具体的な物理系で、ハミルトニアンオペレータ
の各成分が、
どのような値となるかについては、次章に譲ることとして、ここでは、
運動方程式を解く数学的手法について、述べてみよう。
状態系での運動方程式は、
、
と表すと、次のようになる。
この微分方程式は、
が時不変、つまり、
がすべて
定数のときは、比較的簡単に、解くことができる。
一状態系のときには、
という解を
仮定したが、これと同じような解を仮定してみよう。
の代わりに、後の説明の都合上、
と表してある。
この形を、式3.18へ代入してみると、
を利用して、次式が得られる。
ただし、両辺を
で除してある。
したがって、これらの式を同時に満たす、
と
が存在すれば、微分方程式は解けることになる。
上式を、ブラケット表示でまとめておこう。
問題3..4 以上の議論を、式3.9のブラケット表示の
運動方程式をもとに、ブラケット表示のまま進め、式3.21を
求めよ。
式3.20の形の方程式を解くことをオペレータ
の
固有値問題(eigen value problem)と呼ぶ。
またその解
を
の固有値(eigen value)、
を
の固有状態(eigen state) (固有ベクトル(eigen vector)) と呼ぶ。
式3.20を移項しよう。
あるいは、次のようになる。
| (3.23) |
このように、
という、
個の変数の
元連続方程式の右辺が、すべて 0 の場合は、
がすべて 0 という、分かり切った解しか存在しない。
ただし、一つだけ例外があり、次に示す各係数の作る行列式の値が0の場合は、
すべてが 0 ではない解を、持ち得る。
まとめると、次のようになる。
| (3.25) |
この行列式は、
のいくつかの特定の値に対して、0 となる。
具体的には、この行列式を展開し、
の
次の代数方程式とし、
その
個の根、
を求めればよい。
つまり、式3.24の行列式を 0 にするような
の値は、
個存在することになる。
この
個の根が、
の固有値である。
固有値が求まれば、各固有値に対する固有状態を、計算することができる。
それには、得られた固有値の一つ
を、式3.22
へ代入し、連立方程式を解けばよい。
固有値に対しては、係数の作る行列式の値が、式3.24
のように、0 であるから、すべてが 0 でない、
の組を、求めることができる。
具体的には、
とおいて右辺へ移項し、
本の
方程式のうち、一本を落とした
本の方程式を解き、
を求めれば良い。
これがうまくいかない場合は、別の、例えば、
として解けば良い。
このようにして得られた、一組の
、
あるいは、
を固有値
の固有状態と呼び、
特に
と書く場合が多い。
この場合次式が成立する。
| (3.26) |
また、固有状態は、正規化されている方が、先の計算に便利なため、
つまり、次式が
成立するように、
に、適当な定数を
掛けておくことが多い。
| (3.27) |
今後、特に断らない限り、固有状態は、正規化するものとする。
このようにして、すべての固有値に対し、正規化した固有状態
を、求めることができる。
かなり長い計算となってしまったので、何を目的とした計算か、忘れてしまった
かもしれないが、このようにして求められた、
、
を、
式3.19へ代入して得られる、
この式が、運動方程式、
の一つの解になることは、代入してみれば
明らかであろう。
さらに、式3.28の解をすべての
、
に対し、任意の係数を掛けて、加え合せたものも、
運動方程式の解となる。
の値は、
で、上式の右辺が
に
等しくならねばならないことから、決定することができる。
具体的な計算の仕方は、もう少し学ばないといけないが、結果は、
となる。
従って、初期条件まで考慮に入れた、運動方程式の解(solution for equation of motion)が得られる。
| (3.30) |
問題3..5 式3.29が、運動方程式の解になることを、確かめよ。
問題3..6
に対し、次の各問に答えよ。
答え
、または、
の固有状態に対し、固有値 3、
、または、
の固有状態に対し、固有値 1。
問題3..7 前問のハミルトニアンに対し、
が、
であるとして、運動方程式の解を求めよ。
答え
![\begin{eqnarray*}
\left\langle\left.1\right\vert\psi(t)\right\rangle &=&\frac12...
...=&\frac12\left[\exp\frac{-i3t}\hbar
-\exp\frac{-it}\hbar\right]
\end{eqnarray*}](img487.png)
問題3..8 前問の結果を用い、この系の時間経過演算子、
を求めよ。
また、この
が、ユニタリーオペレータであることを示せ。
ヒント
、
として、
、
を求めよ。
答え

の具体的な形を計算しておくと、どんな
初期状態からスタートしても、
秒後の状態を簡単に求めることが出来る。
この意味で微分方程式の重要な概念であり、特にグリーン関数(Green function)、
あるいはグリーン核(Green kernel)とも呼ばれる。