以上、一点に集中した電荷や一つの線を流れる電流に働く力を議論してきたが、 分布した電荷や電流に働く力を議論しよう。 運動している分布自由電荷に働くローレンツ力(Lorentz force)は次式で与えられる。
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まず、物質のない場合を考慮しよう。
この右辺
と
を、
式および
式を利用して、
電磁場により書き換えてみよう。
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(343) |
左辺は、分布電荷に働く力であり、
分布電荷の持つ単位体積当たりの力学的運動量
の増加率ともいえるので、
以下のように書くことができる。
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この式の両辺をある体積で体積積分すると、次式が得られる。
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応力というと苦手な人が多いかとも思うが、要は、
空間に小さな直方体を切り取ったときに、
面に働く力が
になると理解すればよい。
例えば
が正のときは引張力、負のときには圧縮力に定義される。
それにしても
の要素が複雑である。
こうしたときには、この行列の固有値問題を解いて、主軸変換するとよい。
まず磁場のない電場のみの場合のテンソルを主軸変換してみよう。
すると、主軸は
の方向にあり、
その方向の固有値は
となる。
また、第二、第三の主軸はこれと直交しており、その方向の固有値は縮退していて、
となる。
これから、
の方向に垂直の面は
の引張力を受け、
それと垂直ないずれの方向の面も
の圧縮力を受けることが分かる。
この理由により、電気力線はその方向に縮もうとし、
その垂直方向に膨らもうという力を出すといわれる。
まず、静的な場合を考えよう。 電気力線は、電荷を始点や終点にするから、電荷に働く力は、 電気力線の引張力で説明できることになる。 例えば、導体上の電荷は常に外向きに引力を受けるが、 それはこの電気力線の引張力で理解できる。 また微小サイズの正電荷が負電荷に引かれる様子は、 正電荷表面の電気力線の密度が、負電荷側で高いことから、視覚的に理解できる。
また、導体表面で、同種の電荷同士は横向きに押し合っており、それが故に、 電荷は一様に分布するのであるが、 それが電気力線の横向きの圧縮力に繋がるのである。
電場のない磁場のみの場合のテンソルを主軸変換すると、電場の場合と同様に、
の方向に垂直の面は
の引張力を受け、
それと垂直ないずれの方向の面も
の圧縮力を受けることが分かる。
この理由により、磁力線もその方向に縮もうとし、
その垂直方向に膨らもうという力を出すといわれる。
磁力線は電流を囲むように生成されるから、電流に働く力は、 磁力線に垂直な圧縮力で説明できることになる。 例えば、同方向に流れる電流同士が互いに引かれる様子は、 これらが作る磁力線が電流の線の間で疎であり、外部で密であることから、 視覚的に理解できる。
電場も磁場もあるときの主軸変換は、きれいな形にはならない。 しかし静的な場合には、電荷は電気力線としか関わらず、 電流は磁力線としか関わらないので、それぞれ独立な応力により理解できる。
次に、動的な場合を考察しよう。
この場合には、
の時間微分が効いてくるため、
電荷や電流に働く力はマクスウェル応力だけでは説明できなくなる。
積分形の体積をきわめて巨大にしていくと、
遠方では場が弱くなっていくため、その表面積分である応力の項は消えていくだろう。
残った項は、力と電磁場の運動量の時間微分に関わるものである。
通常は、力の体積積分は、作用反作用の法則(action-reaction law)で0になることが期待できるが、
そうはなっていない。
つまり、作用反作用の法則は成立しないのである。
その差は、
の時間微分により説明できるのである。
力の時間積分は運動量である。
このため
は電磁場の運動量と呼ばれるのである。
この作用反作用の法則の不成立に関して、
電磁気学ではきわめて多くのパラドックスが提示されている。
そのすべてが、この電磁場の運動量を考慮することにより、
理解できることを知っていてほしい。
物質があり、
特に
、
と線形の場合には、
が、自由電荷、自由電流にかかる力とすることにより、
物質のない場合の
、
を、
、
に変更するだけで、
すべて、真空の場合と同じ式変形が適用できるので、次式が得られる。
ここで注意してほしいのは、これらの式が、 誘電体や磁性体に蓄えられるエネルギーを、 すべて電磁気エネルギーとして組み込んだ場合の式であることである。 したがって、ここで計算された電磁気的応力にも、 力学的応力が組み込まれているを意識しなければならない。
例えば、図 8.3の誘電体先端付近では、
は誘電体内と誘電体外部ではほぼ同じであるので、
応力は
と
と異なる。
しかし、その違いは、実は力学的応力の差であり、すぐ後に示すように、
電磁気的応力は同じである。
平行平板キャパシタの中に誘電体が引き込まれる効果を説明するのに、
しばしば、電気力線の横方向の圧力の結果であると記載した書が多く見られるが、
それは間違いである。
面倒な計算の割に使いづらい式である。
こうした間違いを起こさないためには、
分極電荷や磁化電流をも含むすべての電荷(全電荷)、
電流(全電流)に対して計算したマクスウェル応力を使うほうが便利である。
電荷や電流として、物質中に誘起される電荷や電流も含むことにすれば、
これらは、真空中に存在しているのと同じにあるので、
先に示した物質のない場合の取り扱いと同じになる。
つまり、
や
を全電荷、全電流と思えばよいだけである。
その結果、マクスウェル応力と電磁場の運動量は、
式8.32と式8.33で与えられることになる。
このマクスウェル応力を使うと、ローレンツ力を計算しなくても、
電場や磁場の分布から、誘電体や磁性体に働く力を計算することも可能である。
例えば、誘電体の表面に分極電荷が誘起されていると、
が不連続になることが知られているが、この結果、
なる力が誘電体表面に働くことが誘導できる。
また、平行平板キャパシタの中に誘電体が中途まで入っている場合には、
この誘電体の先端付近での圧力は、内外とも
であり、
先端を引き込むような応力は発生しない。
ちなみに、誘電体が引き込まれるのは、第12章で解説するように、
誘電体の角付近のエッジ効果による。
物質があり、誘電率や透磁率が非線形の可能性があり、かつ、 それらに場所依存がある場合には、式8.38に代わるものとして、 次のようにして計算できる。
ここで、、
は次式で定義される量である。
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また、5番目の等号では、部分積分の公式を用いて、
| (350) |
などと変形し、さらに、この右辺第二項を次のように変形している。
| (351) |
この場合、と
は次のようになる。
| (352) | |||
| (353) |