「総和の極限」であるという立場で理解してほしい。 なお、本書では、$ \oint$のサフィクスは、閉曲面が囲む体積の記号とする。 一方、同じ面積分であっても、$ \int$のサフィックスは、面の記号とする。

ちなみに、$ p$が一定の場合には、$ p$を面積分の外に追い出せるが、 残る面積分は大きさ0のベクトルとなる。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}=\emph0$ (2.5)

つまり、一定圧力中の浮力は0となる。

証明は簡単である。2.2 この結果があるベクトル$ \emph a$になったとしよう。 両辺に$ \emph a$方向の単位ベクトル$ \emph n$をスカラー的に掛ける。 まず、右辺は$ a$となる。 一方、左辺の $ \emph n\cdot\emph{dS}$は、 $ \emph{dS}$の面積を$ \emph n$に垂直なある面に射影した面積になる。 したがって積分結果は射影された影の面積に対応する。 光の当たる側と裏側の二曲面の射影ができるが、 裏側の射影面積は $ \emph n$$ \emph{dS}$の方向が逆であり負となるから、 二曲面の射影はちょうど打ち消し合い、0となる。 したがって、$ \emph a$つまり右辺は0ベクトルとなる。

次に、高さとともに圧力の変化する液体中での物体にかかる浮力を 計算してみよう。 $ p=p_0+\rho gz$$ z$方向に変化しているとしよう。 その場合の浮力は次式で与えられる。

$\displaystyle -p_0\oint_V\emph{dS}-\rho g\oint_V\emph{dS}\,z$ (2.6)

このうち、第 1 項は式2.5に示したように0となる。 第 2 項は面積分部分が物体の体積となることが示される。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\,z=\emph kV$ (2.7)

ただし、$ \emph k$$ z$方向の単位ベクトルである。 結局、「浮力は物体の排除する液体の重量に等しくなる」という アルキメデスの法則(Archimedes law)が導かれる。

これを証明するには、まず、閉曲面を図 2.2のように、 $ xy$面と平行な面で輪切りにする。
Figure 2.2: $ z$方向にだけ変化するスカラー場の面積分の計算
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(158,140)
\put(0,0){\...
...0,44.4){\makebox(0,0)[lb]{{\footnotesize\rm$z_i$}}}
\end{picture}
\end{figure}
右辺は厳密には分割を無限に薄くした極限となるのだが、 $ \lim$の記号は省略した。 以後の議論でも、特に必要無い限り、$ \lim$の記号は省略する。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\,z =\sum_{i=1}^n\int_{S_i}\!\emph{dS}\,z_i =\sum_{i=1}^n z_i\int_{S_i}\!\emph{dS}$ (2.8)

各輪切り一枚ごとの側面の面積分 $ \int\emph{dS}$を求めるのであるが、 各輪切り全体の面積分を行うと最初に述べたように0となるはずである。

$\displaystyle \int_{S_i}\!\emph{dS}+\emph kA_{i+1}-\emph kA_i=\emph0$ (2.9)

ここで、$ A_i$$ i$番目の輪切りの底面の面積である。

この関係を使い、側面の面積分を面積差に置き換えることができる。 さらに変形すると証明が完了する。

$\displaystyle \oint_V\emph{dS}\,z$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sum_{i=1}^nz_i\,\emph k\,
(\emph A_i-\emph A_{i+1})=\emph k\left(\sum_{i=0}^{n-1}z_{i+1}
\,A_{i+1}-\sum_{i=1}^nz_i\,A_{i+1}\right)$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \emph i\sum_{i=1}^{n-1}\,(z_{i+1}-z_i)\,A_{i+1}=\emph kV$ (2.10)


いうまでもなく$ x$$ y$の重みについても同様の結果が得られる。 式2.5や式2.7などは、 今後もしばしば利用される大事な式である。


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Yoichi OKABE 2008-03-29