Einstein の導出した特殊相対性原理は、二つの互いに一定速度で移動している 慣性系の間の座標変換の仕方を与えたものであり、次の原理から導出された。
光速不変の原理は、宇宙をかなりの速度で走っている地球上で、 走行方向および走行直角方向のいずれの方向で光の速度を測っても、 同じ値が得られたという実験結果から導入された。
いま、S 系に対し
軸方向に等速度
で走っている S'
系を考える。
S' 系座標軸はすべて S 系の座標と平行になっているものとし、また
および
で、両原点は一致しているとする。
S' 系で原点から
軸方向および
軸方向に
だけ離れた点にそれぞれ鏡を置き、原点から光を発射し、往復時間を測る。
すると実験結果から、その値は等しくなる。
これを S 系から観測してみよう。
まず、S 系での光速は S' 系での光速
と等しい。
軸方向に走る光が
秒で鏡に到達したとする。
この間、鏡は
だけ遠ざかる。
したがって、
。
これから、行きに要する時間は
。
同様に、鏡から原点への戻りに要する時間は、原点が近寄ってくるだけ短縮し
、合計すると
の時間がかかる。
軸方向に走る光の伝搬時間も
ではない。
というのはやはり鏡が移動し、
S 系で見ると光は斜めに移動する必要があるからである。
ピタゴラスの定理より、
が成立するから、
これから伝搬時間は
となる。
戻りも原点が移動し斜めに移動する必要があるが、合同な三角形となるから、
同じ伝搬時間が得られる。
そこでこれらを合計すると
が得られる。
しかし、困ったことにこの時間は先に求めた
方向の伝搬時間と一致しない。
つまり S' 系で同時に原点に到着した光が
S 系で観測すると異なる時刻に到着するように見える。
この矛盾を解決するために導入されたのが、距離の短縮と言う概念である。
つまり、S' 系での距離を S 系で観測すると、
移動方向に短縮して見えるという概念である。
最初にローレンツ(Lorentz)がこの概念を提唱したときには、
とんでもない概念であると反論された。
しかし、現在は正しい考えであると理解されている。
S' 系での
が S 系では
方向にだけ
に短縮すると考えると、
方向の伝搬時間が補正され、
両者ともちょうど
となる。
距離の短縮を
認めると、S' 系での座標点
は、S 系で観測すると
には見えず、
に見えることになる。
これを
と置くことにより、S' 系と
S 系の間の座標変換を求めることができる。
一般に S' 系と S 系の間の座標変換は次式で与えられるはずである。
ここで、
と
の間、
と
の間の係数
と
が 1 でないかも知れない、
に
の影響が入っているかも知れないというのが Einstein の大胆な仮設である。
なお、
や
はそちら方向に移動していないことから自明であるが、
仮に
と同様な変換を仮定しても、同じ結果が得られる。
まず、S' 系の原点
を S 系で観測すると、
に見えることから、
と
の関係が得られる。
さらに逆に S 系の原点
を S' 系で観測すると、相対性原理から
に見えることから、
と
の関係が得られる。
これらの結果は
、
である。
を基準にすれば、
が得られる。
と
は光速不変の原理から誘導できる。
S' 系の原点から任意の方向に発射された光は、
どちらの方向に発射されても光速で伝搬するから、次の関係が成立する。
これに変換関係を代入すると、
、
、
、
の二次式が得られる。
この光の伝搬を S
系で観測してもやはり光速で伝搬するように見えるはずであるから、
次式を満たすはずである。
これら
、
、
、
の二式は当然一致すべきである。
係数同士を比較すると、
、
、
、
に関わる三つの関係式が得られる。
先の関係式と連立させることにより、これらの定数の値が決定できる。
なお、
の符号に正負の可能性が残るが、
で
は
と等しくなるはずであるから、
は正である。
こうして得られた次の変換式はローレンツ変換(Lorentz transform)と呼ばれる。
ただし、
、
は今後度々出現する次のような係数である。
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(10.5) | ||
![]() |
(10.6) |
ローレンツ変換の逆変換は、順変換から簡単に求められる。
| (10.7) |