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基底の変換

いま、 $\{\left\vert j\right\rangle : j=1,\ldots,n\}$ が一組の基底状態 $S_A$ を構成しているときには、次式が成立する。


\begin{displaymath}
\left\langle\left.j\right\vert k\right\rangle =\delta_{jk},...
...ert j\right\rangle ,\left\vert k\right\rangle \in S_A$}\right)
\end{displaymath}

このとき、別のもう一組の状態、 $\{\left\vert J\right\rangle : J=1,\ldots,n\}$ が、 基底状態 $S_B$ を構成しているかどうかを、調べるには、次式が 成立しているかを検証すれば良い。


\begin{displaymath}
\left\langle\left.J\right\vert K\right\rangle =\delta_{JK},...
...ert J\right\rangle ,\left\vert K\right\rangle \in S_B$}\right)
\end{displaymath}

$\left\langle\left.j\right\vert J\right\rangle $ がすべての $j$$J$ に対し分かっているとしよう。 まず、正規直交性を示すべきこの式に、 $\sum \left\vert j\right\rangle \left\langle j\right\vert=\widehat{I}$ を挿入すると、次式の成立が要求される。


\begin{displaymath}
\sum_{all\ j}\left\langle\left.J\right\vert j\right\rangle \left\langle\left.j\right\vert K\right\rangle =\delta_{JK}
%e10
\end{displaymath} (2.10)

また、完備性を示すべき後式の両側から $\left\langle j\right\vert$ $\left\vert k\right\rangle $ を掛けると、次式の成立が要求される。


\begin{displaymath}
\sum_{all\ J}\left\langle\left.j\right\vert J\right\rangle \left\langle\left.J\right\vert k\right\rangle =\delta_{jk}
%e11
\end{displaymath} (2.11)

つまり、 $\left\langle\left.j\right\vert J\right\rangle $ がこれら二式を満たせば、 $\{\left\vert J\right\rangle \}$ は別の完全な基底状態を組むことになる。




問題2..8 $x$ 偏光 $\left\vert x\right\rangle $$y$ 偏光 $\left\vert y\right\rangle $ の代わりに、 $\left\vert\theta\right\rangle $ $\left\vert\theta+90^\circ\right\rangle $ が、基底状態として 選べることを、証明せよ。

ヒント 2.5、問2.6の結果を用い、 式2.10、式2.11を 証明せよ。


問題2..9 右旋円偏波と左旋円偏波、 $\left\vert R\right\rangle =(\left\vert x\right\rangle +i\left\vert y\right\rangle )/\sqrt2$ $\left\vert L\right\rangle = (-\left\vert x\right\rangle +i\left\vert y\right\rangle )/\sqrt2$ が、基底状態の組として 選べることを示せ。




$\left\langle\left.j\right\vert\psi\right\rangle $ が分っているときに、 $\left\langle\left.J\right\vert\psi\right\rangle $ を 求める作業を基底の変換(base transformation)と呼ぶ。これは $\left\langle\left.J\right\vert j\right\rangle $ が 分っていると、次のように簡単に行なうことができる。


\begin{displaymath}
\left\langle\left.J\right\vert\psi\right\rangle =\sum_{all ...
...\right\rangle \left\langle\left.j\right\vert\psi\right\rangle
\end{displaymath} (2.12)

このあたりで、偏光が、量子力学的性質の一つである干渉性を有することを、 説明する、簡単な実験について、述べてみよう。図2.7 (a) に示すように、$x$ 偏光板を抜けた光子は、$y$ 偏光板を 通ることができない。 ところが、(b) のように、途中に $45^\circ $ 偏光板を入れると、ある 確率で通過できるようになる。 偏光板を、光の一部しか通さない、フィルタのようなものと考えると、 フィルタを入れた方が光を良く通すという、この実験結果は、いかにも奇妙な、 理解しがたいものとなる。 しかし光の偏光にも、干渉性があるので、こういう結果が得られるのである。

図 2.7: 偏光の干渉性を確かめる実験。 (a) $x$ 偏光は $y$ 偏光板を通らない、(b) 途中に $45^\circ $ 偏光板を入れると何故か通る、(c) 下の通路が開いていれば (a) の実験、 閉じていれば (b) の実験に対応する。 両方の通路 が開いていると光子の透過確率は干渉により 0 となる
\includegraphics{fig/state.pol-inter.eps}

(a)、(b) の実験を、総合してみると、(c) の形で表すことができる。 $45^\circ $ 偏光板は,「$45^\circ $$135^\circ$ の分波器と 合成器の組合せた装置」で $135^\circ$ の方の通路を遮断したものと、 等価になる。 一方、(a) の実験は,「$45^\circ $$135^\circ$ の分波器、合成器」の 両方の通路を開けたものと、等価になる。 従って、(a)、(b) の実験結果を、(c) の立場で見ると、二個の窓 (通路) を 開けると光子は通過しないが、一個では通過するということになる。

これと同じような結果は先に図1.7に示した二スリットの 光干渉実験でも、生じている。 両方のスリットを開けておいたとき丁度干渉縞の暗くなるところへ、光検出器を 置いておく。 次に、片方のスリットを閉めると、検出器で光子をカウントできるようになる。 つまり、偏光実験でも、一つの窓 ($45^\circ $ の偏光のみを通すことに 対応) に対し、光子が観測されても、 二つの窓に対しては、双方の窓からの干渉により、光子の検出確率が 0 になるのである。 二スリットの干渉実験で、検出器を、スクリーン中央に置いた場合には、一つの スリットより、二つのスリットの方が、検出確率が高くなる。 これと、同じように偏光実験でも、最後の偏光板を $x$ 偏光とすると、(a) の実験の方が (b) の実験よりも、透過確率が高くなる。

量子力学の実験と言うと、何か非常に複雑な設備を必要とすると、思われるかも 知れない。 しかし、二スリットの干渉実験や、ここに述べた偏光実験のように、極めて 簡単なものもある。 特に、後者の実験は、わずか三枚の偏光板で、実に多くの、干渉性に関する 知見を得ることができるので、暇なときに、調べてみると良いだろう。 計数性を調べるには、なだれ光ダイオードのような高感度検出器や、 高利得増幅器が、必要となり、やや、大掛りな実験となるが、やはり 個人でできないほどの実験ではない。




問題2..10 2.7の実験で、(a)、(b) の透過確率を求めよ。 また最後の偏光板を、$x$ 偏光板にしたときは、どうなるか。

ヒント 例えば、(b) の場合、 $\vert\left\langle\left.y\right\vert 45^\circ\right\rangle \left\langle\left.45^\circ\right\vert x\right\rangle \vert^2$

答え 透過確率は、(a) 0、(b) $1/4$$x$ 偏光板のときは、(a) 1、(b) 1/4。





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Yoichi OKABE 平成19年6月30日