ある状態の光を、偏光板に入れると、出てきた時には、別の状態になっている。
このように、種々の状態を、別の状態に変換する機能を示すものとして、
オペレータという概念が用いられる。
偏光板を例にしてみよう。
状態
の光を
偏光板に入れると、状態
のまま出てくる。
また、
を入れると、確率振幅
で、
やはり
偏光の状態、つまり
の状態で
出てくる。
これらを、次のように表現する。
ケットベクトル
と
の前に書かれた、
``
'' が、
偏光板の行う変換を表す
オペレータ(operator)である。
感の良い読者の中には、``
'' は、ベクトル空間における、
行列(matrix)のようであると思う人も、いるかもしれない。
事実、そのとおりで、オペレータは行列と完全に対応する。
行列の場合は、
行
列に対し、
個の要素が
与えられていて、具体的な変換の仕方が人目でわかる。
しかし、オペレータの場合は、ただ、``
'' と書かれていて、
任意の状態を、どのように変換するのか、はっきりしないように見える。
実は、オペレータに対しても、基底状態を変換した状態が、各基底状態をとる
確率振幅を知っていれば、任意の状態の変換の仕方を、具体的に
計算することができる。
つまり、ある基底状態
を、オペレータ
で
変換してできた状態
に対し、次式に示す基底状態
をとる確率振幅を、知っていれば、
を、いつでも計算できる (オペレータを、ただ
と書くと、
ケットベクトルの
倍と、勘違いされるので、誤解されやすい時は、
前にも述べたように、``
'' 記号を付ける)。
| (2.13) |
図2.8で、ある状態
が、
オペレータ
の作用を受け、状態を変換された後に
をとる確率は、
の前後に、分波器合成器の
ペアを入れても、変わらない。
(b) の図を見てみると、入力から出力へ行くのに、四つの通路、
、
、
、
のあることがわかる。
それぞれの通路が一本のみ開いているときの確率振幅は、例えば、
の場合、次式のように、
の成分と
の成分、および、
の成分がわかっていれば、計算できる。
さて、入力から出力へ行くのに、四つの通路があり、かつ、どの通路も
開いているときの確率振幅は、干渉実験などからもわかるように、各通路の
確率振幅を、重ね合わせの原理により合成することで、計算できる。
したがって、
、
を基底状態とすると、次式が
成立する。
この式は、左辺の
と
の間、および
と
の間に、式 2.8の
分解再合成の式を挿入すれば、簡単に得られることに注意してほしい。
上式は、
が、どんな状態でも成立することから、両辺より、
を落とすことができる。
![]() |
(2.15) |
この式は、
を
に作用させてできた状態
の、具体的な形を示している。
問題2..11
偏光板の行う作用を表すオペレータを、
と略記するとして、
、
、
、
を求めよ。
ヒント
を
偏光板に入れるとそのまま抜け、
を入れると、完全に遮断される。
答え それぞれ、1、0、0、0。
問題2..12
は、どんな状態になるか。
答え
、つまり
を
の確率振幅でとる状態。
式2.14で、
として、基底状態の
一つ、
を考えると、
は、
のときだけ、1 となるから、次のようになる。
| (2.16) |
この式の
を再び
に書き直したものと、
を行列、
をベクトルとしたときの、
の成分を与える
次式を比較してみると、完全に対応している。
ここでも
が、ベクトル空間の変換行列によく
対応することがわかるであろう。
この意味で、
を、オペレータの
成分と
呼ぶ。
行列の積(product of matrix)に対応し、オペレータの積(product of operator)の概念がある。
図2.9 に示すように、与えられた状態を、
まず
で変換し、さらに、
で変換したものが、
オペレータの積の概念、
である。
問題2..13 オペレータ
と
の、積の成分
を、
の成分、
の成分を用いて、
書き表せ。
ヒント
図2.9で、入力を
としたとき、
出力が
となる確率振幅を考え、さらに、
と
の
間に、分波器合成器の組を入れてみよ。
答え
問2.13の結果よりわかるように、オペレータ
、
の積は、二つの行列の積と、完全に対応する。
行列の、積の順序を入れ換えると、一般には、もとの積と異なる。
同様に、オペレータの積も、交換すると、一般には異なる変換となる。
従って、オペレータ
と、オペレータ
の差は、0 とならない。
この差を、交換子(commutor)と呼び、次のように表す。
| (2.17) |
オペレータ
、
の組合せによっては、たまたま、
になることがあるが (右辺は、厳密に言うと、
全成分が 0 となるオペレータ)、このとき、
と
は、
交換可能(commutable)と呼ばれる。
問題2..14
偏光板の行う変換、を表すオペレータ
の、成分を求めよ。
ヒント
、
の二式に、
問2.5の結果を用い、さらに、左から
、
をほどこす。
答え
問題2..15 光を
偏光板に通し、その結果を、さらに、
偏光板に
通すという、 二枚の偏光板の組の働きは、
と
表される。
と、
の、二つの
オペレータの、積のオペレータ成分を求めよ。また、
と
の、交換子のオペレータ成分を求めよ。
答え
問題2..16
は、
によらず、
常に
偏光していることを示せ。同様に、
は、常に、
偏光していることを示せ。
このように、積の順を入れ換えると、異なる出力が得られる。
問題2..17 何もしないオペレータ
の、各成分を求めよ。
答え
問題2..18 何もしないオペレータ
は、どんなオペレータ
とも、
交換可能であることを示せ。
答え