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線積分とストークスの定理

Figure 2.7: 閉曲線に沿う積分
\begin{figure}\begin{center}
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(83,40)
\put(0,0)...
...x(0,0)[b]{{\footnotesize\rm\emph{dr}}}}
\end{picture} \end{center}
\end{figure}

いままでは面積分について述べて来たが、線積分についても同様な議論が可能である。 以下のように、ほとんどの議論が面積分と同じように進行する。 まず、線積分とは次のような概念である。 図 2.7のように、ある閉曲線に沿って回ることを考える。 その上を微小な区間で分割する。 その微小区間の長さを大きさとし、 回る方向と同じ向きを向いたベクトルを$ \emph{dr}$で表わす。 これに適当な重み、たとえば場所で値が決まる関数のような重みをつけ、 合計したものが線積分である。 たとえば重みを一定にして線積分を行うと、 その結果は閉曲線の形状によらずに0となる。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}=\emph0$ (2.44)

この証明も面積分のときと同じようにすることができる。 まず、この結果があるベクトル$ \emph a$になったとしよう。 両辺に$ \emph a$方向の単位ベクトル$ \emph n$をスカラー的に掛ける。 まず、右辺は$ a$となる。 一方、左辺の $ \emph n\cdot\emph{dr}$$ \emph{dr}$のベクトルを $ \emph n$に平行なある直線に射影した大きさになる。 閉曲線状で位置が移動していくと、 射影された点はこの直線状を一往復することになる。 つまり二重に射影されるが、片方の射影結果は正になるのに対し、 もう片方の射影結果は負となり、結果として全合計結果は0となる。 つまり右辺は0となる。

もう一つ今後の議論のために重要な線積分がある。 $ x$を重みとした線積分であるが、これを考える場合は、 ほとんど平面と見なせるような領域を囲んだ閉曲線とする。 結果は閉曲線の形状によらず、 閉曲線の囲む領域の面積のベクトルを$ \emph{dS}$とするとき、 以下のように与えられる。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\,x=\emph{dS}\times\emph i$ (2.45)

いうまでもなく$ y$$ z$の重みについても同様の結果が得られる。

Figure 2.8: 閉曲線に囲まれた領域を$ x$軸に沿って千切りにする
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(118,101)
\put(0,0){\...
...,26.6){\makebox(0,0)[b]{{\footnotesize\rm\emph i}}}
\end{picture}
\end{figure}

これを証明するには、まず、閉曲線に囲まれた領域を、 図 2.8のように$ yz$面と垂直な多数の面で小片に分割する。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\,x =\sum_{i=1}^n\int_{C_i}\emph{dr}\,x_i =\sum_{i=1}^n x_i\int_{C_i}\emph{dr}$ (2.46)

右辺は厳密には分割を無限に短く切断した極限となるのだが、 以後、簡単のために$ \lim$の記号は省略する。 また各小片ごとの線積分 $ \int\emph{dr}$は、 対応する二つの積分要素の和とする。 この値を求めるのであるが、各細い小片を囲む線積分全体を求めると、 最初に述べたように0となるはずである。

$\displaystyle \int_{C_i}\emph{dr}_i+\emph nL_{i+1}-\emph nL_i=\emph0$ (2.47)

ここで、$ L_i$$ i$番目の小片の左側の切片の長さである。 また$ \emph n$は右側の切片の向く方向の単位ベクトル、 つまり $ \emph{dS}\times\emph i$方向の単位ベクトルである。 この関係を使い、各線積分を切片長の差に置き換えることができる。 さらに変形すると証明が完了する。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\,x$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sum_{i=1}^n x_i\,\emph n\,(L_i-L_{i+1})
=\emph n\left(\sum_{i=0}^{n-1}x_{i+1}\, L_{i+1}
-\sum_{i=1}^nx_i\,L_{i+1}\right)$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \emph n\sum_{i=1}^{n-1}(x_{i+1}-x_i)\,L_{i+1}=\emph n\,dS
=\emph{dS}\times\emph i$ (2.48)


これらを利用すると、この微小領域で僅かに変動しているスカラー場に対して、 次式が成立することが証明できる。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\,\phi=\emph{dS}\times\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi$ (2.49)

証明は、次式を代入することで、容易にできる。

$\displaystyle \phi=\phi_0+\D\phi x\,(x-x_0)+\D\phi y\,(y-y_0)+\D\phi z \,(z-z_0)+O^2$ (2.50)


さらに以上の結果を利用して大きな曲面状の領域を囲む閉曲線に対して、 次の式を誘導することができる。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}\,\phi=\int_S\emph{dS}\times\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi$ (2.51)

この式をスカラー線積分のストークスの定理(Stokes theorem of line integral of scalar field)と呼ぼう。 以下、線積分と面積分を結び付ける式は、 一般にストークスの定理(Stokes theorem)と呼ばれている。

例えば、$ \phi=1$とすると、次式が得らえる。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}=\emph0$ (2.52)

Figure 2.9: 閉曲線で囲まれた領域の分割
\begin{figure}\centering
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\unitlength 1pt
\begin{picture}(148,54)
\put(0,0){\s...
...Stokes.dps llx=108 lly=717 urx=256 ury=771 rwi=1480}}
\end{picture} \end{figure}

この式の誘導に当たって、まず大きな曲面を、 図 2.9に見られるように小さな領域に分割する。 各領域では上の関係が成立するが、これを寄せ集めると、左辺の合計で、 隣接する小領域の間の線積分は互いに打ち消し合うから、結局、 縁の閉曲線の積分だけが生き残る。 一方右辺は、面積分になるので、上式が成立することとなる。

同様に線積分要素とベクトル場のスカラー積から、次の式が導かれる。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\cdot\emph A =\emph{dS}\cdot\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A$ (2.53)

これを大きな曲面を囲む閉曲線に拡張すると、次の式が誘導される。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}\cdot\emph A =\int_S\emph{dS}\cdot\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph A$ (2.54)

この関係はベクトル場スカラー積線積分のストークスの定理(Stokes theorem of scalar product line integral of vector field)と呼ぼう。

このスカラー積線積分の定理は回転が線積分でも表現できることを示している。 地球の赤道のような閉曲線を考えよう。 この閉曲線に沿って、ベクトル場がちょうど偏西風のように回っているとすると、 このベクトル場をはるかかなたから見ると、 明らかに西から東への渦状の流れを構成している。 もっと複雑な場合にも、次のような計算をすれば、 閉曲線全体で合計した渦の強さを求めることができよう。 まず閉曲線に右回転か左回転かの向きを決める。 次にその上のある微小線要素を考えよう。 そこで線要素の接線ベクトルとベクトル場のスカラー積をとると、 その値が正ならば閉曲線方向の回転に寄与し、 負ならば逆方向の回転に寄与することがわかる。 したがって、これに線要素の長さの重みをつけて合計すれば、 閉曲線に沿った渦の強さが得れる。 不幸にしてスカラー積があちこちを向いて全体として合計すると0になるときは、 渦はなかったというふうに考える。

このベクトル場スカラー積線積分のストークスの定理は、 ポテンシャル(potential)と言う概念とも深く関わっている。 任意の点Oを原点として、そこから別の任意の点Pまで、 力$ A$を線積分して行った値が経路に寄らず一定になるとき、 その積分結果の符号反転したものをポテンシャルと言う。 また、このような力を$ A$保存力(conservative force)、ポテンシャルを保存場(conservative field)と言う。

$\displaystyle \phi(P)=-\int_O^P\emph{dr}\cdot\emph A$ (2.55)

このようなときに、点$ O$から点$ P$までの経路を$ C_1$、 別の経路を$ C_2$として、 点$ O$$ C_1$→点$ A$$ C_2$→点$ O$なるループ状の経路を$ C$とすると、 次の式が得られる。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}\cdot\emph A =\int_{C_1}\emph{dr}\cdot\emph A +\int_{C_2}\emph{dr}\cdot\emph A =-\phi(P)+\phi(P)=0$ (2.56)

ここで、$ C_2$に沿う点$ P$から点$ O$までの線積分を、 逆向きの$ C_2$に沿う点$ O$から点$ P$までの線積分に置き換える際、 符号が反転することを利用している。 この結果から、どのような閉曲線に沿って回転積分しても、その結果が0のとき、 そのベクトルは保存的であると言える。

$ \phi(P)$が原点からの積分経路によらず、一義的に与えらえるということは、 任意の点のポテンシャルが一義に決定されることを示している。 また次式が成立する。

$\displaystyle \emph A=-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi$ (2.57)

この証明は、点P の座標を$ \emph r_0$として、 その近傍のポテンシャルを$ \phi$のテーラー展開を利用して表わすと、 次のように書けるはずである。

$\displaystyle \phi(\emph r)=\phi(\emph r_0) +\emph{dr}\cdot\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits }\nolimits \phi$ (2.58)

一方、次式が成立する。

$\displaystyle \phi(\emph r)-\phi(\emph r_0) =-\int_{\emph r_0}^\emph r \emph{dr}\cdot\emph A =-\emph{dr}\cdot\emph A$ (2.59)

これらを比較することにより、証明が完了する。

つまり、ポテンシャル$ \phi$が与えられていると、 それから力$ \emph A$を求めることもできる。 ここで、ベクトル場スカラー積線積分のストークスの定理と勾配(gradient)の概念が、 繋がりを持つことが理解できよう。 ちなみに、勾配の節でも述べたように、 $ \emph r/r^3$で与えられるクーロン場は保存力であり、 そのポテンシャルは$ 1/r$となる。

電流の作る磁場の渦は、回転場であるので、スカラー積線積分は0とならない。 電流路と鎖交するどんな閉曲線に対しても、 いつも一定のスカラー積線積分結果を与えるというのが、 アンペールの法則(Ampere law)である。

さらに線積分要素とベクトル場のベクトル積から、次の式が導かれる。

$\displaystyle \oint_{dS}\emph{dr}\times\emph A =-(\emph{dS}\times\mathop{\emph ...
...mph A) -\emph{dS}\,(\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph A)$ (2.60)

第二式は、例のごとくベクトル演算子 $ \mathop{\emph ▽}\nolimits $を単純なベクトルのようにみなし、 形式的にベクトル積を二回とった形となることを示している。 ただし、演算子なので、順番を変えてはいけない。 最後の式は、第二式のすべての項を成分ごとに分解し、それを再合成すると得られる。 これを大きな曲面を囲む閉曲線に拡張すると、次式が得られる。

$\displaystyle \oint_S\emph{dr}\times\emph A =-\int_S(\emph{dS}\times\mathop{\em...
...-\emph{dS}\,(\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph A)\right]$ (2.61)

この式はベクトル場ベクトル積線積分のストークスの定理(Stokes theorem of vector product line integral of vector field)と呼ばれる。


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Yoichi OKABE 2008-03-29