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方形柱ソレノイドの作る磁場

断面が円形のソレノイドの替りに、 断面が $ a\times b$ の長方形のソレノイドの作るベクトルポテンシャルを考えよう。 電流はこの長方形に沿って流れるので、$ K_x$$ K_y$ しか存在しない。 まず、$ K_x$ の作るポテンシャルを考えよう。 $ K_x$$ y=\pm b/2$ の位置に $ -a/2$ から $ a/2$ の区間存在する。 $ z$ 方向の直線の作るポテンシャルは、直線電荷の作るポテンシャルと同様に $ r$ を直線からの距離として、$ -\log r$ に比例するから、$ A_x$ は次のようになる。

$\displaystyle A_x$ $\displaystyle =\frac{\mu_0K_x}{4\pi}$ $\displaystyle \int_{-a}^adx'
\log\frac{(x'-x)^2+(y-b)^2}{(x'-x)^2+(y+b)^2}$  
  $\displaystyle =\frac{\mu_0K_x}{4\pi}$ $\displaystyle \left[
2(b-y)\left(\tan^{-1}\frac{a-x}{b-y}+\tan^{-1}\frac{a+x}{b...
...)-
2(b+y)\left(\tan^{-1}\frac{a-x}{b+y}+\tan^{-1}\frac{a+x}{b+y}\right)
\right.$  
    $\displaystyle +\left.(a-x)\log\frac{(a-x)^2+(y-b)^2}{(a-x)^2+(y+b)^2}+
(a+x)\log\frac{(a+x)^2+(b-y)^2}{(a+x)^2+(b+y)^2}\right]$ (9.34)

$ A_y$ も同様にして得られる。
$\displaystyle A_y$ $\displaystyle =\frac{\mu_0K_x}{4\pi}$ $\displaystyle \int_{-b}^bdx'
\log\frac{(y'-y)^2+(x+a)^2}{(y'-y)^2+(x-a)^2}$  
  $\displaystyle =\frac{\mu_0K_x}{4\pi}$ $\displaystyle \left[
-2(x-a)\left(\tan^{-1}\frac{b-y}{a-x}+\tan^{-1}\frac{b+y}{...
...)+
2(x+a)\left(\tan^{-1}\frac{b-y}{a+x}+\tan^{-1}\frac{b+y}{a+x}\right)
\right.$  
    $\displaystyle -\left.(b-y)\log\frac{(a-x)^2+(b-y)^2}{(a+x)^2+(b-y)^2}-
(b+y)\log\frac{(a-x)^2+(b+y)^2}{(a+x)^2+(b+y)^2}\right]$ (9.35)

このベクトルポテンシャルの図示は省略するが、およそ、 円柱のソレノイドの作るポテンシャルと酷似しており、 長方形に近いところでそれに合うように変形した形となる。

これらから計算した磁場は $ B_z$ のみになり、次のようになる。

$\displaystyle B_z$ $\displaystyle =\frac{\mu_0K}{2\pi}$ $\displaystyle \left[
\left(\tan^{-1}\frac{a-x}{b-y}+\tan^{-1}\frac{b-y}{a-x}\right)
+\left(\tan^{-1}\frac{a+x}{b-y}+\tan^{-1}\frac{b-y}{a+x}\right)
\right.$  
    $\displaystyle \left.
+\left(\tan^{-1}\frac{a-x}{b+y}+\tan^{-1}\frac{b+y}{a-x}\right)
+\left(\tan^{-1}\frac{a+x}{b+y}+\tan^{-1}\frac{b+y}{a+x}\right)
\right]$ (9.36)

長方形の中にいるときには、すべての $ \tan^{-1}$ の中が正になり、 前から二項ずつの和が $ \pi/2$ となるため $ B_z=\mu_0K$ となる。 また長方形外にいるときは、$ \tan^{-1}$ の分母や分子を構成している項の 1 から 3 個が負となり、 結局、2 個の $ \tan^{-1}$$ -\pi/2$ となるため、合計は 0 となる。

同じ解析を鏡像法で解いてみよう。 四枚のいずれの導体を鏡としてもよいが、 ここでは $ xz$ 面に平行な二枚の導体を鏡と考えよう。 これらの鏡に対し、$ yz$ 面に流れる電流の反鏡像を考える。 多重反射する結果、$ yz$ 面に平行な $ x=a/2$ を通る無限平面上の $ y$ 方向の連続的な面電流と、$ x=-a/2$ を通る無限平面上の $ -y$ 方向の連続的な面電流とになる。

これらの面電流の作るポテンシャルは $ A_y$ だけとなり、 簡単に計算できる。

$\displaystyle A_y=\frac{\mu_0K}2(\vert x+a/2\vert-\vert x-a/2\vert)=\mu_0K\left...
...(x\leq-a/2) \\ x & (-a/2\leq x\leq a/2) \\ a/2 & (a/2\leq x) \end{array}\right.$ (9.37)

ソレノイド内部のみに関心がある場合には、これで十分である。 その際、鏡面となっている導体上の面電流密度は、 磁場の値から推定するのがもっとも簡単である。 また、鏡面としなかった導体上の面電流密度は、 $ \partial\emph A_y\partial x$ から計算でき、結果は注入電流と一致する。

ソレノイド外部のポテンシャルについては、$ A_y$ は上記のままである。 また $ A_z=0$ である。 $ A_x$ は今迄のように $ A_y$$ y$ で積分した $ \chi$ を利用し、それを $ x$ で微分することで得られる。

$\displaystyle A_x=\mu_0K\left\{\begin{array}{ll} 0 & (x\leq-a/2) \\ y & (-a/2\leq x\leq a/2) \\ 0 & (a/2\leq x) \end{array}\right.$ (9.38)

これらのポテンシャルを使って外部の磁場を計算すると、確かに 0 となる。 また、 $ \partial\emph A_x/\partial y$ から $ K_x$ を計算すると、 $ \mu_0K$ となり、鏡像法を使わない場合の結果と一致する。

$ A_y$ を見ると、$ x=\pm a/2$ に不連続性が存在している。 ここには階段状の段差があるのである。 しかし、電流を少し幅広にして調べてみると、この不連続性は $ A_y$ の傾きの不連続性とちょうど打ち消しあって、結論は変らないのである。

この節の計算で分るように、鏡像法を使った計算の方がはるかに簡単である。 一般に、 導体の存在する系のポテンシャルの計算は次のように行うのが楽そうである。

  1. 鏡像法など、何らかの方法を利用して、導体表面で $ \emph E_t=0$$ B_n=0$ となるような空間側のポテンシャルを求める。
  2. 導体内で電磁場が 0 となることを利用して、 導体内のポテンシャルを求める。
  3. ポテンシャルの勾配の不連続性を利用して、 面電荷密度と面電流密度を求める。
あるいは、
  1. 鏡像法など、何らかの方法を利用して、導体表面で $ \emph E_t=0$$ B_n=0$ となるような空間側のポテンシャルを求める。
  2. 導体表面の電磁場から、面電荷密度と面電流密度を求める。
  3. 導体があることを無視して、 これらの面電荷や面電流が作るポテンシャルを再計算する。
いずれの方法でも、正しいポテンシャルを得ることができるが、 前者では、無限遠にも源があるような解となる。 一方、後者の場合には、無限遠には源がない十分遠方で 0 となってくれるようなポテンシャルが得られる。

なお、後者の場合でも、 無限に長い直線電流や無限に広い平面を流れる電流がある場合には、 無限遠に反対向きの対向電流がなければならないので、 対数関数や距離に比例するポテンシャルしか得られない。


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Yoichi OKABE 2008-03-29