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二状態系の運動

これまでの議論により、量子力学の基礎的概念の説明が、ほぼ完了した。まず、 物理現象を表現するのに、質点がどの位置にある、と言うことの代わりに、 いくつかの基底状態を、それぞれ、どれほどの確率振幅でとると言った表現が、 必要であることを示した。 さらに、物理現象の変化の様子を決定する方程式、つまり、古典論の ニュートンの運動方程式に対応する量子力学の運動方程式について述べた。

次は、いよいよ、具体的な物理系に対する量子力学の適用である。 というと、古典論からの延長として質点運動、例えば、電子の 運動がどのようになるかを知りたい、と思っているだろう。 しかし、質点の位置を議論するには、無数の基底状態が必要であり、数学的に、 やや技術を要する。 そこで、本章では、まず、数学的に容易な、二つの基底状態だけで記述できる 物理系を扱い、運動の概念に慣れてもらおうと思う。

二状態系(two state system)と言うと、非常に単純な系であるが、いくつかの重要な概念、 例えば、電子のスピン(spin)、光の偏光(polarization)などという物理が、この 系で記述できる。 さらにレーザ(laser)メーザ(maser)といった、量子エレクトロニクスの 概念も、二状態で記述できる場合が多いので、まず二状態系の物理を、正確に 把握してもらいたい。




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Yoichi OKABE 平成19年6月30日