本節は、歴史にこだわる方以外は無視していただいてよい。
本章ではそれなりに合理的な説明を行うように努力したが、
ちょっと気になるのは、対称電流
の導入というやや作為的な手法であろう。
これには歴史的な背景がある。
元々、磁場の発見は磁石から始まった。 しかも、磁石の磁極間には、 電荷の間に働くのと同じようなクーロンの法則が成立したのである。 このため、初期の電磁気学は電荷と磁荷という概念から作られたのである。 その後、電池の発見があり、電流が見出され、 電流も磁極に力を与える磁場を発生することが知られるようになった。 そして、電流と磁石の等価性が議論され、 磁石も根源には電流があるとされるようになり、 磁極モデルから電流モデルへの変革が起きたのである。
単位系の制定にも、この影響が出ている。
電磁単位系、静電単位系、ガウス単位系、
ヘビサイドローレンツ単位系までの磁気系の単位は、
磁荷の間に働く力を基本にして作られているのである。
電流はあくまでも電荷の微分で定義され、磁荷との相似性を議論された。
その際、導入されたのが
である。
一方、MKSA 単位系を制定するときには、電流間に働く力を基本にした。
MKSA 単位系では、磁場として、電流との積が力となる B を定義したが、
古い単位系では、磁荷との積が力となる H が定義された。
しかし、この H の定義には電流は直接関与せず、
磁位なる概念が使われたのである。
これを MKSA の H の単位である A/m との整合をとるために、
A' なる概念を作り出し、A'_/m_ としたものである。
したがって、A'_ は、これらの単位系の
の単位である A_ とは
の単位 R_ だけの差異が生じてしまうのである。
厳密な方法は、
を一切使わず、断固
のみを使って議論することである。
これは可能であるが、「電流単位
磁束単位」がエネルギーにならず、
その
倍になり、「電荷単位
電圧単位」に対応しなくなる、
ベクトルポテンシャルの式がスカラーポテンシャルの式と対応が悪くなるなど、
電気系単位と磁気系単位の対称性が崩れるという問題が生じる。
本書では、美的観点から、中間的な対称電流という概念を導入したと理解して欲しい。