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マクスウェル応力、ポインティングベクトル、電磁エネルギー

8章に示した電磁場の持つ運動量やエネルギーの概念も、 相対論では統一して論じることができる。 分布した電荷や電流に働く力 $ \boldsymbol{f}$は、 ローレンツ力を拡張した次式で与えられる。

$\displaystyle \boldsymbol{f}=\rho\boldsymbol{E}+\boldsymbol{J}\times\boldsymbol{B}$ (531)

8.5節では、この式より電磁場の運動量を導出することができた。 また、ローレンツ力の式と $ \boldsymbol{v}$の内積を作ると、次式になる。

$\displaystyle \boldsymbol{f}\cdot\boldsymbol{v}=\boldsymbol{J}\cdot\boldsymbol{E}$ (532)

8.6節では、 この式より電磁場のエネルギーを導出することができた。

これら二つの式を$ \gamma_v$倍すると、四元ベクトルでまとめることができる。

$\displaystyle f^n=B^n_kJ^l$ (533)

この右辺の$ Jlk$を、式11.41を利用して場で置き換える。

$\displaystyle f^n=\frac1{\mu_0}B^n_l\partial_m B^{lm}$ (534)

すると、この式の右辺は次式のように変形できる。

$\displaystyle f^n=\partial_m T^{nm}$ (535)

ただし、$ T^{nm}$は次式で定義される。

$\displaystyle T^{nm} =\frac1{\mu_0}\left(B^n_l B^{lm} -\frac14g^{nm}B^{ij}B_{ji}\right)$ (536)

その証明は以下のようである。

$\displaystyle \partial_m(\mu_0T^{nm})=B^n_l\partial_m B^{lm}+B^{lm}\partial_m B^n_l -\frac14g^{nm}(B^{ij}\partial_m B_{ji}+B_{ji}\partial_m B^{ij})$ (537)

まず式11.77の第一項は$ \mu_0f^n$であり、 第二項は次のように変形できる。

$\displaystyle B^{lm}\partial_m B^n_l$ $\displaystyle =$ $\displaystyle g^{nk}B^{lm}\partial_m B_{kl}
=\frac12g^{nk}(B^{lm}\partial_m B_{kl}+B^{lm}\partial_m B_{kl})$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle -\frac12g^{nk}(B^{ij}\partial_i B_{kj}+B^{ij}\partial_j B_{ik})$ (538)

ここで、この式の二つ目の等号であるが、 第一項については $ B^{lm}\rightarrow-B^{ml}$とし、 $ m\rightarrow i$ $ l\rightarrow j$と置き直している。 また、第二項については $ l\rightarrow i$ $ m\rightarrow j$と置き直し、 さらに $ B_{ki}\rightarrow-B_{ik}$としている。 また式11.77の第三項は、次式のように変形できる。

$\displaystyle -\frac14g^{nm}(B^{ij}\partial_m B_{ji}+B_{ji}\partial_m B^{ij})$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -\frac14g^{nk}(B^{ij}\partial_k B_{ji}+B_{ji}\partial_k B^{ij})$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle -\frac12g^{nk}B^{ij}\partial_k B_{ji}$ (539)

ここで、まず最初の等号で、 $ m\rightarrow k$と置き換える。 二番目の等号では、第一項のほうは$ B_{ij}$の昇階と$ B^{ji}$ の降階を同時に行うことで、$ g$が残らないようにしている。 第二項のほうは$ i$$ j$を入れ替えている。 この結果、両項は一致し、1/4は1/2となる。 したがって、式11.77

$\displaystyle \partial_m T^{nm}=f^n-\frac12g^{nk}B^{ij} (\partial_i B_{kj}+\partial_j B_{ik}+\partial_k B_{ji})=f^n$ (540)

ここで、最後の括弧内は式11.42であることを利用して0にしている。 これで証明は終りである。

11.76$ B^n_k$を昇階すると、次式が得られる。

$\displaystyle T^{nm} =\frac1{\mu_0}\left(B^{nk}g_{kl}B^{lm} -\frac14g^{nm}B^{ij}B_{ji}\right)$ (541)

$ T^{nm}$は四元の応力テンソルと呼ばれる。 ここで、$ B$の各成分を与えて、$ T$の成分を書き出してみよう。

$\displaystyle \left(T^{nm}\right)=\left(\begin{array}{cccc} T_{xx} & T_{xy} & T...
...y} & T_{zz} & -cg_z \\ -S_x/c & -S_y/c & -S_z/c & -(u_e+u_m) \end{array}\right)$ (542)

各成分は$ B_i$$ E_i$の積和で与えられるが、 それらは、 8.5節で示した応力テンソル$ T_{ij}$の各成分および 電磁場の運動量$ g_i$8.6節で示したポインティングベクトルの各成分$ S_i$、 および電場エネルギー$ u_e$と磁場エネルギー$ u_m$の和と一致するため、 これらを使って記載した。

なお、$ T^{nm}$は対称テンソルであり、 $ S_i/c=cg_i$である。 これは、式8.51に示した $ \boldsymbol{S}
=c^2\boldsymbol{g}$と同じ関係である。 さらに、式11.75は、 式8.31および式8.47と完全に一致することが示される。 これにより、 電磁気的運動量と電磁気的エネルギーの両概念が統合されたことが理解できよう。

実は、運動量とエネルギーについては、電場磁場で議論を行い、 ポテンシャルの出る場がなかった。 ポテンシャルの方がより本質的な場であることを説明してきた経緯を考えると、 誠に残念である。 ぜひ、読者自身も考えてみてほしい。


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Yoichi OKABE 平成21年7月3日