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静磁場

磁場は、もともと磁石間に働く力から定義された。 磁極には、電荷に対応する磁荷(magnetic charge)$ Q_m$が存在し、 それが磁荷のクーロンの法則(Coulomb law of magnetic charge)にしたがう力を及ぼしあう。 片方の磁荷が作る磁場は以下の式で表される。 $ \mu_0$磁気定数(magnetic constant)と呼ばれる定数である。

$\displaystyle \boldsymbol{H}=\frac{Q_m}{4\pi\mu_0}\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}$ (7)

$ \boldsymbol{H}$は磁場の強さと呼ばれる量であり、当初は、磁場といえば、 これを意味したが、現在は $ \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H}$で与えられる $ \boldsymbol {B}$が使われる。

図 1.3: 磁石は等価なソレノイドに置き換えることができる。
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(118,135)
\put(0,0){\...
....0){\makebox(0,0)[lb]{{\footnotesize\rm$B=\mu_0K$}}}
\end{picture}
\end{figure}

その後、電流も磁場を発生すること、さらに、 図 1.1に示したように、磁石に中には無数の電流ループが存在し、 それらが永久に保持されていることなどが分かってきて、 磁場の本質が電流とされたのである。 例えば棒磁石(bar magnet)に代表される細長い磁石は、 両端に正負(NとS)の磁荷が存在するが、図 1.3に示すように、 十分に細い有限の長さのソレノイド(solenoid)と呼ばれるコイルと等価になる。 ここで、ソレノイドの側面には、ソレノイドの軸を囲むように電流が流れるが、 その単位長当たりの電流密度は $ K=Q_m/\mu_0S$で与えられる。 $ S$はソレノイドの断面積である。 また、電流の方向は、右ネジ(もっとも普通のネジ)を、尻尾が負磁荷(S)、 先端が正磁荷(N)を向くように置き、 そのネジを進めるように回転する方向となる。 これを右ネジの関係(right screw relation)と呼ぶ。

磁石の場合、磁石の内部の磁場を測定するのはきわめて困難であるが、 ソレノイドは中空であるので、それも可能である。 その結果、ソレノイドの外部ではN極からS極に磁場ができるのに対し、 内部では、S極からN極に向かっていることが判明した。 つまり、電気力線は正極から発生して負極で消滅するのに対し、 磁力線は電流を取り囲むように発生するのである。 式1.7にこのソレノイド内の磁場を加えたものから、 $ \boldsymbol {B}$の回転と発散について、 それぞれ積分型と微分型を求めると、次のきれいな形が得られる。

$\displaystyle (\boldsymbol{B}$の回転の積分形$\displaystyle )$ $\displaystyle \hspace{3em}$ $\displaystyle \oint_{\text S}d\boldsymbol{S}\times\boldsymbol{B}=\mu_0\int_{\text V}dV\,\boldsymbol{J}$ (8)
$\displaystyle (\boldsymbol{B}$の回転の微分形$\displaystyle )$ $\displaystyle \hspace{3em}$ $\displaystyle \mathop\emph{\text{rot}}\nolimits \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{J}$ (9)
$\displaystyle (\boldsymbol{B}$の発散の積分形$\displaystyle )$ $\displaystyle \hspace{3em}$ $\displaystyle \oint_{\text S}d\boldsymbol{S}\cdot\boldsymbol{B}=0$ (10)
$\displaystyle (\boldsymbol{B}$の発散の微分形$\displaystyle )$ $\displaystyle \hspace{3em}$ $\displaystyle \mathop\emph{\text{div}}\nolimits \boldsymbol{B}=0$ (11)

なお、ここでもSは任意の体積Vを囲む閉曲面であり、 $ \boldsymbol{J}$は電流密度である。

ここで、式1.8の回転の積分形[*]であるが、 多くの書では、アンペールの法則として、 左辺が線積分、右辺が面積分のものが記載されている。 しかも、ビオ・サバールの法則(Biot-Savart law)による電流素片が作る磁場から誘導する場合が多い。 しかし、ビオ・サバールの法則自体、理論的に得られたもので、 実験との対応がとりづらいことから、本書では、ソレノイドの作る磁場から誘導した。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日