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一次元格子上の粒子の運動方程式

一次元格子(one dimensional lattice)として、図5.1のような $n$ 個の 格子点(lattice point)からなる格子(lattice)を考え、そこに、一個の 粒子がいるような系を考える。 $n$ はどんな正整数でもよいが、ここでは簡単のために奇数としておこう。 粒子は、各格子点に強く束縛されるため、格子点と格子点の 間にいるようなことは、考えないことにする。 $j$ 番目の格子点にいる粒子の状態を、 $\left\vert x_j\right\rangle $ で表そう。 具体的には、陽イオンが一次元格子状に並んでおり、一個の電子が、クーロン 力によって、どこかの陽イオンに強く束縛されているようなものを 考えればよい。

図 5.1: $n$ 個の格子点からなる格子に電子が一個いる系
\includegraphics{fig/lat.sys.eps}

粒子が、$j$ 番目の格子点に束縛されている状態、 $\left\vert x_j\right\rangle $ の、 エネルギーを$E_0$ としよう。 この値は、各格子点が、全く同じものであれば、$i$ によらず 一定になるはずである。 水素分子イオンモデルと同じように、ある格子点にいる粒子は、僅かな 確率振幅で、隣の格子点へ移動し得るものとする。 例えば、$i$ 番目の格子点へは、$j-1$ 番目と、$j+1$ 番目の 格子点から、移動できるものとする。 すると、$j$ 番目の格子点の確率振幅、 $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi(t)\right\rangle $ の 増加の様子は、次のように表わされる。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{d}{dt}\left\langle\left.x_j\right\vert\psi(t)\r...
... -A\left\langle\left.x_{j+1}\right\vert\psi(t)\right\rangle
\end{displaymath} (5.1)

ここで、移動 (あるいは遷移(transition)) の程度を表す係数として、$-A$ ($A$ は正実数) としたのは、特に深い意味はなく、次章との 説明のつながりのためである。

5.1は、各格子点が対等であることから、すべての $i$ に 対し成立する。 ただし、両端の二点に対しては、さらにその先がないため、成立しなくなる。 両端では、片側からしか遷移がないので、左端の $min=-(n-1)/2$ と 右端の $max=(n-1)/2$ では、次のように扱えばよい。 5.1この条件は、開放型境界条件(open boundary condition) と呼ばれる。


\begin{displaymath}%e2e3
\left.
\begin{array}{c}
{\displaystyle i\hbar\frac{d...
...-1}\right\vert\psi(t)\right\rangle }
\end{array} \ \right\}
\end{displaymath} (5.2)

この他に、周期型境界条件(periodic boundary condition)というのも、しばしば用いられる。 これは、左端のさらに左に右端と同じものが、接続されているものと、 考えようというものである。 あたかも、一次元格子が、ゆっくりと曲がっていって、 図5.2のように、リングを構成しているようなものを、 考えればよい。 このときの境界条件は、次のように表わされる。


\begin{displaymath}%e4e5
\left.
\begin{array}{c}
{\displaystyle i\hbar\frac{d...
...in}\right\vert\psi(t)\right\rangle }
\end{array} \ \right\}
\end{displaymath} (5.3)

実は、$n$ が大きくなると、端の処理の仕方は、余り解に 影響しなくなってくる。 そこで、数学的に取扱が容易というだけの理由から、周期型境界条件が、 しばしば採用される。 一次元のときは、図5.2のような具体的なイメージを描き 易いが、この方法は、具体的イメージの対応できない二次元、三次元でも、 しばしば用いられる。 我々も、周期型境界条件を採用しよう。

図 5.2: 一次元格子の周期型境界条件とは格子の左と右が 繋がっているようなもの
\includegraphics{fig/lat.periodic.eps}

周期型境界条件を採用したときの、ハミルトニアン行列の形を求めておこう。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{d}{dt}\left\langle\left.x_j\right\vert\psi(t)\r...
...ngle \left\langle\left.x_k\right\vert\psi(t)\right\rangle
%e6
\end{displaymath} (5.4)

上式より、 $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi(t)\right\rangle $ の、時間微分を決定する式の 右辺で、 $\left\langle\left.x_k\right\vert\psi(t)\right\rangle $ にかかる係数が、 $\left\langle x_j\right\vert
\widehat{H}\left\vert x_k\right\rangle $ となる。 式5.1、式5.3より、次の行列が 得られる。


\begin{displaymath}
\left(\matrix{E_0 & -A & 0 & \cdots & -A \cr -A & E_0 & -A ...
...&
\ddots & \vdots \cr -A & 0 & 0 & \cdots & E_0}\right)
%e7
\end{displaymath} (5.5)

対角要素が、$E_0$、その両隣の要素が、$-A$ であることは、 第4章で述べた二準位系のハミルトニアンの、単純な 拡張になっていることが、わかるであろう。 右上と左下の $-A$ は、周期型境界条件に基づくものであり、反対側の 端からの影響を表している。




問題5..1 開放型境界条件のとき、ハミルトニアン行列は、どんな形になるか。

答え 5.5の、右上端と左下端の $-A$ が、$0$ に置き替わる。





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Yoichi OKABE 平成19年6月30日