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組み立て単位に必要な量方程式

基本単位を組み合わせて作成される組み立て単位(derived unit)については、 もう少し多くの式を必要とする。 まず、物質が絡む場合には、次のように見える源と物質内の源とを 分離する必要がある。

$\displaystyle \rho=\rho_a-\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph P$ (12.62)

J'$\displaystyle =$J'$\displaystyle _a+\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph M +\frac1\gamma\D{\emph P}t$ (12.63)

これらより電束密度と磁場強度のベクトル場を導入する。 電束密度は $ \varepsilon_0$E と同じ単位、 磁場強度は B/$ \mu_0$ と同じ単位とする。
$\displaystyle \emph D$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \varepsilon_0\emph E+\alpha\emph P$ (12.64)
$\displaystyle \emph H$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{\emph B}{\mu_0}-\alpha\emph M$ (12.65)

これらを用いると、式12.18と式12.21は 次にようになる。

$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \cdot}\nolimits \emph D$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \alpha\rho_a$ (12.66)
$\displaystyle \mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph H$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \alpha$J'$\displaystyle _a+\frac1\gamma\D{\emph D}t$ (12.67)

磁化(magnetization) M については、コメントが必要である。 現在は電流が磁場を作るという E-B 対応という体系が主流になっているが、かっては磁荷が磁場を作るという E-H 対応という体系が主流であった。 このため、物質の作る磁場の源も磁荷に立脚した磁気分極(magnetic polarization) P$ _m$と呼ばれるものが使われた。

現在の磁化は H に近い概念であるが (厳密には $ \alpha$H の単位)、古い CGS 系の単位はすべて、B に近い概念である (厳密には $ \alpha$B の単位)。 MKSA 単位系でも古い書籍では、こうなっている。 同じ磁場源に二つの概念があるのである。 P$ _m$=$ \mu_0$M なので、式12.64と式12.66は 次のようになる。

J'$\displaystyle =$J'$\displaystyle _a+\frac1{\mu_0}\mathop{\mathop{\emph ▽}\nolimits \times}\nolimits \emph P_m +\frac1\gamma\D{\emph P}t$ (12.68)

$\displaystyle \emph B=\mu_0\emph H+\alpha\emph P_m$ (12.69)

以上で、組み立て単位は構成できるようになったが、 一言補足を述べておきたい。 それは電流である。 本書では、ポテンシャルの方程式の右辺に、 電流と電荷が正に同じような形で入るように工夫したが、 対称系であるガウス単位系とそれを基礎にしたヘビサイド単位系では、 電流の定義が若干異なっている。 電流連続の式12.16$ 1/c$ が入らないように定義されているのである。

$\displaystyle I+\D Qt=0$ (12.70)

この定義の電流は、電気系の電荷から誘導されているので、 非対称電流と呼んでおこう。 また、今迄の電流 $ I'$ との関係は $ I=\gamma I'$ であり、 ビオ・サバールの法則を次のようにしたことになる。

$\displaystyle F=\frac{\alpha\mu_0}{4\pi\gamma^2} \frac{I_1\Delta s_1\,I_2\Delta s_2}{r^2}$ (12.71)

この定義は、電磁単位系や静電単位系との相性をよくするが、この代償として、 電流の入ったいくつかの方程式の式の対称性が崩れることとなる。 一例として、ベクトルポテンシャルの式を示しておこう。 ただし、ここの J は、前出の $ I'$ に対応する J' ではなく、 $ I$ に対応するものである。

$\displaystyle \mathop{\emph ▽}\nolimits ^2\emph A-\frac{\varepsilon_0\mu_0}{\gamma^2} \D{^2\emph A}{t^2}=-\frac{\alpha\mu_0}\gamma\emph J$ (12.72)

この式を、電荷の関係する式と比較すると、明かに対称性が崩れている。 せっかく対称性のよい単位系を整備したのに、 電流が絡む式だけが崩れてしまったのは、昔、 磁場を作るのは磁極であり、電流の概念は補助的だった時代の名残である。 本書は現代風の電流重視の立場で対称性を維持したいため、 $ I$ でなく $ I'$ を磁気系の主要単位である電流としたのである。


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Yoichi OKABE 2008-03-29