次のオペレータの、固有値問題の答えは、全部で
個存在するが、
その
個の固有状態は、互いに直交することが知られている。
したがって、正規化された固有状態は、正規直交系を構成するため、一組の
基底状態となることができる。
本節では、このことを、一般的に示そうと思うが、やや、数学的過ぎるので、
難解であるときは、とばして、あとから、読んでも差し支えない。
まず、互いに異なる固有値に対応する固有状態が、直交することを示そう。
オペレータ
の、固有値の一つ、
に対応する固有状態、
を求めるには、前節にも述べたように、次の
元連立方程式の解を、
とすればよい。
| (3.31) |
このケットベクトルの代わりに、同様な
元連立方程式を
解くことにより、ブラベクトルの固有状態、
を
求めることもできる。
| (3.32) |
ブラ固有状態(bra eigen state)は、一般のオペレータの場合には、必ずしも、
ケット固有状態(ket eigen state)の転置複素共役とは限らないから、
のように、'を付した。
さて、
と異なる別の固有値を
とし、それに対応するケット
固有状態、ブラ固有状態を、
、
としよう。
式3.33の右より、
を掛けたものと、
式3.34の左より、
を掛けたものの、
差をとると、
が得られる。
であるから、次式のようになる。
このようにして、
は、
以外のすべての
個の固有状態と、直交することが示される。
したがって、もし
が、
個の異なる固有値を持つ場合には、
その
個の固有状態は、すべて、互いに直交すると言える。
それでは、
個の固有値のうち、いくつかが、等しいときは、
どうなるだろうか。
が、等しい固有値を
個持つとき、つまり、
重根の場合、その固有値は、
重に縮退している、あるいは縮退度
であると呼ぶ。
一般のオペレータで、固有値が縮退しているときには、対応する固有状態が、
縮退度の数だけ得られないこともある。
しかし、量子力学で扱うオペレータは、ほとんど、エルミートオペレータか
ユニタリーオペレータであり、この二種類のオペレータについては、
幸いにして、つねに、縮退度の数だけの固有状態が、得られることが
知られている。
詳しい説明は数学の専門書に譲るとして、
重根に対応する固有状態を
求めると、
個の自由度を持った解が得られる。
つまり、
個の、勝手に変えられる変数を含んだ、固有状態が得られる。
従って、第2章に述べた、シュミットの直交化法を用いると、
個の互いに直交する固有状態が、得られる。
が、エルミートオペレータの場合には、固有値は
実数になることが、証明できる。
エルミートオペレータを
と書くと、その固有値、固有状態を
、
として、次式が成立する。
さて、この式の転置複素共役を、とってみよう。
は、
の転置複素共役である。
式3.36 の左より、
を掛けたものと、
式3.37の右より、
を掛けたものとを、
比較してみよう。
であるから、左辺同士は当然等しくなる。
したがって、
。
は
の各成分の絶対値の二乗和となり 0
でないから次式が得られる。
| (3.38) |
つまり、固有値は実数となる。
さらに、式3.37の
を、
と
書替えてみると、
は、
の
を固有値とするブラ
固有状態となっていることがわかる。
つまり、式3.33のように考えると、
は、
実は
であることがわかる。
従って、式3.35は次式のようになる。
| (3.39) |
さらに、
のように正規化を行えば、
は正規直交系を組むようにできる。
次の物理系で、
個の正規直交系を組む状態は、一組の基底状態を
形成することから、
は、一組の基底状態となる。
同様なことは、任意のユニタリーオペレータ
についても、
言うことができる。
| (3.40) |
この式に、その転置複素共役である、次式を辺々掛け合わせる。
さらに、
を利用すると、
となり、次式が得られる。
| (3.42) |
つまり、固有値の絶対値は1となる。
さらに、式3.41の右より、辺々に
を掛け、
、
を利用すると、次式が
得られる。
| (3.43) |
つまり、
は、
のブラ
固有状態となっていることがわかる。
したがって、エルミートオペレータと同様の考察により、次式が得られ、
として、
が一組の基底状態となることが示される。
| (3.44) |
問題3..9 次の三つのオペレータに対し、エルミートか、ユニタリーか、それ
以外であるかを、確かめよ。
さらに、それぞれの固有値問題を解き、固有値、ブラ固有状態、ケット
固有状態を求めよ。
縮退のあるときは縮退度を求め、可能な限り、固有状態が基底状態を
構成するように、してみよ。
また、上の各式を検討してみよ。
(1)
(2)
(3)
答え
| (1) | ユニタリ。
|
| (2) | 以外。 正規直交系は形成出来ない。 |
| 1(二重):
|
|
| (3) | エルミート。 実数固有値. |
| 2(二重):
|
|
| 0:
|