二準位系の運動方程式を解くには、二行二列のハミルトニアン行列の、
固有値問題の解を、求めればよかった。
それと同様に、格子上の粒子の運動も、式5.5の、ハミルトニアン
行列の固有値問題を解くことに、帰着される。
まず、定法に従って、定常状態の解を求める。
定常状態は、次式のように、一定の角周波数
で変化する。
| (5.6) |
これを、式5.4へ代入することにより、
の
固有値問題になる。
| (5.7) |
のサイズが、
ぐらいまでであると、
の根
を求める方法で、固有値問題を解くことができるが、
式5.5のように、次数が高くなると、この方法は、絶望的になる。
一般には、高次の固有値問題は、解析的には解けず、計算機による近似解しか
得られないと考えてよい。
しかし、この式のように、比較的規則正しい構造の行列に対しては、別のうまい
方法が存在する。
式5.1のように、
が変化しても、式の形が
変わらないという、並進対称(translational symmetry)性を持つ場合には、
に
対して、
が、等比級数(geometric series)的に変化する
解のあることが期待される。
これを、式5.1へ、代入してみよう。
この式は、両辺を
で割ってみると、
によらず、
同じ形となる。
つまり、ある
について、この式が成立すると、他のすべての
に
対し、この式が成立することとなる。
ただし、両端の、
と
については、境界条件と
矛盾しないようになっている必要がある。
式5.2に、式5.8の解形式を代入し、
整理すると、以下のようになる。
![]() |
(5.10) |
これらの式と、式5.9を比較すると、
は、
に等しくなければならないことが、わかる。
であるから、結局、次の条件式が得られる。
| (5.11) |
この式を満たす
は、
だけのように、思われるかもしれないが、
として、複素数まで考えると、複数存在する。
| (5.12) |
式5.8と5.9と組み合わせることにより、 ハミルトニアン行列の、固有状態と固有値が、得られることとなる。
この固有状態は、空間的にも変動している波動の形をしている。
つまり、周波数だけでなく波数の概念も持っている。
すでに周波数はアインシュタインの関係(Einstein relation)を利用してエネルギーと
関係付けられおりそれが式5.14の
という形で
表現されている。
一方、式5.13の固有状態は、位置
に対し、位相が
連続的に変動していることがわかる。
このような位相変動がある場合、ド・ブロイの関係(DeBroglie relation)によって、
運動量を持っている運動量確定状態(momentum defined state)として観測されるはずである。
したがって、上式は次の式のように書き直すことができるはずである。
に対応するエネルギー固有値も
と記載している。
前式と比較すると、
と
を結び付ける式が得られる。
| (5.17) |
運動方程式の一般解の形は、上記
個の解に、
で示される時間変化の項を掛けたものを、線型結合したものとなる。
線型結合の際の結合係数は、第3章で示したように
で与えられるから、一般解は以下のようになる。
初期状態が、
をとる確率振幅で与えられているときには、
さらに次のように表わすことができる。
ここで、
は、無論、式5.16で与えられる。
これらの式は初期状態、つまり
で、
が
空間的あるいは運動量空間的にどんな分布をとるかによって、時間の
経過とともに複雑な変化をする。
それについては、次節で学ぼう。
問題5..2 開放型境界条件の場合の、ハミルトニアン行列について、固有値問題を解け。
ヒント
式5.8の形の解は、両端末の方程式を満たさない。
こういう場合には、
と仮定する。
さらに、式5.9と両端の式5.2と
比較すると、
、
、
が定まる。
答え
| (5.20) |