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足元で作用する力

次は、足元の物理学的解説。 アイゼンをつけずに固い雪面を歩けば滑ってしまうのは当たり前だが、 その際に足元にはどんな力が作用しているのだろうか。 アイゼンをつけていない場合、登山靴は非常に縦滑りしやすい状態にある。 雪面に平行な力はほとんど働かず、雪面に直角な力だけ。 雪面に直角な力というのは、体の前方方向へななめに向っているということ (図2.3参照)。 このななめの力は、真上への力と、真横への力に分けて考えることができる。 すると、 体の重心から重力によって真下へ向う力と足元から真上への力は相殺される。 その結果、前方への力だけが残ってしまい、 足は前へと滑っていってしまい重心を中心として回転してしまう。 これはスキーで後傾して転ぶ原理と一緒。

図 2.4: アイゼン着用時: アイゼンを着用することで縦に滑りにくくなる。 その結果、靴と雪面の接面から真上へと力を加えることができ、 重心からの力と相殺され体は安定する。
\includegraphics{fig/crampon.eps}
だが、アイゼンを着用することでだいぶ様子が違ってくる。 アイゼンを装着することでツメが雪にひっかかり、 雪面平行にも滑りにくくなるので自由に力を加えられるようになる (図2.4参照)。 よって、体の重心からの力を相殺する真上への力を加えられるようになり、 体のバランスは安定する。

また、雪がやわらかいときに行なうキックステップも、踵を雪に蹴り込み、 人工的に水平な雪面を作ることで力が真上を向ようにしている (図2.5参照)。 本来ならば、重心は足裏の真中に置くことが望ましいだが、 キックステップは十分な水平面が得られないので例外的に踵荷重となる。 このように、くだりにおいて大切なのは体の重心から真下への向う力を相殺し、 バランスをとるかということ。 体に作用するすべての力がゼロになれば、バランスを崩すことはない。

図 2.5: キックステップ: 踵を蹴り込むことで、水平の雪面を作り、真上への力を作ることができる。 本来ならば、重心は足裏の中心にくることが望ましいが、 キックステップの場合は水平面が小さいため、 例外で踵に重心をのせざるを得ない。
\includegraphics{fig/kickstep.eps}


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Yoichi OKABE 平成19年11月20日